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怪しい少女と初恋と

600字という少なさ……!

「さて、まず、貴方は何処のどちら様ですか?」


 半月の分どころかいつの間にか俺の分のカップ麺にまで手を伸ばしている目の前の眼帯少女に男は問いかける。


 脳はとうにこの現実離れした状況に整理を諦めてしまっているが、それでも、この少女の事について、聞かないわけにはいかないだろう。


「そんな事より警察が来る前に逃げたいのだけれど……」


 目の前の少女はまるで猫のように身を屈ませ、逃げるポーズをとる。


「はぐらかすな! 警察なんて呼んでるわけないだろ!」


 男は未知への不安感で支離滅裂な言葉を叫んでしまう。

 親から、先生から、そして先輩から怒鳴られてきた俺は怒鳴るという行為の無意味さ、そして惨めさを身をもって知っているというのに。


 しかしそんな男の無様な姿に引くでもなく、怒鳴る男に怯えるでもなく少女はカラカラと、楽しそうに笑った。


「ハーハッハッハ、呼んでる訳ないって、前言撤回が男らし過ぎて、ニャ……ハッハッハ!」


  少しだけ変な声の混じったその明確に自分をバカにしている笑い声が、それでも血のかよった暖かいその笑い声が、男の心を少しづつ溶かしていった。


「フフフ……どうしたの? 私のあまりの美しさに泣いちゃったのかニャ?」


 見知らぬ美少女は、零れ出た露水をブカブカな袖ですくい取り、その腕をそのまま男の首筋に回し、雫を胸で受ける。


 男はその決して豊かとは言えないその胸元の暖かさと、孤独でないという安心感に、目頭を熱くし、溢れ出す液体は次第に勢いを増していった。


 男はこの晩、何処から来たともわからない上に、食料まで奪われた少女に、人生で初めて恋をした。

いや、まあ、分かってるとは思いますが、この娘は……

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