6/21
2. 辺境という名の「真実の貯蔵庫」
辺境は遠い。
王都の目が届きにくい。
ゆえに、物語は残った。
王家が「呪われた怪物」と呼ぶたびに、
辺境の民は、別の名で呼び返した。
大地を潤す力。
海の恵み。
守護の証。
それは善意だけでは続かない。
二百年前に蒔かれた“種”が、世代を越えて守られたからである。
物語は飾りではない。
辺境の防壁である。
剣でも術でもない。
人の口と、記憶と、暮らしの中に根を張った防壁である。
そして、もう一つ。
物語は「守る側」の心も守った。
当主が当主であること。
守護者が守護者であること。
それが呪いではなく、役目であること。
言葉が残る限り、
血は、自らを否定せずに済む。




