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6. 嘆きの谷の枯渇――再生への転換点
和合が進み、領地の巡りが整い始めた後も、辺境のすべてが即座に癒えたわけではない。
北の最奥には、なお“沈黙”が残っていた。
嘆きの谷。
そこはかつて、前当主ユリウスが命を賭して魔物を討ち、領地を守り抜いた地である。
守護の意志が刻まれたはずのその場所で、ある時、命の気配が途絶えた。
温もりを失った乾いた砂。
風は鳴らず、水は応えず、精霊たちは沈黙した。
それは単なる荒廃ではない。
循環そのものが断たれた徴であった。
当主と聖女は急行し、谷の核に触れた。
そこで求められたのは、抑える力ではない。
満ちた力を正しく還し、途絶えた流れを“呼び戻す”ことである。
聖女は、己の調和をもって空白となった核に巡りを生み直すことを選び、
当主は、その土台として魔力を捧げた。
二つの力が共鳴した瞬間、沈黙していた谷は脈動を取り戻した。
乾いた大地は震え、流れは再び走り、若芽が一斉に芽吹いた。
この出来事をもって、聖女の力は「凪(安定)」に留まらず、
「再生(循環の創出)」へ至ったと記録される。
そして同時に、当主と聖女が――
二百年の歪みの中で失われ続けた転換点を、今代において取り戻したことが確定した。




