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終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第七章 アークパンドラ編

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第698話 国境なき抵抗。 意思を持った人間たちの砦

 次の森からの追撃は無く、俺達は一度車を止める。そして、俺が言った。


「相手は近くにいる」


 するとクキが言う。


「どんな感じだ?」


「動きはバラバラだ。慌てているようにも見えるが……」


「バイオリンクで繋がってないのか?」


「わからん」


「どうするか……」


「クキ。俺が、攻撃の意思がないことを示して、相手が攻撃をしてこなければ接触してみよう」


 その言葉に、皆が黙ってうなずいた。


 俺が車を降りて、両手を上げて進んでみる。やはり敵の追撃は無く、俺は草原地帯に足を踏み入れた。すると奥の方から、銃で武装をした兵士達が数名、森の表側に出て俺に狙いをつけてくる。


「撃つな! 戦いたいわけじゃない!」


 すると、相手が言う。


「こっちにこい! 銃を捨てろ」


「仲間を撃たないと保証しろ! こちらは、銃を持たない!」


「抵抗はするな!」


 そして俺は、すぐに分かる。話しかけてきた連中は、ゾンビ因子を保有していない。俺は振り向いて、振り向いて仲間達に手招きをする。いざとなったら、あの相手を皆殺しにせざるを得ないかもしれない。聴覚で会話を聞いていたツバサの説明を受けたのか、全員が両手を上げてこちらに歩いてきた。


 すると、森の中から、更に銃を構えた兵士達が、ぞろぞろとこちらに向かって歩いて来る。


「抵抗はするな。皆、地面に伏せろ!」


 俺達は言われるままに、地面に伏せて相手を待つ。そうして兵士達が、俺達の元に来て調べる。


「銃はもってない!」

「こっちもだ!」

「鈍器ぐらいしか持っていないぞ」


 そこで、奥から一人の男が出てきて聞いてきた。


「あんたら、どこからきた? なんで、こんなところに!? あいつらの仲間じゃないのか?」


 そこで、クキが言う。


「この状態だと、話しづらいな。誰か一人は起きていいか?」


「じゃあ、お前が話せ」


 クキが体を起こして、兵隊たちに説明をする。


「この状態に陥っているのを見過ごせない。だから、現地に入って調べるためにやってきた」


「なぜ、女がこんなにいる?」


「皆が同じ目的で動いている。いわば、国境なき医師団の様な存在だ」


 半分嘘、半分本当の様な話をした。


「だから、皆が外国人なのか……」


「そうだ」


 すると伏せている、ミオが言う。


「あなた達、違う……操られていないみたいね」


 それを聞いて、兵士達がざわついた。


「何故わかる……お前達は、どうなんだ?」


「違うわ。操られていない」


 さらに、クキが兵士達に言う。


「というか、なぜ、ウクライナ兵とロシア兵が一緒になって、戦っているんだ?」


 すると軍人たちが、顔を見合わせてウクライナ兵が言った。


「俺達は、人間だからだ。ここにいるのは、自分の意思を持った人間達だ」


「操られていない……という事で良いんだな?」


 今度は、ロシア兵が頷いた。


「そうだ。国家など、今は関係がない。俺達は、操られた人間と戦っている」


 それを聞いた、アビゲイルが顔だけを上げて口を開く。


「私は、その理由を知る者です。あなた方は、どうやら操られていないようです」


 ようやく、出てきた男が言う。


「あれ? この人見たことあるぞ?」


「あなた方を信じてお話します。私も身を起こしていいですか?」


「起きろ」


 アビゲイルが体を起こして、皆に顔を見せた。


「この人……確か、有名な科学者だぞ。確か……名前が……」


「スミスです。アビゲイル・スミス」


「あっ! ノー〇ル賞の博士!」


「知っていただけて光栄です」


 するとウクライナの軍服を着た男が、アビゲイルに言った。


「私は……大学で化学の教鞭をとっておりました」


「軍人では?」


「いえ、ウクライナ人は殆ど一般市民でした。ここにいるロシア兵は、徴兵されてやってきたのですが、操られていない人間たちなのです」


 そこにいたロシア兵たちは、皆が若かった。それをみて、アビゲイルが言う。


「私達は、あなた達の敵ではありません。あの操られた人間達の、理由を知っているんです」


「ミス、アビゲイル。あなたの様な著名な方が、なんでこのような危険地帯に?」


「あの、脅威から、人類を救う為です」


 それを聞いて、皆がざわざわと話し出す。そして、協議の結果、大学教授が言う。


「みんな! 銃を下ろせ。この人達は、我々と同じだ!」


 どうやら、大学教授が、このチームのリーダー的な存在らしい。


「立ってくれ」


 皆が立ち上がり、軍人たちの緊張が解けた。まだ警戒はしているが、俺達の顔を見て納得したらしい。


「やはり、あなた方は操られていないようだ」


「それが、分かるのですか?」


「はい。博士、彼らは同じ方向を向いて、同じ言葉を発します」


 それを聞いて、オオモリが呟く。


「まだ、自立できないという事か……あれは、同期で操られるんでしょうね」


 そこで、エイブラハムが言う。


「実は、あの支配から解放した人間を連れているんじゃが」


「なに?」


「目覚めんようになってしもうた」


「そんな事が……」


 そこで、クキが言う。


「いつまでも、ここで立ち話は危険じゃないか? 奴らに見つかる可能性がある」


「そ、そのとおりだ。では、我々の基地へ案内しよう」


 だが、若いロシア兵が言う。


「信用しても大丈夫なのか?」


 大学教授が、首をひねりつつも言う。


「だが、このままでは、じり貧だ。やっと訪れた、解決策なのかもしれんのだ」


「でも……」


「ただ戦い続けても、消耗して死ぬだけだ。奴らの方が、圧倒的に数が多いのだから」


 その言葉で、ようやく皆が頷いた。そこで、一つだけクキが釘を刺す。


「ただ、ここには、若い女性が多い。絶対に、危害を加えないと誓ってほしい。危害を加えたりしたら、あんたらの安全が保障できないかもしれない」


 そう言ってクキが、俺の顔をチラリと見る。


「俺は武術の達人なんだ。だから、仲間に危害を加えられるのを黙ってみてはいられない」


 すると、大学教授が言った。


「我々はけだものではないよ。ただ、人間の尊厳をかけて戦う兵士だ」


「なら、信じよう」


「では、数名が私について来てくれ。あのバスを先導して、連れて行く!」


「「「「了解」」」」


 ウクライナとロシアの混合兵士が、タケルとクキと一緒に、バスへと向かっていった。そして俺達は、残った兵士に案内されて道路を歩き始める。その後ろをバスがゆっくりとついて来て、しばらく歩くと、市民が住むような街に辿り着いた。


「酷いな……」


 俺が言うと、ウクライナ人が言う。


「奴らが爆撃をした。おかげで、家族を亡くした者もいる」


「そうか……」


 だが、他の人間が言う。


「だが……家族が、あちら側に変わった人もいるんだ。あれは、一体何なんだ?」


 それには、アビゲイルが答える。


「基地に到着したら、皆を集めてください。全てを話しましょう」


 あちこちが壊された市街地を抜けていくと、そこにバリケードが見えてきた。数人歩哨が立っていて、大学教授が合図を送ると、ゲートをあけてくれた。


「ここからは、あちら側の人間のいない場所だ。残った人間は少ないが、逃げ遅れた女子供たちもいる。だが……、皆が疑心暗鬼になっているんだ」


「それは、何故だ?」


「誰が、あちら側の人間か分からないからだよ」


「なるほど。それはそうだな……」


 壊れた住居、燃え残った車両の間をぬけて、体育館のような場所へとたどり着いた。


「ここを拠点としている」


 それを見て、クキが言う。


「……そうか……これは、じり貧だな」


「そうだ、周りは奴らに囲まれて、あちら側になっていない市民達が逃げ遅れた」


「物資も、いずれ底をつくだろう」


「そのとおりだ」


 バスが体育館の入り口に止められて、真白になったゾンビ因子を除去した人間が、運び出されていく。僅かに点滴などもあり、それで何とか延命は出来そうだった。


 アビゲイルが、大学教授に言う。


「では、出来るだけ多くの人を集めていただけますか? この状況を、お伝えする必要があります」


「わかりました」


「ここには、ロシア人も、ウクライナ人もいるのですね?」


「そうです。各地で救出した、変わっていない人たちが集まっています」


「そうですか」


 そうして体育館に市民が集められ、前にアビゲイルが立つ。今は危険性はないが万が一の時のために、俺がアビゲイルの側に立ち、仲間も一カ所に固まっていた。手枷などをつけられているわけでもないが、周りには銃を持っている軍人が居るので、一応警戒する。


「ミスターヒカル。ゾンビ因子はどうかしら?」


「ああ、アビゲイル。どうやら、持っていないものがここに残っているらしい」


「いたら、すぐに除去を。敵に筒抜けになる可能性があります」


「了解だ」


 だが、入ってくる市民に、ゾンビ因子を持っているものが居なかった。そこで俺がアビゲイルに言う。


「問題ない。やはり、変わってない人間ばかりだ」


「ありがとうございます。ミスターヒカル」


 そうして集まったところで、アビゲイルが変わっていない市民達に、こうなってしまった元凶の話を、刺し障りのない部分を抽出しながら、ゆっくりと話し始めるのだった。

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