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終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第七章 アークパンドラ編

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第706話 ドーム内部物質を持ちだし熱暴走を食い止める

 俺が放った剛隆爆雷斬の爆発につられて、バイオリンク人間達が一斉にそちらの方向に向かっていく。それを隠れた場所から見ていて、タケルが言った。


「ゾンビと一緒だ。光と音につられて歩いている」


「まあ……あれは指示されて動いているんだろう」


「そうか」


 数万のバイオリンク人間達が、剛隆爆雷斬が爆発したところに集まり、俺達の周辺からは消え去った。そこですぐに、あの軍事施設に向かう。


「どうやら、やつらは出払っているようだ」


「本当に一斉に動くんだな」


 それを見て、シェフチェンコが眉をひそめた。


「恐れを知らない兵士か……しかも、自分の意思とは関係なく、火の中も水の中にも」


「ゾンビなら、死んでっから良いけどよ。痛みも感じるんだろうな……」


 タケルの言う通りだった。ゾンビならもはや、人間の意識も無くなっている。だが人間のまま操られるバイオリンク人間は痛みを感じるだろう。意識はないのに、痛みを感じても進まなければならないなど、地獄でしかない。


「急ぐぞ」


 奴らが居ないうちに、潜入すれば無駄に殺す事も無い。そこで俺は、大急ぎで軍事施設に潜り込んだ。さっきのルートを辿って、最短であの場所にむかう。だがそこに、奴らの気配がした。


「扉を切っていたからな。護衛を置いているようだ」


「どうする?」


「ゾンビ因子を切るしかあるまい」


 状況は切迫している。俺達が、その場所に降りていくと、操られている軍人たちがいた。


「縮地」


 一瞬で、そいつらの中心に躍り出て、すぐに魔力を開放する。


「ゾンビ因子除去」


 すると軍人は真っ白になりながら、ぱたぱたと倒れていった。それをみて、シェフチェンコが慌てる。


「殺したのか?」


「いや。操られている因子を消した……が目覚める事はない」


「……致し方ないか……」


 同じ軍人が眠らされたことで、思う事があるのだろう。だが、今は急がねばならなかった。


「アビゲイル!」


「はい」


 再び、あの鉄のドームのところに辿り着く。


「この……おかしな気配に……聞くのかしら?」


 ミオが怪訝そうに言うが、今はそれを試してみるしかない。


 アビゲイルが言う。


「おそらくは、感染の原理と似たものを使っていると思うのです」


「やってみるしかない」


 俺が言うと、アビゲイルが頷いた。


「どうすればいい?」


「動力を破壊すれば、止まってしまうかもしれません。どこかに小さな穴をあけていただけませんか?」


 俺は村雨丸を構え、鉄のドームに向かって居合を抜く。


「極光刺」


一瞬だった。


「開いたぞ」


「あ、あのどこに?」


「ここだ」


 針ほどの穴を指さすと、アビゲイルが頷いた。


「流石です。これなら、それほど内部には影響がないかと」


 そうして、長い針をその穴に差し込んで、出来上がったBISC製剤を流し込んでいった。


「どうか……」


 静まり返る。じっと鉄のドームを見ているが、何か変わった様子はなかった。


「失敗でしょうか……」


 ドグン!


 気配を感じる、俺とミオが反応する。


「……」

「きゃあ」


「ど、どうしました?」


「変な感じが……」


 ミオが答える。だが、何か……俺には不思議な感覚だった。


「これは……」


「何かしましたか? ミスターヒカル」


「いや……何か、俺はこれに似た感覚を知っている……」


「なんです?」


「分からん」


 分からなかった。だが、この感覚は初めてのものではなかった。なにか、以前に感じた事のある感覚。


 その時だった。


 ビービービービー!


 突然警報が鳴り響いた。それと同時に扉の外に鉄の扉が降りて来る。


 ガシャン! ガシャン! ガシャン!


「こりゃ、バレたな……」


「どうするヒカル?」


「退却だ。無駄に殺さねばならなくなる」


「了解」


 皆が頷き、シェフチェンコが扉を叩いて言う。


「これは……チタンだ。チタン合金のシャッター……しかも……反響から考えて五十センチはあるぞ……」


 俺が、それに答えた。


「問題はない。そもそも元の道を通らない、バイオリンク人間と鉢合わせになる」


「では……」


 俺は他の壁に向かって、村雨丸を構えた。


「絶鋼一閃」


 壁をくりぬいた。


「行くぞ」


「か、壁も、チタン合金の壁になってるぞ……斬ったのか」


「そうだ」


 アビゲイルが鉄の針をドームから抜いて、その先についているものを見る。


「ひ、光ってます……」


 その物質……やはり、既視感があった。


「ひとまず回収だ」


「はい」


 ケースにそれを入れて鍵を閉め、タケルがそれを持つ。


「いいぜ」


 俺が先に進んで、皆が追いかけて来る。バイオリンク人間たちの気配とは、反対側に抜けて外に出た。だが、どこに向かっても恐らくは、奴らに接触してしまうだろう。


「そこの建物に入ろう」


 俺は、やつらの気配のない建物を指さす。先ほどの施設からそれほど離れていないが、今下手に動けば必ず見つかってしまう。急いでその建物に入り込み、暗い中を走って奥に行った。


「これは……劇場?」


 座席が並んでおり、正面にステージがある。皆が息を切らし、その椅子に座り始めた。


「ひとまず、ここでやり過ごそう」


「そうね」


 だがその時、タケルが言う。


「なんか……暑くねえか」


「うん」

「そうね」


 ツバサもミナミも同意見のようだった。


「タケル。それ」


 持っていた保存ケースが、膨張している。


「な、なんだこりゃ」


 タケルが驚いて、床に置いた。次第に、ジュラルミンケースの表面が赤くなり始める。


 シェフチェンコが言った。


「放射性物質とかじゃないのか?」


 だが、俺が首を振る。


「核とは違うものだ……だが、なぜか俺はこれを知っている」


「なんだ?」


「それが、分からない」


 どんどんケースが、変形し始めた。


「や、やべえぞ」


 村雨丸を構える。


「氷結斬!」


 ビシィ! ケースが凍るが、シュウゥゥゥと湯気を上げた。


「氷結斬ではダメか……」


「ば、爆発すんじゃねえの!!」


「レベル二百解放! 白夜絶界凍!」


 ビキビキビキ! 完全に止まった。この中では、粒子すら凍っている。


「と、とまった」


「俺の、剣技が……効かなかった」


 初めての事だった。この世界に来てから、俺はいざという時しか、奥義などを使ってはこなかったが、こんな所で使う事になるとは思わなかった。


「なんなんだ。いったい……」


 それに、アビゲイルが答える。


「増殖……もしくは、全く新たな物資の存在かもしれません」


「なにかはわからない?」


「それは……分かりません」


 膨張は収まっている。今は外のバイオリンク人間の気配も、あの軍事施設に集中しているようだった。もしかすると、じきにここにも来るかもしれないが、今は冷静に次の動きを考えねばならなかった。


「敵の真っただ中だ。下手に動く事は出来ん」


 そこで、シャーリーンが言った。


「そして、これ……一体何なんでしょうか?」


「だな」


 そこで、オオモリが言う。


「凄いエネルギー反応でしたよね。針も光ってたし」


 クキも頷く。


「だいぶマズいものだという事は分かった。あれだけ厳重な施設にしていたのは、中を守る為じゃなく、これの増殖や爆発を、防ぐためのものだったんじゃないのか?」


 クロサキが汗をぬぐいながら言う。


「でしょうね。相当な熱量でした。部屋があっという間に、十度以上、あがりましたよね」


 ミナミが冷静に言う。


「これ、ヒカルが居なかったらどうなってたかしら」


「かなり危険だったじゃろうな」


 エイブラハムも、髭から汗を滴らせながら言う。そこで、シェフチェンコが聞いて来た。


「あんな危険なものを、あの軍事施設では……何をしていたんだ」


 そこで、俺が答えた。


「ロシアで見つけた敵が、ウクライナの南部に逃げた。恐らくは、それと無関係ではないだろう」


「あれは……どうなるだろう?」


「分からない。だが、あれが奴らにとって重要な物であることは分かった」


「そ、その通りだ……が……」


 誰も説明などつけられなかった。ただしあの物質が何なのか、なぜか俺はあれを知っている気がした。だが思い出そうとしても、何故か思い出せない。


「まずは、俺が気配感知で見張っておく。そしてこれもな」


 凍らせたケースを指さした。


「わかった」


 今までにない出来事に、俺も答えが出せなかった。それは、ここにいる皆も同じ。


「今までとは違うし、奴らの技術なのかどうかも分からない。だが、俺は、多分これを知っている」


「でもわからないと?」


「そうだ。だが……俺の勘だが、なにか核心に近づいている気がするんだ」

 

 すると、タケルが言う。


「まあ、ヒカルが言うならそうだろ。で、どうすっかだな」


「これを調べられないのかしら?」


「うーん。だいぶあぶねえぜ」


 俺は、そこで皆に言う。


「これは、恐らくかなり危険なものだ。これは、俺が持ち運ぶ事にする」


 皆が頷く。


「ひとまず、すぐには動けん。皆、ここで体を休めろ」


 だがシェフチェンコが、俺に言った。


「奴らが来たら?」


「今は来ない。そして俺の方が、早く気付く。その前に逃げれば問題ない」


「わ、わかった」


 そうして仲間は、汗をかきながらも劇場の折り畳み椅子に座り、じっと置いてあるケースを見ていた。今は俺の剣技で凍り付いている。


 ……何かがおかしい。


 俺の奥底が、警鐘を鳴らすほどのものだった。この世界に来て初めて感じる脅威に、俺は思考の底へと沈んでいくのだった。

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