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【連載版・完結済】婚約破棄&追放された悪役令嬢、辺境村でまったり錬金術生活(元勇者家政夫&その娘の女児付き)  作者: シルク
一部 辺境村の悪役令嬢錬金術師と追放勇者家政夫

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36/51

36話 戻ってきた日常

 秋が来た。

 新勇者パーティーの襲来から一週間が過ぎた。

 季節は変わり、澄んだ秋の風が頬を撫でていく。

 庭の紅葉は赤く色づきはじめ、植え込みの秋桜がつぼみを付け、色とりどりの花が今にも開花しそうだ。


 明日から、ココの幼稚園通いがはじまる。

 悩んだ末、ユースティスはココに定住生活をさせるため、幼稚園に通わせると決めた。

 幼稚園の保母さんには、ココの母親が来ても引き渡さないよう強くお願いしておいた。お迎えは必ずユースティスか私が行く、と伝えた。例外があれば朝ちゃんと伝えると。

 同年代の子供と遊べると、ココは幼稚園を楽しみにしている。

 

「これからは、幼稚園、いずれは学校に通う。毎日、一日中一緒に過ごせるのは今日までだ」


 ユースティスは少し寂しそうにそう言った。


「ね、せっかくだから、ピクニックを楽しみましょうよ」

「ココ、ピクニック好き!」


 私たちは、ココの幼稚園通いがはじまる前に、紅葉渓谷でピクニックすることにした。

 

 朝食が終わると、すぐにユースティスはお弁当作りを開始した。

 私は工房に降りて簡単な調合の作業。

 半刻ほどでユースティスが呼びに降りてきて、私たちは紅葉渓谷へ向かった。


 秋の森で、葉を黄色や赤に染めた木々が揺れる。

 紅葉渓谷は、涼やかな水の流れの上に、色づきはじめた紅葉が赤い葉のアーチが広がり、秋の気配に包まれていた。


「アンジュ、きょうはさいしゅするの?」

「ええ。何か錬金術の材料がありそうだったら採取するわ。それよりも、今日の目的はユースティスのお弁当よ」

「パパのおべんとうすき!」

「ココの好きなもの、たくさん用意したぞ」

「わあい!」

 

 ココはニコニコ笑い、軽やかな足取りで走り出した。


 小川の近くの岩場をゆっくりと歩く。

 ……王都からスズの村に来て約半年。色々な事があった。

 春が終わり、夏が通り過ぎて、そして秋が来た。

 大都会で暮らしていた時は、山道を歩くことなんてなかった。この村に来てから、ずいぶん採取で森や山に入ったなあ……。

 山道を歩くのにも慣れた。

 最初はすぐ疲れてしまったけど、今は体力もついて疲れにくくなった。私も変わったな……。


 前お弁当を広げた大きな岩の近くまでやってきた。

 川沿いの岩場の広場だ。森側には、沢山の秋の花が咲いている。

 ユースティスは持ってきた敷布を岩の上に広げて、その上にお弁当の入ったかごを置いた。

 

「昼飯の前に……アンジュ、採取するか?」

「ええ。ちょっと周りを見て回ろうかな。ココも一緒に来る?」

「うん!いくー!」

「俺も行こう」


 岩場の周りの森を、ココとユースティスと歩く。


「アンジュー!あれは?」

「あ……紅アケビだわ!あれは食べられるわね」


 ココが指さした木の上に、握りこぶし大の紅の果物がなっている。紅アケビだ。秋の果物。あまり王都では見かけないけど、図鑑で見たことがある。紅の皮の中には、とろりとした甘い果肉が詰まっているはずだ。


「採るか。肩車だ」


 ユースティスは屈んで私に乗るよう促した。

 照れくさいけど私はお言葉に甘えて肩車してもらって、紅アケビを採取した。

 その後も森を散策し、錬金術の材料になるキノコや植物をカゴいっぱいに採取。これで錬金術も捗りそう。

 

 気付くと太陽は真上に上がっている。


「そろそろ昼飯にするか」


 ユースティスが言った。

 私とココは元気よくはーいとお返事。

 ピクニック兼採取では、ユースティスのお弁当が一番の楽しみなんだから。


 敷布の上に竹かごのお弁当箱を並べて空けていくユースティス。

 お弁当の中身は豪華。

 鶏肉とキノコをバターソテーしたものが挟まったホットサンド。かぼちゃとマスカルポーネのサラダには炒めたベーコンと玉ねぎが入っている。そして錬金紙に包まれた牛肉のトマトクリーム煮込み。デザートはりんごジャム入りヨーグルトの入った瓶。

 

 私たちは手を合わせていただきますをすると、早速お弁当を頂く。

 なめらかなかぼちゃとマスカルポーネのペーストの合間で、ベーコンと玉ねぎのしょっぱさがアクセントになって、食欲が増進。ホットサンドは冷めてはいるけれど、表面はカリカリ、中身は具沢山でしっとりだ。キノコのシャキシャキした食感が楽しい。メインディッシュの牛肉のトマトクリーム煮込みは、優しい味だけど牛肉の旨味と香りがぎっしり詰まってる。


「ココ、このおにくすき!」

「この煮込みは、ココの大好物だからな」


 ユースティスはパクパクお弁当を口に運ぶココを見て目を細めた。


「私はこのサラダが好き。甘じょっぱくて食べれば食べるほどお腹空いちゃう」

「沢山食べてくれ。食べきれないほど作ってきたからな」


 私たちは遠慮なくお弁当を食べて……デザートのヨーグルトを食べ終わる頃にはすっかりお腹いっぱいになっていた。

 

「おなかいっぱい!」


 そう言ってココは敷布の上にぱたんと倒れ込んだ。


「おひるねしたーい!」

「いいわね……お昼寝。私もお腹いっぱいになったら眠くなっちゃった」

「少し横になれ。俺が見張ってる」


 ユースティスがそう言ったけれど……。


「パパもいっしょにねるの!」


 ココはそう言ってユースティスの腕の中に飛び込んだ。


「む……そうは言っても」

「ユースティス。この辺に獣や魔物の気配は?」

「……ない」

「じゃあちょっとだけ。お昼寝。皆で一緒にしましょうよ」


 ユースティスはその誘いに迷ったようだったけれど……色々言って断るかなと思ったけれど、頷いた。


「少しだけ、横になるか」

「そう来なくちゃ!」


 私たちは敷布の上で仰向けに寝転んだ。

 

 森に風が通り抜け、木々がざわめく。

 小鳥はさえずり、青空にはうろこ雲が流れている。

 ほどなくして、ココが寝息を立てはじめた。

 

 平和だ。

 

「ユースティス……私、この村に来て良かった。あなた達と出会えて、本当に良かった」


 私は独り言のように、自分の気持ちを口にしていた。

 

「俺も……お前と出会った事を感謝している。ありがとう。アンジュ」


 ユースティスの返答に、胸が暖かくなった。


 この日常が、私にとってかけがえのない宝物になった。

 

 数日後。

 ムルシア王国で勇者パーティーが北方で復活した竜級魔物を討伐したという話が伝わってきた。

 私がシド達に渡したアイテムで、上手くやったのだろう。

 これでムルシア王国に再び平和が訪れる。

 私たちの不安は消えた。


 そして。

 スズの村には本格的な秋が訪れた。

 

 黄金よりも価値のある平和な日々が、続いていく。

 

 辺境の村でまったり錬金術生活(元勇者家政夫とその娘の女児付き)……最高です。

 

(一部完 番外編&二部へ続く)

これにて、一部完となります。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

今日、同時刻に番外編「ユースティスの午前」「アンジュの午後」合計2話をアップしていますので、もう少しお付き合い下さい。

二部は予定中。執筆しています。

1週間から2週間ほど間を空けてからの投稿開始になります。

その期間にブクマ、評価等で応援頂ければモチベが上がります!


続きが見たい!楽しめた!と思われましたら、

ブックマークや評価で応援していただけると励みになります。

感想などもお待ちしております。


いつもありがとうございます。

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