017
転移で森にきた。
昼を過ぎた今頃でも森の中は薄暗い。ここは奥に行くほど暗くなっている気がする。
目的のモンスターの居場所を再度確認すると、どうやら木の上にいるようだ。
木を登り、隠れていたそいつを発見した。
種族:スレッドワーム(希少種)
レベル:5
状態:正常
スキル:【擬態Lv6】【悪食Lv5】【体内変換Lv5】【糸生成Lv4】【麻痺針Lv3】【毒針Lv2】
『これ、虫? モンスター?』
「スレッドワームの希少種、モンスターだよ」
『グリム、よく、分かった、すごい』
鑑定スキルがあるから当然だ。
以前見つけたスレッドワームはシルフと食べてみたけど、あまりうまくなかった。
食料としては興味を無くしたが、糸生成スキルには興味があった。
『従魔石』を見つけた時、最初は通常のスレッドワームを従魔にするつもりだった。しかし、シルフを見て上位種のほうがいいのではないかと思い、探した結果見つけたのがこの希少種だ。
通常のスレッドワームの白っぽかった身体と違い、希少種は身体が銀色に輝いている。
スキルの数も多い。
スキルにある悪食スキルは鉱物なども何でも食べることができ、その食べた物を体内変換のスキルで糸にすることができるようだ。
『従魔石』を取り出し、魔力を込める。
見つかってないと思っているのかスレッドワームは擬態したまま動いていない。
魔力が溜まり、スレッドワームに向けると『従魔石』が浮かんで身体の中に入っていく。擬態スキルを解いてこっちを見ているところをみると成功のようだ。
あとは名前を付ければ契約が完了する。
「フィノ、かな」
「ピュイ!」
気に入ったみたいだ。
契約も完了したようで、フィノの身体に従魔の紋が浮き出てきた。
手を近づけると腕に登り始め、肩で止まった。
なかなか可愛い奴である。
『フィノ、いいな』
「さすがにシルフは乗せられないよ?」
俺が潰れる。
『乗りたい、違う。シルフ、羨ましい、名前』
「名前? 名前欲しかったの?」
『欲しい!』
ブンブンと勢い良く首を縦に振っている。
そんなに欲しかったのか。
「じゃあ、ネア。ネアリアでどう?」
すぐに名前を考えると服を送った時と同じくらいの笑みを浮かべ抱きついてきた。
『ネアリア! シルフ、名前、ネアリア!』
「わかったから木の上で抱きつくな」
危なく落ちるところだった。
フィノもびっくりして外套のフードに入ってしまった。
ネアリアを落ち着かせ、木から降りる。
「フィノ、この騒がしいのが風精霊のネアリアね」
「ピュイ?」
フードから出てきたフィノにネアリアを紹介するが、首を傾げている。
見えてないのか?
「フィノが見えてないみたいなんだけど」
『あ、また、うっかり』
どうやら精霊は普通見ることができず、それが可能なのはエクストラスキルの精霊視を持つエルフ族だけらしい。
最初に見た光状になるとエルフ族でも見えなくなるのだという。ただ任意の相手に自分の姿を見えるようにすることはできるそうだ。
「あれ? 俺は光の時も見えてたけど?」
『精霊、より、魔力、多い、グリム、存在、高位。だから、見える』
「そういうもんなんだ」
フィノにも姿が見えるようになりネアリアと戯れ始めた。
『フィノ、可愛い。ネア、気に入った』
「ピュイピュイ」
「フィノがネアは綺麗だって」
『ありがと、嬉しい。グリム、フィノ、言葉、わかる?』
「契約した従魔の意思はなんとなく伝わってくるんだよ」
クラウスが書いた魔導具の詳細を記した本にもこのことはあったけど、実際に体験するまでは半信半疑だった。
『いいな、いいな。ネア、フィノ、話す、したい』
「そのうちネアもできるようになるよ」
『本当?』
「たぶんね」
誓約で繋がっているネアと従魔の契約で繋がっているフィノは間接的に繋がっていることになる。したがって、そのふたりが話せるようになっても特に不思議ではない。
従魔も手に入れたので、モンスターを狩りに行くことにした。
ネアリアによると前にぼろくそにされたジャイアントベアの上位種はこの森でも相当に強いほうだという。
「ネアなら倒せそうだけどね」
『ネア、強い、余裕。熊、殺す?』
「いや、いいよ。あいつはいつか俺がひとりで殺る」
他にも生息しているモンスターの情報を聞いて、何処に何がいるのかマップと照らし合わせて確認している。
今向かっている先には俺と相性の良さそうなモンスターがいるはずだ。
道の途中、ネアリアが思い出したように何か魔法を使うと身体が急に軽くなる。『ウィンドエンチャント』という補助系の呪文らしい。精霊石と相まって随分速さが上がったように感じる。
お返しに『プロテクト』をネアリアとフィノにかけておいた。
しばらく進むとネアリアが前方を指差した。
『グリム、いた、あれ』
その先には俺の倍くらいはありそうなモンスターがいた。
種族:ウッドゴーレム
レベル:15
状態:正常
スキル:【頑丈Lv4】【自己修復Lv3】【豪腕Lv2】
モンスター図鑑の知識によると、ゴーレムは自然にある魔素が結晶になって核となり、周りの物質を身体の構成物質にして生まれる。
痛覚などはなく、身体の中にある核を破壊することで完全に活動が停止する。
倒すには身体を削って中にある核を剥き出しにし、それから核の破壊をするのが一般的だ。
「ネアはそこで見ててよ」
『手伝う、いらない?』
「すぐ終わるから」
フィノを肩に乗せたままウッドゴーレムに近付いていく。
すぐに気付かれ、丸太そのものの腕で攻撃してきた。見切りスキルで軌道を読むことで余裕を持って躱し、ウッドゴーレムを観察する。二度、三度と全ての攻撃を躱して観察を続け、目的の物を見つけた。
大振りの攻撃を避けると同時に懐へ潜り込む。胸辺りに飛びついて手を触れ、『貫氣』を使う。衝撃が突抜け、ウッドゴーレムが硬直する。すぐに飛び退くとウッドゴーレムが爆散した。
戦闘を終え、見ていたネアリアのほうへ振り返るとまた抱きつかれて身体中をぺたぺた触られた。
『グリム、怪我、してない? 大丈夫?』
「攻撃当たったように見えた?」
『ううん。でも、ネア、心配、だった』
心配しすぎである。あんな遅い攻撃当たるか。
思い出したようにネアリアがウッドゴーレムを見て聞いてくる。
『なんで、ゴーレム、爆散?』
「爆散は予想外だったけど、氣操術の『貫氣』で直接核を破壊したんだよ」
『グリム、賢い』
避けて観察していたのは魔力感知で核の正確な場所を探していたから。スキルレベルがそんなに高くないのですぐに把握するのはまだ難しい。
ネアリアを引き剥がし、ウッドゴーレムの残骸を拾って【鑑定】を使ってみる。魔力を包容しているその木片は魔樹というらしい。
何かに使えるかもと仕舞おうとするとフィノが落ち着き無くそわそわしているのに気付いた。
「食べたいの?」
「ピュイ!」
特に使い道も決まっていないので与えるとばりばりと食べ始めた。その食べている姿はなかなかどうして可愛らしい。
『フィノ、ばっかり、ずるい。ネア、クッキー、食べたい』
「はいはい」
見かけだけ大人で中身は子供みたいな精霊に向けて取り出したクッキーを投げた。すぐに食いついて嬉しそうに租借している。
なんかひな鳥に餌を与える親鳥になった気分だ。そう思えばこいつの事も多少は可愛く思える…かな?
「ピュイ」
ウッドゴーレムの身体だった魔樹を全て食べ付くしたフィノが肩に戻ってきた。
この小さな身体のどこにあれだけの量が入ったのか甚だ疑問だが、更なる獲物を求めて移動する。
『次、ネア、やらせて』
「いいけど、あんまりでかい魔法使うなよ? フィノがあの木もっと食べたいって言ってるから」
『任せる、良い』
進んだ先にいたのはウッドゴーレムが2体。
俺も参戦しようかと聞くとネアは首を降ってひとりでやると言う。
ふわふわと浮いたまま2体のウッドゴーレムに近付いていく。その間に魔力を高めているところをみると一撃で終わらせるつもりのようだ。
『サイクロンブレード』
ネアリアから風が放たれた。
風はいくつもの刃となりウッドゴーレムの腕を足を切断していく。そして、最後に残った2体の胴体を核共々まっぷたつにした。
『どう?』
戻ってきてどや顔を決めたネアリア。
「うん、ご苦労様。ほら、フィノ食べてこい」
「ピュイ」
さっきよりも勢いよく飛び出し、ウッドゴーレムだった魔樹を食べ始めた。
やっぱり可愛い。フィノを従魔にして正解だった。
『むー! もっと、ネア、褒める!』
「サイクロンブレード? カッコ良かったよ、さすがネア」
『それほど、でもある』
ネアリアの扱い易いところは可愛いと思う。
「ピュイ」
フィノも食べ終わり、次の獲物のところへと歩き出した。




