【第14章】
第十四章:退院の日
退院の日。
朝一番でリハビリを入れてもらい、
担当の理学療法士さんに深々と頭を下げた。
ここまで来られたのは、
この人たちのおかげだと、素直に思った。
会計を済ませ、病院を後にする。
外の空気は、少しだけ軽く感じた。
けれど、家に帰ってすぐに気づく。
「あ、いつも通りには動けない」
何気なくしていた動作が、
一つずつ使えなくなっている。
デニムは履けない。
斜めがけのバッグは、ちょうど傷に当たる。
車のシートベルトも、容赦なく傷の上を通る。
たった三週間。
それだけの時間なのに、
身体はすっかり別物になっていた。
そして、家のベッド。
あんなに病室のベッドで寝ていたのに、
帰ってみると、その違いに驚く。
柔らかい。
あたたかい。
落ち着く。
寝慣れた枕の気持ちよさったらない。
寝て、起きて、また寝て。
そんな生活を三週間も続けると、
驚くほど体力が落ちている。
少し動くだけで疲れる。
それでも、動かないわけにはいかない。
片付けをして、
お風呂に入って、
また休む。
痛みも、まだ残っている。
「痛たた」と、
思わず声が漏れるくらいには。
ふと、処方された痛み止めを見ると、
七回分も余っていた。
──我慢しすぎたな。
少しだけ、苦笑する。
薬を飲んで、休んで、また動く。
その繰り返し。
日常生活がリハビリとは、
こういうことなのだと、ようやく実感した。




