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3章~紡がれた悲劇~後編その1

1章から読んでないと全く分からないと思います。

ごめんなさい。でも読んで欲しいです。頑張って書いたから。

ある男の話。


運動部の顧問で40代の体育教師。

若者はもっと貪欲であるべきだとうるさいが、熱意もある。

生徒からの信頼が厚かった。

悩みと言えば、そろそろ50歳で生活上の心配などである。

地球の平和だの人類の未来だのに微塵も関心はない。

普通のおじさんだった。


そうで無くなったのはあの日。

知らぬ間にスマホに登録されているアプリを見つけた、あの日。


「勝手にやって来るのは大概ロクな物じゃない」


しかし削除の操作を誤り、起動してしまった。


翌朝。

いつから寝ていたのか。慌てて出勤する。

それからは何事なく今日も終わるはずだった。

放課後に生徒から呼ばれ、筋トレの指導へ向かったおじさん。

妙に疲れがあるのは気になっていた。


「そこ、もうへこたれたのか、そんなことで・・・」


いや、と思い留まり胸に収めるのだが、今日は平静を保てない。

生徒を見つめてつい、思ってしまった。


(もっと・・・もっとたぎれ!)


おじさんの瞳が深紫に染まった事か、紫色の煙や光が漏れこぼれた事か。

観衆のスマホは一体どれを撮ろうとしたのか。

突然雄叫びを上げて走り出した生徒の姿か。

あちらの崖下へ無謀に飛び込まんとする生徒の方かも知れない。


中学校で発生した狂気の宴、その事件。

責任を取ったという教師とその詳細は以上となる。


元教師だった男は持て余していた。

残りの余生と、突如身にしたその力を。

素性を隠しつつ身を活かすのにヒーローという属性は天与であった。

不運は、ある通報にて駆け付けた場。

そこには、全身に怪しげな霧をまとうただの美しい女性がいた。


おじさんはただ罪滅ぼしというか、人類の救済に身を捧げたいだけだった。

身に余るパワーを活かす為に、基地を建て、仲間を集めた。特注の衣装まで用意して。


ベッドを共にする時、つまり儚い笑みを浮かべる美しい女に熱く語る時は、年甲斐もなく子供のようにはしゃいだ。

その女が姿を失せた頃から、おじさんの夢は形が変わっていった。何かおかしな形に。



浄化の光なのかなあ。真っ白で綺麗だね。

まさかパワーの輝きにそんな使い方があるとはね。

しかし、なぜ私が消えるのかな。心外だよ。

そう、あの女の口車に乗ったのが良くなかった。

欲だけにね。

やはり怪人だよあれは。

君たちも気をつけてな。と言いたいのだが、言わせてくれないようだ。


懸命に生きてたんだけどなあ・・・

私の人生は・・・なんでだろなあ・・・

まあいいか、今はなんだか・・・心地よいから・・・


欲に溺れた業と過ちの罪。

責任を取らされたヒーローの詳細は、以上となる。


その傍らに潜んで線香花火に興じていた女が、

秘密の計画も上手くいきそう、とほくそ笑んでいた。



ヒーロー食堂。


最高マンは、最高に困難な状況と向き合っていた。

何から処理すれば良いのかも判らない。


「あれ?最高マンじゃん?最高マンだよね!最高マン、あれ何?ねえ?YOU?」


察しの悪い男がまくしたてる。

満足男爵は、水着の事をからかい過ぎたと自省して黙っている。

そして最高マンにとって今最も注意を計らうべき男だが、意外と冷静だった。


「話してくれ」


これは状況の理解が先、それから判断。

最高マンはその配慮に救われた。


「有難い。こういうところを皆が見習うべきだね」


余計な事も言う。


知るままを全て説明していく。

え、それほんとにぃ?などとどこまでも察しの悪いアホを無視して一通り終えた。

だが次の試練が来る。


「今までは、なぜ黙っていた」


そこが察して欲しい肝だったが、最高マンは真摯に答える。

どのように受け止めるか様子を見た、正直怖かった。とまで。

何か言いたげに顔を覗き込む承認欲求マンが満足男爵に睨まれる。


「信用していい。俺も・・・」


(お前を信じる)



そこからの承認欲求マンが止まらない。

彼は店のPCを使って得意のITスキルでとことん調べ上げた。

画像の出元が最低レディの裏アカウントである事。

そこには過去の悪行を示す発言や画像も。

彼のオタクスキルは最低レディの想定外だったらしい、まさか鍵をハックしてまで閲覧されるなどとは。


「え?これリーダーァー?!・・・あ、オレちょっと無理系だこれ。承認欲求マンはログアウトしましたー!」


満足男爵に押さえつけられて渋々続けた結果、欲求不マンを狙った秘密の計画まで露呈した。

最高マンも動揺を隠せない。


「こんなことを企んでいたとはね。監視を逃がした私のミスだな」


「どういうことだ」


最高マンが霧の中に潜む怪しく美しい女と出会った時、こいつは危険だと深層意識が警鐘を鳴らしたらしい。

よって災害を未然に防ぐべく監視を続けていたらしいが、いつの間にかカフェやショッピングまで共にする仲だったらしい。

近頃は欲求不マンへ妙に関心を持つのが気になっていた、らしい。


「いや私にやましさはない」


「え~、開いちゃお、心の扉ぁ~ルック!イン!ユア!ミラー?」


「我が姿を確認してどうするか!それは君だ!」


「あのね!オレちゃんは!他人から見られなきゃ意味な!い!の!」


ナルシストはお前の方だ、と馬鹿な言い合いが続き、やがて陽は落ちて街に灯がともる。

いつにも増して静かだった欲求不マンがそっと店を出る。

その後ろ姿にうっすら霧がかかるのを、満足男爵だけが見逃さなかった。



人並みに眠る事も許されない過酷な男の夜は、街の異常を嗅いで周る番犬として過ごす。

まあ朝も、昼も、深夜もなのだが、それはいい。


先程の話が気にならないというわけでも無い。しかし案じるものでもない。

彼女はもうこの世を去った。

それだけの事だ。


そう頭で冷徹に処理するだけの男なら、これだけ多くに慕われはしない。

その証左に、胸の内では彼も知らぬ楔が刺さって傷を広げようとしている。



「あれ、上手く落ちないなあ」


「まだかなあ。クスクス」



遊び疲れて眠る派手な男を横目に、満足男爵は独り、ブラウザの検索結果に目を凝らす。


「これは。欲求不マンさんに・・・いや、最高マン殿が良いです。至急お伝えせねば」


彼はコートを羽織り、最高マンを探しに店を出た。


ヒーローも怪人も、スマートフォンを使う事が出来ない。

皆あの日から画面を直視出来なくなっている。

それは超能力を得た代償、いや呪いと言うべき。



深い深い闇の中。

また新たな訪問者。


「誰かしら」


若い女が迎え出たところ、怯えるような目つきをした全裸の男が居た。


「こんにちは、初めましてかな」


知らない顔だと思って言ったが、相手はそうでない。


「お前が居るという事は、ここが地獄か」


「貴方はどなた」


どうせ行く宛てもないので話して紛らそう、と男は思った。

恋人も居るらしく、そこへ案内される。


「君はどうしてここに来たのだろう。無限な絶望の世界なんだ。まさか他に誰か来るなんて考えもしなかったよ」


男はその顔を知らないが、察したので言った。


「済まなかったな」


「え、それはどういう事だい」


男はそれよりも、草木や花の咲いている事が気になる。

川や家まである。


「ここは何だ」


「僕たちが願うと何でも来てくれるんだよ」


「見て、子供も居るの」


男はまさかな、と一瞬邪推したが、そうか、と流した。


「産んだんじゃないの。願ったら来てくれたの」


その時、男の足元に猫がすり寄ってきた。


「これ、貰っていいか。いや、すまん、いい」


「貴方に付いて行きたいのかも。どうぞ、可愛がってあげて」


その後も色々よく解らない話が続いたが、二人は以前より幸せらしい。

また、そうか、とだけ言って男は猫と共に去って行った。


「あの人はきっと明るい世界へたどり着くよ」


「うん、そう思う」



裸で猫を抱く変な男は、俺が願っても何も出てこないな、よく解らん。

と考えに耽って歩き続ける。

猫を抱くのは心地が良いものだな、と撫でてみたりもする。

そういや地獄と言ったのも謝るべきだったか、と思い返す頃、彼を迎えるように扉があった。

その先がどこへ繋がるのかは、彼と猫だけが知る事。



若い女の抱きかかえる幼子はふと思った。


(私も大人になりたい)


それは願いとして聞き届けられる。



欲求不マンは夢を観ていた。


耳をくすぐる繊細な声。

優しく頬を撫でられ、顔を寄せられる。

美しいのはその瞳のせいか、それとも立ち居振る舞いか。

霧がかかって見え辛い。

よく確認しようとしたところで、目が覚めた。


「寝てた、のか」


どんな夢だったか思い出そうとしたが出来ない。

その時胸が強く痛み苦しくなる。

耐える事に慣れていたはずの、満たされない心が受け入れられない。

気付くと涙が滴るように落ちていた。


「俺は、恋をしていたのか。いや、していた。焦がれていた」


再び夢を思い返そうとした時。

求める気持ちが求める「対象」を確認出来ず、暴走し始めた。


「あああああああああ」


のけぞって喚き続けた。手が震えている。

通常の人間なら、感情を爆発させればいずれ忘れて前へ行く。

だが、超本能の残した呪いはそれを許さない。


一瞬辺りの音が消えて、直後に超高音のノイズが走り出す。


瞳の蒼。深い、深い蒼。

それは無限に深まって行き、やがてほとんど黒と言える構造色となった。


彼が手の涙を拭った時、瞳の蒼と黒の光が渦を巻く。

瞬きする度に蒼や黒の閃光が飛び散った。

その光は質量を持ちながら、無限に反射して辺りを引き裂いていく。

吐息が大地を揺らす。

口を開くと怒号が街を駆け巡った。


まだ皆が眠りに就く深夜の街を、再び大災害が襲う。



続く。

私の脳内では全て綺麗に繋がるのですが、読む方に伝わるか心配なのです。

キャラの皆さんが勝手に走っていくし、私はただの傍観者として書き連ねるしかなく。

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