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終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第七章 アークパンドラ編

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第689話 アークパンドラの罠にはまりモスクワが壊滅する

 錆びついた格納庫に辿り着くが、入り口は開けっ放しになっており、中側まで砂だらけになっていた。それをみて、タケルが言う。


「なんか、動きそうなのねえなあ……」


「探してみよう」


 クキの指示で、わずかに置いてある車両をみるが、全部の車両がボロボロだった。


「これは、旧ソ連時代に破棄されたトラックや車両なのでしょうね」


「そうみてえだ」


 そこでクキが、言った。


「戦った戦闘車両は、そんなに古くは無かった。ということは、最近持ち込まれたものなのだろうな」


「もともと、ここにあった訳じゃねえって事か」


「そうだ。基地の様子を見ても、使われていた感じはしない」


「九鬼さんは、どう思うんだい?」


「まあ……罠なんだろうな」


 そう言うと、クロサキとシャーリーンも目を合わせて頷いた。


「でしょうね。何かを目的として使われていたという訳ではなさそうですし」


「研究施設があるわけでもない、本当に廃棄された基地ですよね」


「車両を全て破壊したのは俺だ。申し訳ない」


 だが、クキが首を振る。


「いや、ヒカルが吹き飛ばしただけの車両も、完全に爆破されていた。飛行機と同様にな」


「ということは?」


「俺達の足止めだよ」


「俺達の行動がバレていたということか?」


「ってこったな」


 俺達は、完全に敵の術中にはまっていたらしい。そう話していると、オオモリがぽつりと言う。


「もしかしたら……意識体のせいでしょうか?」


 クキが首を振る。


「足止めなら、海底都市に閉じ込めようとするさ。それに……あの死んだ敵は、俺達の顔を覚えていた。ホテルで見かけた事を驚いたというより、なぜここに来たのか? を驚いていたんじゃないか?」


 クロサキが、うんうんと頷く。


「ですね。まるで、本当に来た!? と言ったような表情でした」


「何かが……予測していた?」


 それを聞いて、オオモリがもう一度言う。


「未来予測なら、意識体がやったのでは?」


「それだと辻褄が合わないのですよ、大森さん」


「辻褄ですか?」


「ノヴォシビルスクで私達が列車を追う可能性もありましたし、敵を追う事を決めたのは我々自身です。私達をおびき寄せるだけの予定であれば、そのまま真っすぐ、この基地に逃げておびき寄せるはずです。列車に設置する時間は、彼らにとってはリスクだったはず。あと発信機はここで捨てていくはずですが、それに気づかないままに逃げて行きました」


「なるほどです……意識体と繋がって確認したいのですが、途絶えたみたいなんですよね」


「砂漠の真ん中ですからね」


 そこで、タケルが俺達を呼ぶ。


「このトラック! 電気系統を何とかすりゃ動くかもしれねえ!」


「バッテリーか」


「コイツのバッテリーは腐ってる。もしかしたら、無事なバッテリーがあるかもしれねえから探そうぜ」


「わかった」


 それから倉庫内と、外で破壊された車両を探し回ると、使えそうなバッテリーを見つける事が出来た。それを外して持って来て、タケルがトラックに潜り込んでつなげる。


「よし、かけてみる」


 一瞬だけ、ウウッ、と唸ったがびくともしない。


「完全に固まってんなあ……」


 クキが頷いた。


「まあ、ソ連製ウラルだからな……相当古い」


「どうする?」


「強制的にまわしちまえば、なんとかなるかもしれねえ」


「バイクのあれと同じか?」


「そうそう。エンジンなんて原理は同じだからよ」


「ならば、押しがけしよう」


 それを聞いて、クキが苦笑いする。


「大型トラックの押しがけか。ヒカルがいなきゃあり得ない話だ」


「じゃあやってみっぞ!」


「よし!」


 タケルが運転席に座り、俺がトラックの後ろに回って押す。トラックが外に出て、滑走路に向かった。タケルが、大声で俺に言う。


「よっしゃ。ニュートラにしたぜ! ヒカル! 押してくれ! ただ、ほどほどにな! ぶっ壊れる」


「ほどほどにだな。わかった。行くぞ!」


 ゴウッ! と、五十キロくらいのスピードで大型トラックを押すと、一瞬ガクンとギアが入る。


 ブブブブゥゥゥン!


 真っ黒い煙を噴き上げて、大型トラックのエンジンがかかった。


「よっしゃ! かかった!」


 ブオン! ブオン! とタケルがトラックをふかすたび、真っ黒い煙を噴き出す。


「どうだ? タケル」


「ああヒカル。騙し騙しだがよ、少しは行けそうだ」


「よし」


 俺とタケルが皆のところに戻り、すぐに出る事を伝えた。


 クキが言う。


「倉庫に幌があった。穴だらけだから交換するぞ」


「そうすっか」


 さらに、基地の方から戻ってきたミオ達が言う。


「人間の兵士がいたから、食料もわずかにあったわ。でも、毒とかどうかしら?」


 そこで俺が、袋を開けてそれを口にする。


「毒はない。そこまでは、仕掛ける暇がなかったようだ」


「そうね。いきなり来て、大爆発を起こした上に、剣技で斬り落としたのだものね」


「ああ」


 食料を積みこんでいる間、クキとオオモリが話し合っていた。


「まずは……街を目指すか」


 スマートフォンを指さしながら、位置を確認している。


「武。西に向かうぞ。この先に、クズロルダという町がある。そこまで行けば、ネットもつながるだろ」


 タケルも、地図を見て頷いた。


「ちょい、南西だな。通信が繋がらない中で、上手くたどりつけるか」


「タケル。俺の気配感知で人間がいる場所を探ればいい」


「わーった! んじゃ、行ってみっか」


 仲間が幌の中に乗り込み、トラックが出発した。後ろに、もくもくと黒い煙が出ている。


「これ、なんとか動いてるって感じね」


「動くだけありがたいがな」


 炎天下の中で、幌があるのはありがたかった。俺は問題ないが、この熱砂では、皆がやられてしまう。そして砂の山に差し掛かり、谷に降りた時だった。トラックの足が砂に取られる。


「やらかした。もっとスピードが出せればハマる事はねえけど、べた踏みでもスピードが出ねえ」


「問題ない。俺が押すから、トラックは停めるな。勝手に追いつく」


「おうよ」


 俺が降りて、トラックを押す。黒い煙を噴き上げて、トラックが走り始めた。俺はそれに飛び乗る。


 クキが俺に言った。


「ヒカルがいなかったら、こんなもの、一歩も進めなかったな」


「問題ない」


「推測だが。敵は、ノヴォシビルスク駅の罠に、俺達が食いつくと考えていたと思う」


「人を救う方か?」


「俺達の飛行機を察知した敵が、追って来たと判断した。もともと二段構えで俺達に罠をはっていたが、こっちに来る可能性もあると見ての対応だろうな」


「二手、三手、先を読んでいるという訳か」


「恐らくだが、意識体の裏をかく何かを、敵も持っているかもしれん」


「充分にあり得る話だ。もとより、北極の巨大脳を作れるほどの技術力もある」


「そう言う事だ」


「そして……まんまと、足止めを喰らう……か」


「ああ、してやられたものだな。ヒカル」


 しばらくして、また砂に足をとられた。


「すまねえ! またはまった!」


「問題ない」


 熱砂の中に降り立ち、俺が車を押し始める。汗が流れて、砂がまとわりつく。


「動いた!」


 また俺が飛び乗ると、ミナミがペットボトルの水を差しだしてくる。


「すまない」


「砂がやっかいね」


「そのようだ」


 プスン! プスン! ガラガラガラ……。


 今度は、ハマってもいないのにトラックが止まる。


「どうした?」


「こればっかりは仕方ねえ……ガス欠だ」


「そうか。ならば」


俺はトラックにぶら下がっていた、太い鎖を外して前に持っていく。それを車にはめ込んで、言った。


「ハンドルを頼む。俺が引っ張る」


「あっちいけど、大丈夫か? ヒカル」


「誰に言っている?」


「だ、な」


 そして俺は、大型トラックに繋いだ鎖を肩に担いで、砂漠を走り出した。トラックもボロボロなので、適度に速度を保ち砂丘を越え谷を走り、しばらくすると前方に、微かな人の気配を感知する事が出来た。一度トラックを停めて、クキに報告に行く。


「街が近い。このまま行くか? 一度偵察をするか?」


「どうせ同じだ。皆一緒でいいだろう」


「わかった」


 俺は再び、トラックの鎖を担いで引っ張り出した。一時間もすると、俺の視界には都市が見えて来る。このまま引っ張っていくと目立つので、少しの距離をあけてトラックを停めた。


「街だ」


「よーし。ヒカル、すまないな。ここまで、しんどかっただろう」


「いい運動になったくらいだ」


「いや、砂で顔が真っ白だ。おい! 水をくれ! ヒカルに!」


 クキが言うと、ツバサがペットボトルを持って駆け寄ってきた。


「出すから洗って」


 ツバサが手に水をくれたので、それで顔を洗っていると、女達がパンパンとスーツをはたいてくれる。


「ヒカル。頭下げて」


「わかった」


 俺が頭を下げると、上から水をかけてくれて頭の砂をおとす。


「ふう」


「引っ張ってくれて、ありがとうヒカル」


「皆、かなり熱かったけど、体調はどうだ?」


 それには、エイブラハムが答えた。


「ヒカルのおかげで、皆、元気じゃよ」


「なら、町まで歩けるな」


「問題ないのじゃ」


 俺達はトラックから荷物を取り出し、クズロルダの町に向かって歩いた。ここはゾンビの気配は無く、人間達が普通に暮らしているようだ。


 店に入ると、店員が言う。


「え? あなた方は旅行者?」


 ロシア語だった。それに、シャーリーンが返す。


「そうなの。バスが故障しちゃって、どうにかここまで歩いて来たのよ」


「よく無事で。この炎天下を」


「なんとかなったわ。それより、飲み物を売って下さらない?」


「ええ。もちろんです」


 俺達は水を買い、皆が一気に飲み干した。それだけ、この熱さは堪えたらしい。


 すると店のテレビにニュースが映し出されており、それをマナが指さした。


「あ。あれ……」


 俺達の雰囲気を見て、店の人が言う。


「あちこち、大変な事になってるらしいね。こんな田舎じゃ、そんな物騒な事はなかなか起きないけど、どこかでまた、戦争でもやってるんだろうかねえ」


 そこに映っていたのは、モスクワ壊滅のニュースだった。俺達は、まんまとイライジャの策にハマり、多くの命を死なせてしまう事になったのだった。 

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