表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/29

015

 目が覚めると、シルフに抱きつかれたまま身動きが取れずにいた。


「シルフ起きろー」


 起きない。


「……クッキー」

『クッキー! シルフ、クッキー、食べる!』


 すぐに起きた。

 クッキーに反応しすぎだ。


「おはよう、シルフ。早く離して」

『グリム、おはよう。クッキー、どこ?』

「ないよ。クッキーって言ってみただけ」

『グリム、意地悪』


 意地悪って言ってんのに頬をこすりつけてくる意味が分からない。


『シルフ、クッキー、食べたい』

「わかった、作ってみるからいい加減離して」

『本当?』

「本当」

『やった、シルフ、嬉しい』


 さらに抱きついてきたシルフを無理やり剥がし、調理室へ入る。


『ここ、部屋、なに?』

「調理室。料理する部屋だよ」


 調理室に入ってまず石畳のスペースのほうに調理台を想像してつくった。


 クッキーのレシピが書いてある『簡単料理レシピ100選』を取り出す。

 中を読もうと思い、著者の名前を見ると『クラウス・ファウスト』とあった。何書いてんだ錬金術師。


「クラウスは料理が得意だったの?」

『クラウス、料理、上手、だった。料理、錬金術、似てる、言ってた』


 似てるか?

 錬金術って金つくったりするようなものだったはず。


 クッキーのレシピが書いてあるページを開き、材料を確認する。

 確認した材料をアイテムポーチから取り出そうとすると何も取り出せなかった。


「…何も取り出せない」

『それ、使う、できる、クラウス、シルフ、だけ。魔力、波長、みんな、違う。シルフ、魔力、波長、承認、使う、できる』


 無駄に高性能だな。


「じゃあ、俺が言った物を取り出して」

『シルフ、承知』


 シルフに言ってレシピに書いてある小麦粉、卵、バター、砂糖、調理器具を取り出させる。

 材料は【鑑定】で状態を確認したが、腐ったりしていなかった。俺の【無限収納】と同様に入れた時の状態で取り出せるみたいだ。


 シルフがうるさいのでさっそく作り始めた。

 最初に、材料をレシピにある分量通りに量る、分けておく。取り出した調理器具にあったボウルにバターを入れ、柔らかくなるまで待つ。柔らかくなったら砂糖を加え混ぜる。混ざったら溶いた卵黄を少しずつ加えていく。さらにふるった小麦粉も加え、粉っぽさが無くなるまで混ぜて生地を作る。


「よし」

『完成? 食べる?』

「まだ。アイテムポーチの中に物を冷やす魔導具ってある?」

『シルフ、それ、知ってる、フリーズボックス』


 シルフがアイテムポーチから大きい箱型の魔導具を取り出した。


「使い方わかる?」

『シルフ、わかる。付いてる、魔石、魔力、流す、中、冷たくなる』

「魔石?」

『迷宮、魔物、魔石、落とす。魔石、魔導具、核、クラウス、言ってた』


 色々気になることを言っているが、とりあえず『フリーズボックス』に付いている石に魔力を流して作った生地を入れる。


『クッキー、なんで、冷やす?』

「美味しくするため」

『クッキー、美味しくなる、良い。でも、待つ、いつまで?』

「時間を計れる魔導具ってない?」

『ん、ある。時刻みの腕輪』


 シルフが取り出した物は前世で使っていた腕時計のような物だった。それにも保冷の魔導具と同じく魔石が埋め込まれていた。

 魔石に魔力を流すとおそらく現在のであろう時刻が表示された。


「待ってる間、アイテムポーチに入ってる物確認するからひとつずつ出してって」

『シルフ、任せる、良い』


 『アイテムポーチ』から出て来る数多くの魔導具の数々。

 残念ながら強力な攻撃を放つような魔導具はなかったけど、使えそうな物は多かった。

 中でも魔力が続く限り飛翔が可能になる『翼竜の腕輪』、鎧の形をした人形がこめた魔力の分だけ攻撃を仕掛けてくる『修練の魔導鎧』、自分よりも格下のモンスターを従えることができる『従魔石』、つけた者は他者からの認識を阻害することができる『認識阻害の仮面』など、他にも色々ある。


『全部、出た、よ?』

「魔導具もそうだけど、食べ物も多いな」


 季節をひとつ越えられるくらいの量が入っていた。


『クラウス、追われてる、言ってた。遠く、逃げる、食べ物、いっぱい、必要。クラウス、時々、仮面、つける、食べ物、買う、行ってた』

「追われてる?」

『そう。でも、シルフ、理由、分からない』


 シルフから聞いた感じだと凶悪な犯罪者だったってことはないと思う。

 他に追われる理由で考えられるのは、Lv7の錬金術スキル。

 『アイテムポーチ』に入っていた魔導具もすべてクラウス作らしいし、相当な腕だったはずだ。

 それを狙われたというところか。


「つまり、もっと遠くに逃げる準備のために森に隠れてたってこと?」

『クラウス、そう、言ってた。でも、クラウス、だんだん、元気、無くなった。シルフ、看病、頑張った、けど、死んじゃった。その後、リッチ、なった』

「あの森で死ぬとみんなアンデットになるの?」

『それ、違う。森、死の力、溜まり、ない。死の力、クラウス、死んだ、身体、いきなり、出てきた』


 かなりきな臭い話だ。追われていた事と無関係ではなさそう。


「まあ、今はいいか」

『クッキー、作る? 作る?』

「ああ、うん。作ろうか」


 物凄い期待の眼差しで見てくるシルフに推され、クッキー作りを再開した。

 『フリーズボックス』から取り出した生地を伸ばし型抜きしていく。

 型抜きが終わり、調理台の下にオーブンを想像してつくった。しっかりイメージしたので温度調節も時間設定もできるものが現れた。

 数回に分けて焼いていく。甘い匂いが広がり、さっきからシルフが飛び回ったりオーブンを覗いたり忙しない。


『焼けた! グリム、焼けた!』

「俺は焼けてない」


 オーブンから取り出すと、こんがりキツネ色になったクッキーが出来上がっていた。


『シルフ、味見!』


 さっそく伸びてきたシルフの手を叩いて止める。


「まだ熱いから。火傷する」

『むー!』


 焼けたクッキーを『アイテムポーチ』に入っていた皿に移し、次に焼く分をオーブンに入れて焼き始める。

 

「そこに座って食べろよ」


 木の床の段差を指差して皿をシルフに渡した。


『グリム、一緒、食べよ?』

「俺は全部焼いてから食べるから」


 オーブン内で焼けていくクッキーを見ていると、シルフに腕を引かれ段差に座らされた。


『シルフ、グリム、一緒、食べたい』


 にこにこ笑うシルフが隣に座るとクッキーを1枚つまみ、差し出してきた。


『グリム、あーん』

「……自分で食べるよ」

『あーん!』


 頑として譲らないシルフに根負けして差し出されたクッキーを食べた。


『美味しい?』

「うん、うまい」


 何が嬉しいのかとても満足げだ。

 もう1枚食べようと手を伸ばすと、皿いっぱいにあったはずのクッキーが半分に減っていた。


「食べるの早すぎだってば」

『えへへ』

「だから褒めてない」


 残りのクッキーから3枚取って食べながらオーブンを見に立ち上げる。

 焼き上がったクッキーは【無限収納】で仕舞っていく。


『シルフ、まだ、食べれる』

「今日は今食べてる分で終わり」

『もっと』

「ダメダメ」

『むー!』


 制限無く食べさせたら1日で無くなりそうだし。


 クッキー数百枚を焼き上げ、絨毯の部屋から寝室と呼ぶことにした部屋へ戻った。

 今日は手に入った本を片っ端から読んでいこうと思っている。特に武術関係と魔法関係は念入りに目を通すつもりだ。


『グリム、本、読む?』

「うん、静かにしてろよ」

『シルフ、静か、する』


 本を読み始めようと絨毯の上に座るとシルフに持ち上げられた。


「……なに?」


 持ち上げた理由を問いかけるが、笑い返すだけのシルフが胡座で座った足の間に座らされた。

 すぐに抜け出そうと動く。しかし、胴に腕を回され、それを阻止してきた。

 なんだか知らないけど、この体勢でいると大人しくしていそうなのでほっておくことにして、その日は本を読み耽った。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ