空き巣と見知らぬ美少女と
風呂から出てすぐに気づいた。
台所に「誰か」がいる。
半月ではない人型の誰か。
父や母ではない。
あの二人は自分達の生活で忙しいし、そもそも合鍵を渡していないから勝手に入ってくる事は出来ない。 それにそもそもそういうサプライズじみた事をしてくるような人達じゃないはずだ。
クリスマスも誕生日もハロウィンも、貰えるのは親からのお金。
サンタへの手紙を書いて、親に、サンタに渡しておいてと、言った翌日、ゴミ出しのゴミ袋から覗いたクレヨンで塗られた真っ赤な紙切れはきっと夢へのチケットだったのだろう。
夢のチケットと引き換えに貰ったのは福沢諭吉の映った大人のチケット。
その事を話すと友人は羨ましがって、やれ自分は変なサッカーボールが来た、だの、私なんか手紙だけ、だのと、楽しそうに悔しがっていた。
そんな空気に自分は入っていける気がしなくて次の年からは変な手紙とサッカーボールを貰ったことにした。
そんな、両親だからいきなり来るような事はしないだろう。
かと言っていきなり押しかけてくるような友人など持ち合わせていない、というか今の受験直前のこの時期に遊べる友達なんて居るはずもない。
となると……「空き巣か」
相手方に聞こえないように小さく呟き、あちらから気配を悟られないように小さくかがみ息を潜める。
取られるほど大した物は無いがどうせここまで入ってくるのも時間の問題だろう。
だったら居間に行った瞬間に後ろから取り押さえた方が合理的だ、何か使えそうなものは……よし、これでいいだろう。
たまたま近くにあった物干し竿を手に取る。
そうこうしているうちに人影が居間にゆっくりと動いていく。
念のため床に耳を当て、足音が居間の辺りで止まったのを、確認した後に立ち上がり、物干し竿片手にドアノブに手をかける。
覚悟を決め、ドアノブを一気に開け放ち、居間に突入する。
「おいコラ空き巣め! 動くな、もう警察は呼んである! これ以上罪を…………を?」
必死に考えたブラフを叫びながら物干し竿を持って突入した居間にいたのは、片目を黒い眼帯に被われた可憐な少女だった。
年頃は大体男と同じくらい、光すら受け付けない黒い艶やかな髪を腰ほどまで伸ばし、「何故か」俺のパンツとシャツを着て「何故か」さっき買ってきたカップ麺を美味しそうに頬張っていた。
「えーっと、え? え?」
困惑する男にその月のような片方の目で、男の下半身を異常に注視しながら、「とりあえず、服は着てきた方がいいんじゃないですか? そのままだと、もし警察をホントに呼んでいたのなら貴方が空き巣として捕まると思いますよ?」と、言い放った。
えぇ、結局女の子は出しますよ、えぇ、出しますとも!
名前も決めてないけど……。




