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終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第七章 アークパンドラ編

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第701話 死の町からの脱出計画

俺の気配感知に、人間達が近づく気配がした。恐らくは、バイオリンクで共有されて気づいたのだ。


「近づいて来る」


 そこで、アビゲイルが言う。


「これ以上、眠らせれば、維持ができなくて死ぬものも出て来るでしょう」


「すぐに、脱出するぞ」


 俺が、タラフ達に説明をし、奴らに見つからないように離脱する方法を考える。


 タラフ達が、頷いて言う。


「そうだな……ただ操られているだけの人間を、見殺しにする訳にはいかない」


 皆が納得したところで、俺は気配がしない方向を確認する。


「みんな。ついてこい」


 バイオリンクは、規則正しい団体行動をするらしく、一定の速度で固まって動いているように感じる。一階まで速やかに降りると、上階の大量に眠らせた部屋に、人間が集まっている気配がした。


「いまのうちだ」


 俺達は、夜の闇に紛れてその施設を後にする。


「恐らく、一定の時間が過ぎると、また動き出します」


「タラフ。なら、さっさと抜け出る事だ」


 足早に都市を進み、一時間。バイオリンク人間が動き出す前に、仲間の拠点に辿り着つく事が出来た。すぐに仲間達と、シェフチェンコ少佐、大学教授を読んで、見てきた情報を伝える。


 血相を変えて、大学教授が言う。


「そんな……そんな悪魔みたいなことを!! なぜ……!!」


 兵士の一人も、あっけに取られて呟いた。


「私達の……近隣住民が……スープに……?」


「はい。恐ろしいものでした」


 タラフの言葉に、皆が言葉を無くし、拳を握りしめ歯を食いしばって鋭い目つきになる。


 そこで、クキが言う。


「だが、今はどうする事も出来ない。ここの住民をうまく、都市から脱出させることを考えるべきだ」


「しかし! 近隣の友人や、家族が家畜のように、しかも同族を喰らわせられている!」


 兵士の一人が言うが、シェフチェンコがそれを制した。


「いや。九鬼の言う通りだ。そこに足をとられれば、ここにいる全員が同族に殺される」


「しかし……」


 そんな話をしている時だった。


 ズッズゥゥゥン!


 爆音と共に、地響きが鳴り響く。


「砲撃が始まった! 皆、地下に避難するんだ!」


 皆が騒然と慌てて動き出し、俺が皆に目配せをする。


「大丈夫だ」


 すぐに走り出して、俺はその建物の外に出る。そして天井に飛び、精神を集中させた。


「来る。次元断裂」


 次々に飛んで来る砲弾を、別の空間に飛ばしてやる。弾が消えたと同時に、射出の轟音が鳴り響いた。どうやらそれは、一方向から飛んできているらしい。すぐにそちらの方角に向かい、移動を開始すると、そこに戦車や砲塔が並んでいた。


「認識阻害、隠形」


 完全に気配を絶って、そこに降り立つと、バイオリンクで操られた人間達がいた。


「そうか……ただ指示されて撃っている訳か」


 そこには、ロシア兵もウクライナ兵も、一般市民もいるようだった。彼らには何の感情も殺気も無く、ただ静かに業務でもこなすように効率的に砲撃をしている。


「脚力上昇」


 俺はコマネズミのように、先頭車両の間を走り抜け、次々に車両を壊していく。


「冥王斬! 冥王斬! 冥王斬!」


 操られた人間を避けて、俺は全ての戦闘車両を無力化した。だが……、変わらずに弾を込めようとし、同じ動きを繰り返していた。


「学習は……しないようだな……」


 車両が破壊された事にも気づかず、ただ同じ行動を繰り返そうとしているが、もう弾はこめられない。俺がじっとそれを見ていると、ようやくぴたりと手を止めて、ボーっと立ち尽くした。


「どうなる……」


 すると、何ごとも無かったように、ぞろぞろと引き返していった。


「知能的なものが壊れているのか? ゾンビ化兵には劣るという事だな」


 俺はすぐに、拠点に戻る。するとタケルが、手を上げたのでハイタッチをする。


「ヒカル。攻撃が止んだな」


「ああ、タケル。砲台を壊して来た」


「しばらくは、攻撃は止むか?」


「他にも兵器を隠しているかもしれん。まあ、すぐはないだろう」


 すると、シェフチェンコが首をかしげる。


「破壊……してきた? 武器を持っていないようだが?」


 すると、タラフが言う。


「ニンジャの技なのだそうです」


「……貴様は、それを信じているのか?」


「でも……この目で見ました」


「……まあいい。ただ、この時間帯は爆撃など無いのだが……」


 それを聞いて、オオモリが答えた。


「もしかすると敵の拠点に忍び込んで、バイオ人間を眠らせた事が全体に共有されたのかもしれません」


「全体共有……電子機器を使ってか?」


「いえ、おそらくは。生体同士で繋がりを持つ技術のようです」


「完全な……兵士……か」


「そうですね。感情がないから恐れも無いし殺気も無い。淡々と命ぜられたコマンドを実行するだけの、人形になっているのだと思います」


 ドン!


 シェフチェンコが、壁を殴りつけて穴が空く。オオモリが驚いて、ビクッとした。


「くそが……」


 俺が、シェフチェンコに告げる。


「だが、あの人らが、養分の補給をしている間が逃げ出すチャンスだ」


「そうだな……今までは、確証が持てずに動けなかったが、敵が動かない間に、抜けるしかないか」


「だが、気づかれれば一気に目覚めだすだろう。ゆっくり歩いていては、途中で攻撃される恐れがある。車両を用意して、次のタイミングで一気に抜け出すしかない」


 シェフチェンコが、タラフに目を向けると、タラフが頷いた。


「その人が言う通りです。眠ったようになっている時は、再起動にも時間がかかるように思われました」


「よし。なら、次のタイミングで避難できるように、警戒しながら動く車を一台でも多く集めるんだ!」


「「「「了解」」」」


 そして大学教授が言う。


「アビゲイル博士。どうにかならないものですかね……」


「教授。BISCをご存知ですか?」


「はい。まだ完成はしていないようですが、新薬です。人の免疫を上げ、不要な細胞の不活性化をして、人体が持つ再生能力を最大限に高める技術と聞いた事があります」


「まあ……半分は正解です。もう一つの側面は、崩壊を阻止する事が出来る。アメリカでは、一定の効果を上げる事が出来ました。それを更に進化させることで、回復させることが可能であると推測されます」


「それを作れば……」


「その情報を得るために、電波妨害しているものを破壊せねばなりません」


「通信が繋がると、なにか手立てが?」


「いま、最高の頭脳が、それを解析しているはずです。その情報と繋がれば……あるいは」


「いずれにせよ、この荒廃した土地から脱出せねば、無理という事ですかな」


「そうなります」


「わかりました」


 シェフチェンコが、更に聞いて来る。


「どこか目星は?」


 そこでクキが話す。


「アークパンドラの拠点が、このウクライナのどこかにある。敵が逃げたのを捉え、我々は追ってきた。ただ情報が途中で途絶えて、この国の奥の南側までしか分からない。だが恐らく実験をするにあたって、人口の多い場所に逃げ込んだ可能性は高い」


「南側で大きな都市と言えば、ドニプロかオデッサになる」


「ならば、まずは市民達を逃がし、我々はドニプロを目指す」


 すると、シェフチェンコが言う。


「君らだけでか?」


「そうだ。ここから先はかなり危険だ」


「なら、私だけでも連れて行ってくれ。こんな悪魔の所業をした奴らを、許しては置けない」


「……」


 俺達は、顔を見合わせた。


「まずは、市民を安全な場所へ。過疎地ならば、どうにかなるかもしれん」


「わかった」


「では、少佐。急ではあるが、明日の敵が寝静まる時間が、作戦決行の時間だ。全部隊と市民に通達し、軍人はそれまでに準備を終わらせる。市民は出来るだけ、休息を取らせるんだ」


 そして、シェフチェンコが兵士達に言う。


「聞いた通りだ! 車両の手配を整える必要がある! 壊されていない車を、一台でも多くかき集めろ! そして市民には、休息をとるように言うんだ」


「「「「了解!」」」」


 そうしてにわかに、拠点が活気づき慌ただしく動き出した。そこで、シェフチェンコが俺達に言う。


「ありがとう。もう、希望など残っていないのだと思っていたよ」


 俺が、シェフチェンコに言う。


「安心しろ。こんな事をやった奴らは、一人残らず始末してやる。俺達は、その為にここにきた」


「君は……熱くさせるな……。鳥肌がたったよ」


「そうか」


 シェフチェンコがにやりと笑い、拳を突きだした。俺もこぶしを握り、その拳にあわせるのだった。

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