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終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第七章 アークパンドラ編

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第700話 バイオリンク人間への悪魔の配給

 俺達は拠点で、数時間の休息を取らせてもらった。市民も疲弊していて、食料も底をつきかけている。恐らくあと数日も持たないだろうし、総攻撃を喰らったら全員死ぬだろう。


 そして、夜が更けた頃、ロウソクの光に照らされて、大学教授とシェフチェンコ少佐がやってきた。


「今日は、爆撃がありませんでした。あなた方はついている」


「爆撃の頻度は?」


「二日に一度の頻度で」


「これ以上やられれば、逃げ場が無くなる」


「その通りです。もう、限界が来ています」


「打開策を見つけねば」


「そろそろ、時間になります。本当に打開策はあるのですか?」


 打開策……というほどのものではないため、俺たちは口を閉ざした。だがそこで、アビゲイルが言う。


「操られる人達の生態を、私達は知らないのです。ここで一度その状況を見ておきたいと思っています」


「わかりました。ではタラフ一等兵」


「はい!」


「一個小隊を連れて、哨戒任務にあたってくれ」


「わかりました。では、そちらの人達は誰が?」


 俺が、クキに言う。


「この市民も守らねばならん。俺とアビゲイルとオオモリで行こう。この拠点で守備にあたってほしい」


「わかった」


「ミナミはどうだ?」


「食べたら、少し血が戻った感覚よ。任せて」


「よし」


 そこで、エイブラハムが言った。


「ヒカル。孫を頼んだ」


「もちろんだ。みんなも、十分注意して敵の攻撃に備えろ」


 皆が親指を立てた。俺達三人は兵士四人について、その体育館を出ていく。電気が通っていないので、あたりは殆ど闇だった。兵士四人は、暗視ゴーグルをつけながら言う。


「お三方の分もありますが?」


「不要だ」


 俺の言葉に、オオモリもアビゲイルも頷く。二人もレベルアップしているため、ほんの僅かな星の光でも見渡す事が出来るのだ。ここまでの、冒険で全員がかなりレベルアップしている。崩壊した都市では、静かに虫の声が鳴り響いていた。だが、それ以外は静まり返っており、その中を兵士達が進んでいく。


「そろそろです」


 一時間も歩いたころ、都市の中心部あたりに到着した。オオモリが言う。


「凄く静かですね」


「はい。ですが、奴らはこの界隈のどこかに潜んでいます」


「なるほど……」


 俺が腕を上げて、皆に言った。


「ちょっとまて」


「なんです?」


 俺は気配感知を広げる。すると……一角に、人の気配が集まっていた。


「居た……」


「なにがです?」


「人間の集団だ」


「なんで……分かるんですか?」


 タラフが、怪訝そうな顔をする。恐らく操られている人間のことで、疑心暗鬼になっているのだろう。なので、俺は分かりやすく伝えてみる。


「先ほども言ったはずだ。俺は、武術の達人なんだ。人の気配を察知して、戦う事が出来る」


「武術の……」


「極めれば、そういう事も出来るようになるんだ」


 嘘は言っていない。この世界で見た、DVD映画で、それ風な事を言っているのを見た事があるので、その言葉になぞらえて言ってみた。


 すると、オオモリが乗って来る。


「ジャパニーズニンジャ」


「ニンジャ! あなた方はニンジャ?」


「そう言う事」


 変に思われるかと思ったが、オオモリが純日本人なので信じたらしい。


「凄い……ニンジャ……」

「あなた方は、ニンジャ集団なんですね」


「そういうことだ」


 俺は、人間の気配がする方向に向かって進んでいく。すると、その先に大きな建物が見えてきた。


「あそこだ」


「あれは……私の通った小学校です」


 と、タラフが驚いたような顔をした。


「あの中に、いるぞ」


「わかりました」


「静かについてこい」


 俺達が先に進み、四人が後からついて来た。そして俺は、更に気配感知で内部を調べる。


「……似ている」


 オオモリが、俺に聞いた。


「なにがです?」


「あの……北極の都市の下にあった都市。あれと同じで、人間が動いていない」


「どういうことでしょう?」


 俺は振り向いて、軍人に伝える。


「いいか? 恐怖に陥っても絶対に撃つな。先に居るのは、操られているだけの人間だ」


 四人が頷いて、俺は、そっとその建物を見渡した。


「あそこから入れる」


 ひたひたと進み、そのドアを押してみると音もなく開く。建物の中は電気も通っておらず真っ暗だが、間違いなくこの奥に人の気配がある。更に暗い廊下を歩いて行くと、床にガラス片が敷き詰めてあった。


 俺は手を上げて、全員を止める。そして、小さな声で囁いた。


「廊下に、ガラスが撒いてある。踏めば音がするぞ」


 すると、タラフが言う。


「教室に掃除道具があります。教室は子供達で掃除するので」


「よし、それをもってこよう」


 タラフが横の教室に入り込み、掃除道具を持ってきた。俺が、床のガラス片をそっとどかしていく。


「俺達の後ろをついてこい」


「わかった」


 床のガラスをどかしながら行くと、階段が見えてきた。


「上だ」


「はい」

 

 ゆっくりと階段を上がっていると、兵士の息遣いが荒くなってくる。


「恐れるな。相手は、同じ人間だ。心拍数を押さえろ。呼吸を深くしろ」


 スーハーと深呼吸をし、兵士達が気持ちを押さえた。そこで、タラフが聞いて来る。


「あなた達は、怖くないのですか? 非常に落ち着いているようですが」


 すると、アビゲイルがニッコリ笑って言う。


「もう慣れました。最初は、死ぬほど怖かったですけどね。いるのが人だと思うと、怖さはありません。ミスターヒカルがそばにいますし」


「いくら、武術の達人でも。銃を持った人が、大勢かかって来ればひとたまりもないですよね」


「いや、俺に銃は効かん」


「それも……ニンジャの?」


「そうだ」


 俺が言いきると、オオモリとアビゲイルが耐えきれずに笑った。だが、兵士達はそれどころでは無いようだ。


「いいか? 銃は使うな。他の奴らをおびき寄せてしまう。ここは、もう巣のなかだ」


「えっ?」


「あちこちにいる。騒ぎを起こせば、流石に目覚めるだろう」


「……わかりました」


 そのまま、人の気配が多くいる方へと進むと、ある部屋の前に到着した。


「ここは?」


「視聴覚室ですね。防音がしっかりしてる部屋です」


「なるほど……」


 そして俺は口に指をあてて、声を出さないように指示する。そっとその取っ手に手をかけると。スッ! っと静かに開く。


 いた……。


 その部屋の中には、何列にも立ち尽くした人間たちが居た。ただ立っているだけで、動く様子はない。だがその光景を見た兵士達の心拍数が、これ以上ないくらい上がっているので落ち着くように合図する。それでも、銃を下ろす事は出来ないようだ。相当な恐怖を感じているらしい。


 シュッ!


 俺は縮地で、その部屋の中心に現れる。そしてすぐに、ゾンビ因子除去魔法を発動する。


 シュオオオオオオ!


 白目をむいて立ち尽くしていた、操られた人間達が真白になってその場に倒れた。


「なっ!」


 タラフたちが声を上げようとしたので、俺は手を上げてそれを制する。


「静かに話せ」


「な、なぜ倒れた?」


 それをどう説明したらいいのか、一瞬迷ってしまう。するとオオモリが耳打ちした。


「ジャパニーズニンジャの術」


 俺はタラフを振り返り、落ち着いて言う。


「ニンジャの術だ。驚いたか?」


「お、驚いた……」

「死んだのか?」


「いや。眠ってもらっただけだ」


 そこでアビゲイルが、四人に告げる。


「拠点に運び込んだ、四人の人達がいたでしょう? あの人達と同じで、生きてはいるけど目覚めない。放って行けば餓死するでしょう。でも、あなた方も撃ち殺される事はない。一時しのぎではありますが、こうする事で脅威は減ります」


「……」


「で、なんで、こんな所で大人しくしているのかってことですよね? 博士」


「そうですね……オオモリ……まるで、電源を切られたおもちゃのように、立ち尽くしていたようですね。やはり、休止させなければいけない理由があるのでしょうか? ゾンビとは違うようです」


「生きているからかな……だが、随分衰弱しているように見えますね」


「この状態だと、著しく消耗するのかもしれません。もしくは、食料が足りていないのかも」


 それを聞いて、オオモリが言う。


「ああなるほど、北極の意識体の設備は、その辺りを解消していましたね。海洋生物や生き物を捉えて、養分にしているような事を言ってました」


 するとそこに、移動して来る人間の気配がした。なにか、カラカラと音がする。


「何か……来ましたね」


「皆、身を潜めろ」


 部屋の奥に下がり、皆が闇にしゃがみ込む。するとガチャガチャと、ドアを開いて何かが入って来た。それは台車を押している人間で、恐らくは操られている。三人が、そこに来て立ち止まった。


 やはりゾンビ因子か……。


 縮地で移動し、ゾンビ因子除去魔法を発動する。すると白い粉を拭き、そいつらはドサドサと倒れた。


「凄いな……ニンジャ」


 だが、俺はその台車に乗っているものを見て、絶句した。


「これは……」


「どうした?」


 皆が集まってきて、台車に乗っているものを覗き込み、オオモリがそこからバッと距離を取る。


「おええええええ」


 いきなり吐きだし、四人の軍人たちもよろよろと後ずさる。


「なんという事を……」


 操られている人間が台車に載せて持って来たのは、ドラム缶の様な容器の中に浮かぶ、真っ赤な水と、浮かび上がる骸骨だった。その一部に溶け残った目玉や、髪の毛などがこびりついているのだった。


「こいつらの……生命を維持するための養分……」


「まさか。死んだ人を、こんな形で食べさせていたなんて……」


 そういう事だったのか……。


 ゾンビにならない人間は、栄養を取らねばならない。敵は、人間を溶かして与えていたのだった。

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