表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
現実世界で世界を救った俺、異世界で魔王に転生したみたいだけどなんやかんや世界を救うはめになりそう ~世界を救う魔王の英雄プロトコル~  作者: 足本 弘
第四章 アウレアからの留学生

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
44/59

第四十三話 二年目


ここの生活も、気づけば二年目に入っていた。

今日は冷二曜日。朝は相変わらず静かだ。


 目を覚まし、身体を起こす。

 壁面に浮かぶ予定表示を一瞥し、今日の流れを確認する。


(午前はミナト先生の授業。

 午後は、例の再検査だ)


 身支度を終えると、アオは部屋の中央に立った。

 誰に言われたわけでもない。

 朝のこの時間は、自分で使うと決めている。


 呼吸を整え、姿勢を確認する。

 重心を落とし、力を入れずに身体を動かす。

 関節の動きに違和感がないことを確かめる。


 それから、ごく短く力を流した。


 壁面に、微かな反応が返る。

 確認すると、すぐに止める。


(……同じだな)


 昨日と変わらない。

 それでいい。


 午前の授業はミナトだった。


 教室に入ると、すでに板面には数式と図が並んでいる。

 途中式がいくつも重なり、必要な部分だけが残されていた。


「今日はユーリフォースだ」


 ミナトは短く告げ、板面には何も表示しなかった。


「まず、以前の話からいく」


 視線を板面ではなく、教室全体に向ける。


「アウレア連邦を含む外界では、近年、動力や発電といった技術が実用段階に入っている」

「だが、その導出式は綺麗じゃない。補正だらけだ」


 具体的な数式は出てこない。

 まだ板面も使われない。


「観測値には合う。だから動く」

「だが、条件が変わると挙動も変わる」


 一拍置く。


「毎回、現場で帳尻を合わせていた」


 アオは、説明を聞きながら思った。


(……観測に合わせて補正を重ねる、昔の惑星計算だ)


 観測に合わせて補正を重ねるやり方。

 そもそもの前提が違うので安定しない。


 そこで、ようやく板面が切り替わった。


 簡潔な数式。

 無駄のない構造。


「これは、カルドラインが存在しない前提で整理された、

 世界の基本法則だ」

「ローレンツ力」


 導線。

 磁場。

 力の向き。


 必要な要素だけが残されている。


 アオは一目で理解した。


(地球と同じ……フレミングとローレンツ力。)


 ミナトは続ける。


「しかし外界では、必ずしもこの通りに動かない」

「カルドラインが外乱としてあるからな」


 次の瞬間、表示が消えた。


 ミナトは板面に、手で式を書き始める。


 先ほどの式。

 そこに、いくつかの項が加えられていく。


「これがユーリフォースだ」


 カルドラインを示す項が、

 基礎式の中に自然に組み込まれる。


「外乱として扱わない」

「最初から、存在する前提にする」


 ミナトは板面から手を離す。


「これで、場所が変わっても挙動は変わらない」

「観測は、確認で済む」


 板面が切り替わる。


 回転子と固定子。

 見慣れた動力機構。


「モーターだ」

「発電機も、同じだ」


 出力曲線が並ぶ。

 条件を変えても、線はほとんど揺れない。


「事前にカルドラインを計測し、

 その値を式に入れるだけでいい」


「個別調整は不要だ」

「現場で帳尻を合わせる必要もない」


 用途が短く表示される。


 動力。

 送電。

 輸送。

 精密機構。


「これが導入されてから、

 外界の技術は一段階、上に進んだ」


 説明は、そこで切れた。


 ミナトは視線を上げ、アオを見る。


「……ここまでで、置いていかれてはいないな」


「はい」


 短い返答を受け、

 ミナトはすぐに壁面へ視線を戻す。


「なら、続ける」


 次の式が表示され、講義は先へ進んだ。


 午後は、魔法適性の再計測だった。


 案内されたのは、見覚えのある測定室。

 一年目にも使った部屋だ。

 壁の色も、床の材質も、機材の配置も変わっていない。


 アオは、指示された位置に立つ。


 装置の前に立ったのは、アヤセだった。

 手元の手順を確認し、短く頷く。


「通常計測から行います」


 淡々とした声だった。


 起動音とともに、表示が走る。

 数値が揺れ、やがて収束する。


 ――60。


 一年前は40だった。

 順調な伸びだと、アオ自身も理解できる。


 アヤセは数値を確認し、何も言わずに次へ進む。


 続いて、別の装置が起動された。

 デジタル表示のない、針と目盛りだけの計器。

 ここでは何度も見てきたものだ。


 カルドライン測定用の、アナログ計器。


 装置の側には、ハクが立っている。

 操作はしない。

 ただ、針の動きから目を離さない。


「系統確認に入ります」


 アヤセの合図で、アオは力を流す。


 魔法を行使した瞬間、

 主針が滑らかに動いた。


 カルドライン反応。

 数値は安定している。


 ハクは黙ったまま、その挙動を見ている。


 異常はない。


 アヤセが針の位置を読み取る。


「カルドライン寄与、確認」

「外界系統です」


 簡潔な報告だった。


 神の遺物系統特有の反応は、見られない。

 計器は、いつも通りの仕事をしている。


「成長も順調です」


 付け加えられた言葉は、それだけだった。


 ハクは一度だけ装置全体を見渡し、

 問題がないことを確認してから、視線を戻す。


「以上です」


 計測は、そこで終わった。


 アオは特に感想を挟まず、ただ理解する。


(問題なし、か)


 装置が停止し、室内が元の静けさに戻る。


 アヤセが、手元の端末を一度だけ操作してから口を開いた。


「事務連絡があります」


 事務的な声音だった。


「来週、二年ぶりにアウレア連邦から一名、

 鬼人――オルガ人の少女が入学してきます」


 アオは、わずかに目を上げる。


「同じ授業は受けません。

 生活エリアと学習エリアは近くなります」


 一拍置いて、


「交流は許可されます」


 続けて、淡々と注意が加えられた。


「ただし、

 授業内容や研究に関わる話題は外へ出さないこと」


「ベイラでの生活、

 私的な事情についても同様です」


 それ以上は、何も言われなかった。


「以上です」


 アオは小さく頷く。


(オルガ人か……初めてだな)


 その数日後。


 シェイラの上空に、

 複数の宙舟が姿を現した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ