4話 採取
そんな流れで。
翌日、私たちは早起きして村の裏手にある森へ。
このあたりは辺境だけど、治安は良い。近くの森に魔物はほとんど出ないし、よほど森の奥地に分け入らない限りは、熊や狼も出ないそうだ。念のためと護衛に付いたユースティスは見事な装飾が施された長剣を帯び、いつもより少しピリッとした空気。
あれが聖剣なんだろうか……?
そんな疑問がよぎったけれど、深く突っ込むのはやめた。
ユースティスにとっても、勇者パーティーから追放された件に触れられるのは、つらいだろうから。
のどかな村を抜け、南の村の入口から森へ。
踏み固められた森の小道を進む。
ユースティスが先頭を歩き、周囲を警戒して小さな音にも反応して油断なく視線を動かしている。さすが元勇者。今でも彼は凄腕の剣士なんだろうな……。
森の小道を1/4刻程歩くと、道から少し外れた場所に、木々が避けたように円形に開けた広場があって、そこには色とりどりの可憐な花が咲いていた――。
木漏れ日の中で美しい花々が風に揺れている。
幻想的な空間に、私は思わず息を呑んだ。
「すごい、きれいな場所……。しかも、この花も、この花も……あ、この植物も錬金術の材料だわ。すごい!村の近くの森に、こんなに沢山錬金術の材料が自生しているのね」
王都では、錬金術に使う植物は学園の購買部や街の商店で購入していた。どれも乾燥しており、生産地である地方から運ばれてきたもので、鮮度は低い。しかも、安くはない値段で買っていた。一方、この森では、桃スミレ、青スミレ、よりレア度の高い紫スミレ、その他錬金術に使われる植物が大地の上で活き活きと根付いて風に揺れている。これを採取し放題?いやいや、もちろん生態系に配慮して最低限しか頂かないつもりだけれど!
「錬金術師はこういったものでも喜ぶのか。俺も冒険者だった頃は、魔物の牙や皮を、錬金術師に卸すという行商人に売っていたものだが……。必要なのは、そういったものだけではないんだな。この森の中には、錬金術の材料がまだまだ沢山眠っていそうだな」
ユースティスは意外そうに呟いた。
ユースティスの出自である隣国ムルシア王国は、サンドル国ほど錬金術が盛んじゃないからね。彼が錬金術の事を知らなくて当然かも……。レアな鉱石や魔物由来の素材だけでなく、様々な植物が錬金術の材料となる。都会であるサンドル王都育ちの私。辺境を舐めていました。
ここは錬金術の材料の宝庫かもしれない……。
「ねえねえ、ももすみれ、あったでしょ!」
嬉しそうに飛びついてくるココ。私はココの頭を撫で、頬にキスをして沢山の感謝を伝えた。
「ねえココ、アンジュからのお願い。一緒に桃スミレを詰んでくれる?あと、この青いスミレと、紫のスミレも。このカゴいっぱいになるくらいにね」
「いいよー!ねえ、アンジュ。おはなつむのおわったら、いっしょにはなかんむりつくろ!」
「それ、いいわね。かわいい冠を作りましょうね。じゃあ、冠はこの白い野菊で作る?」
「うん!それとね、このきいろいのもまぜるの!」
私はココと一緒に沢山花を摘んで集め、小さなカゴいっぱいの採取が終わると、白と黄色の野菊を編み、花冠を作ってココの頭に乗せてあげた。
白と黄色の花冠は、ココの蜂蜜色のふわふわした髪によく映える。
「かわいい?ねー、かわいい?おひめさまみたい?」
「よく似合うぞ、ココ。お前は本物のお姫様だな」
ユースティスはココと話しているととても満足そうで、幸せそう。本当に娘が大好きなのね。
「ココ、似合っているわよ。ココ姫様。アンジュの編んだ花冠、大切にしてね」
「うん、するー!」
ニッコニコのココと手をつなぎ、森の小道を抜けて村の雲雀館に戻った。
屋敷に戻る頃、太陽は天の中央に昇っていた。
帰宅してすぐ、ユースティスは台所へ。朝、屋敷を出る前に仕込んだという鶏肉と根菜の煮込みを温めはじめた。鍋から立ち上る良い香りにお腹が鳴りはじめた。
(続く)
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