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終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第七章 アークパンドラ編

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第705話 声をそろえるバイオリンク人間の恐怖

 BISC製剤を求めて大病院にやって来たが、 裏手で様子を伺っていた。人間の気配が大勢あって、それが動いていない。


「バイオリンク人間がいるってことか?」


「そうだ。見つからないように動くしかない」


 皆が頷き、俺の後ろをついて病院に入り込んでく。進んでは合図をして止め、息を殺して進んでいく。アビゲイルが病棟の案内板を見ながら、指をさして進む方向を指示した。


 だが俺達が進んでいると、突然バイオリンク人間達が動き出した。


「休止時間が過ぎたか?」


「どうする」


「ひとまずその部屋に」


 病室に忍び込み、そっとドアを閉めると、台車を引いたバイオリンク人間が通り過ぎていく。


「……補給……か……」


 オオモリが口を押えて、グッと嘔吐を堪えた。あれを直に見ているのは、俺とアビゲイルとオオモリ。オオモリはあの時の、人間スープを思い出してしまったらしい。


「押さえろ」


 オオモリが口に手をあてつつ、ウンウンと頷く。


「行ったか……」


 俺達は再び廊下に出て、さらに進んでいく。入り組んだ通路を進むと、薬品室の前に辿り着いた。


「電子ロックだ」


「つうことは……」


 タケルが力を入れて、グッと扉をスライドさせると、ゆっくりと扉が開いた。電源が通っていない為、ロックがされていないようだ。


「冷凍されていない状態で、どうなっているか……」


 更に奥に、厳重な扉が現れる。それも難なく開いて、するりと奥に入り込む。


「氷が溶けてますね……」


 中は冷凍室だったのか、水浸しになっていた。その奥の冷凍庫に、BICSと書いてあった。


 そのドアを上に開けると、中が水浸しになっている。


「ありました……」


 水の中に、鉄の缶のようなものが転がっている。アビゲイルが手を入れようとするので、手を遮る。


「これは、水じゃない。俺が取る」


「わかりました」


 スーツを脱いでミオに預け、ワイシャツの袖をまくる。水に手を浸すと、そこから凍り付き始める。


「なんだこりゃ」


 タケルがそれを見ていうと、シャーリーンが答える。


「恐らくは、最新の不活性液体かと思われます」


「特殊な液体か」


 ボトルを掴みあげると、みるみる凍り始めた。アビゲイルが手を入れていたら、手が凍り付いて落ちていたかもしれない。それを、アビゲイルに見せる。


「間違いありません。BISCです」


「よし。それで、どうする?」


「この状態では、完成していません。前の町で手に入れた、バイオリンク人間の遺伝子と掛け合わせて、完全に対応できるようにしなければなりません」


「電気……が必要か……」


「はい」


 そうなると、バイオリンク人間に侵入が気づかれてしまうだろう。だがここで完成させてしまわねば、この先に進むことは出来なかった。


「非常電源を入れるしかない」


「バイオリンク人間が動き出すわ」


 すると、シェフチェンコが言う。


「地下に非常電源の装置があるだろうが、そこまでに、見つかってしまうのでは?」


「いや、俺とマナで行く。皆はここで息を潜めて待っていろ。電気が通ったら開発するんだ」


 皆が頷き、俺とマナがそっと部屋を出る。地下の奥にむかっていくと、マナが自ら進みだす。


「こっちよ。あったわ」


「これの電源を入れたら、奴らが目覚めるだろう」


「そうね。でもやるしかないわ」


「ああ」


 マナが装置を操作していき、レバーに手をかけて言う。


「入れるよ」


「やってくれ」


 ガチャン。ゴウンゴウンゴウン!


 電気が入り、病院内の電気がついてしまう。


「動き出した……」


「でも、これで、アビゲイル博士が、BISC製剤を完成させられるわ」


「なら、俺達は、奴らの意識を逸らそう」


「そうね」


 一階に上がり、無造作に廊下を歩いて行く。するとバイオリンク人間に見つかり、銃を向けられた。


「いくぞ!」


 俺はマナを抱き上げ、脱兎のごとく上に向かう階段を走り始める。すると上からも、バイオリンク人間が銃を構えておりてきた。


「挟まれたわ!」


「大龍深淵斬!」


 ジャキ!


 階段の上に穴が空き、俺はマナを抱いたまま飛び上がる。その穴に入り込み、下を覗き込むとそこに銃弾が飛んできた。そのままマナを担いで四階まで昇っていくと、廊下の方からバイオリンク人間がぞろぞろとやってくる。


「やっぱり、共有が、かかってるみたいねヒカル。みんなこっちに向かって来てる!」


「いいんだ。出来るだけ、引き寄せるぞ」


 五階に上がり、俺は壁を思い切り殴って音をたてる。壁に穴が空き、つられてバイオリンク人間の気配がこちらに向かってきた。だから俺は、そこで足を止める。


「先に行かないの?」


「まだだ。見つけてもらわないと」


「そっか。わざとか」


 バイオリンク人間が現れたので、また上階に向かって昇り始める。あちこちからバイオリンク人間が、俺達に向かって進んできている。


「やはり。一括で操られているようだ。無駄なく、全てが真っすぐこちらにむかっている」


「気味が悪いわね。あ、ヒカル行き止まりよ!」


「いいんだ。ここで待つ」


 通路の向こうに、ゾロソロとバイオリンク人間がやってくる。


「結界! 金剛!」


 俺はマナを抱えたまま、結界をはり、身体に金剛をかけて銃から守るようにした。


 ダダダダダダダダダダ!


 マシンガンを打ち込まれて、俺はそれを背中で受けた。マナにも結界を貼っているが、俺の腕の中で、マナは目をつぶり恐怖に耐えていた。


「大丈夫だマナ。銃は俺には効かない」


「分かってるんだけど……やっぱり怖い!」


 仕方あるまい。相手の狙いも正確で、どのバイオリンク人間も、急所に向かって撃ち込んできている。


「正確すぎて守りやすい」


「そうなの?」


 次々にこの階層にバイオリンク人間が登ってきて、マシンガンや銃で撃って来る。


「普通なら、俺が倒れない事を不思議に思うはずだが。馬鹿の一つ覚えみたいに、撃ち込んでくる」


 すると、ぴたりと銃撃が止んだ。


 俺達がそろりと後ろを振り向くと、バイオリンク人間達が一斉に同じことを言う。


「「「「「「お前達は何者だ?」」」」」」


 まるで合唱のようだった。


「どうするのヒカル?」


「答えてみるか」


「答えるの??」


「ああ。俺の後ろに隠れていろ」


 俺はマナを背中に隠して、バイオリンク人間に向かって叫ぶ。


「俺は! 自由を愛する者! 誰にも縛られる事無く! 自由に生きる者だ!」


「「「「「不適合者か……」」」」」


 気持ちが悪い。一人と話しているかのように、数十人と会話している。


「不適合者?」


「「「「「旧世代の人間だ」」」」」


「……お前は誰だ?」


「「「「「……お前に名乗る名は無い」」」」」


「アークパンドラのものか?」


「「「「「……」」」」」」


 答えなかった。まあ、間違いないだろう。全員の口を使って、俺と話をしている。


「お前達のやっている事は、間違っている!」


「「「「「「虫けらが……」」」」」」


 すると、奥の方に、バズーガを持っている奴が現れた。


「フッ。それで、俺が倒せるとでも?」


 だが有無を言わさずに、バズーガを撃って来る。


「刺突閃」


 居合でバズーガを爆発させる。俺達に直撃する前に爆発させ、煙がこちらに流れた。煙が流れたあと、バイオリンク人間が同じことを言った。


「「「「「なぜ生きてる!」」」」」


「さてな」


「「「「「貴様……アメリカから報告があった……イレギュラー……」」」」」


「なんだそれは?」


「「「「「……人ならざるもの……」」」」」


「俺は……人間だ!!」


 だが、有無を言わさずまた、銃撃が始まったので、俺はマナに言う。


「時間は、稼げたと思うか?」


 マナが青くなりながらも言う。


「多分アビゲイル博士なら、十分かも!」


「よし。推撃!」


 ドン!


 壁に穴をあけて、俺はマナを抱いて外に飛び出た。一気に落下して地面に降り、すぐに仲間達がいる、場所の外側に向かって走り出す。


「中に行かないの?」


「こっちでいい」


 俺は壁に狙いを定め、次々にくりぬいて行く。そのまま直線で、仲間達がいる部屋に辿り着いた。


 ドゴン!


「おわ! こっちから来た!」


「待たせた。アビゲイル、どうだ?」


「出来ました! 入り口にバイオリンク人間が押し寄せて来ていて、身動きが取れなかったところです」


「行くぞ」


 そして皆、薬品が入ったケースを持って、真っすぐに外に出る。そして俺は、バイオリンク人間の気配がない方向に向けて、剣技を撃った。


「剛龍爆雷斬!」


 小さく力を抑えた爆雷斬が飛んでいき、遠くにあった車が大爆発を起こす。バイオリンク人間達の意識がそちらに向かう。そして、俺達は反対方向の暗がりに向かって消えたのだった。

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