新メンバー出揃う
土曜日、麗花の初勤務の日だ。
「おはようございます」
天真爛漫な麗花だが、今日はさすがに緊張している。
「麗花さんおはよう。よろしくね」
春子はニッコリして、スタッフルームに案内する。
麗花はカフェエプロンを着けてすぐに出てきた。真凛ほどではないが麗花もかなり細い。
そして同じ格好をすると藍子にさらに似ていた。
「引継書はご主人が買いに来られた時にお渡ししたんだけど、目を通してくださったのかしら?」
「はい。できる限り覚えてきました」
「ありがとう。じゃあ実際に店の中を回って説明するわね」
春子は店内を説明しながら一周し、麗花は引継書に書き込みながら真剣に聞く。
「最初は私が接客するから、麗花さんは見ていてね。ワッフルは今多めに焼いて、しばらくは大丈夫だから」
言っている間に早速カップルが入ってきた。
「いらっしゃいませ」
春子は注文カウンターに立つ。
「店内でお召し上がりですか?」
「はい」
「私ホットコーヒーにしようかな」
「オレ、アイスにするわ」
2人は小声で相談し、男性がまとめて、
「じゃ、白沢抹茶2つと、ホットコーヒー1つ、アイスコーヒー1つで」
と注文する。
春子はリピートしながらレジを打ち、カップルは代金を支払う。
春子はまずコーヒーマシンに向かい、麗花に説明しながらホットとアイスを1つずつセットした。
そして厨房前の作業台に行き、トレーを2つ並べた。
「じゃ、私と同じようにしてね」
手にアルコールをスプレーし、お皿にワックスペーパーを敷き、さっき焼いたばかりでまだ温かいワッフルを乗せる。
小さいカップにカトラリーとペーパーナプキンを入れる。
その間にコーヒーも出来上がったので、2人で1つずつ取りに行って、トレーに乗せる。
「はいOK!じゃ、持っていきましょう」
麗花はホットコーヒーの方のトレーだったので、女性の側に行き、
「お待たせいたしました」
と置く。
春子は男性のほうに
「お待たせいたしました」
とアイスコーヒーの方のトレーを置いた。
2人はお辞儀をして中に戻る。
「麗花さん初回からいい感じよ!ちゃんと女性の方がホットなのも聞いて覚えてたのね」
「ありがとうございます」
麗花はホッとしたように表情を緩めた。
「こんな感じで回数を重ねていきましょう。すぐに慣れるわ」
その後、持ち帰り用のワッフルを包んだり、外国人への英語の接客をしたりと、いろんなパターンを春子と一緒に練習していく。
合間に春子は厨房でワッフルを焼くので大忙しだ。
午後になり、真凛が出勤してきた。
「おはようございます」
「よろしくお願いします」
麗花はある程度の接客は1人でもできるようになってきて、真凛も2回目の勤務なのでかなり慣れてきた様子だ。春子はホッとする。
「2人ともちゃんと社会経験があるし、コミュニケーション力が高いタイプだし、習得が早いわね」
そこへ源田が来た。
「まいどー」
「あら源さんおつかれさま。お二人は初めてよね?新しく入ってくれた、主婦の麗花さんと、アルバイトの真凛ちゃんよ」
「よろしくお願いします」
2人はお辞儀をする。
「おう、よろしく!オレは源田っていって、小麦粉や卵や砂糖なんかを納入してるんだ。春ちゃんとは同い年で友達みたいなもんなんだよ」
2人ともニコニコ聞いている。
「君、麗花さん?アイちゃんに似てるなぁ。アイちゃんって言ってもわかんないかもしれないけど、前のスタッフさんで」
「藍子さんですね、知ってます!保護猫の関係で知り合って、仲良しなんです。というか私、藍子さんの紹介で入ったんです。それと夫がここの常連っていうのもあるんですけど」
「え?そうなの?アイちゃんと血のつながりはなく?」
「残念ながらないんですけど、大好きで、お姉さんみたいに慕ってます」
「へぇー。そりゃ偶然だねぇ。で、君は真凛ちゃん?学生さん?」
「いえ、22歳なんですけど、フリーターです」
「ほほう。じゃあここにも結構たくさん入るかもしれないんだね。オレともよく会うことになるな。オレは不定期だけどしょっちゅう来てるから」
「そうなんですね!これからよろしくお願いします!」
「がんばって働いて春ちゃんを助けてやってな」
「はい、わかりました!」
「じゃ、またな。2人ともがんばれよ」
「ありがとうございます」
「源さんありがとう」
源田が帰ると春子は、
「じゃ、麗花さん今日はそろそろ退勤時間ね」
「ありがとうございました」
「また来週よろしくね」
「はい!来週もよろしくお願いします!」
麗花は退勤ボタンを押してエプロンを外したが、
「あ、私ワッフル買って帰っていいですか?」
「もちろんよ」
「今まで主人がしょっちゅう買ってきてくれてたんですけど、初めて私が買って帰るっていうのをやってみたくて」
「あ、じゃあ私が担当していいですか?」
「わ、じゃあ真凛ちゃんお願いします」
春子は微笑ましく見ている。
麗花はいったんスタッフルームに行き、バッグも持ってお客様状態になって戻ってくると注文カウンターに立った。
「小春オリジナルと、白沢抹茶と、白沢ほうじ茶を1個ずつ、合計3個、持ち帰りでお願いします!」
と注文する。
真凛はリピートしながらレジを打つ。
麗花は、
「クレジットタッチでお願いします」
と言い、真凛が操作して麗花がタッチする。
「カードお控えとレシートでございます。お包みいたしますので、少々お待ちください」
真凛がお辞儀し、麗花が
「はーい」
と言う。
真凛が包んだワッフルを紙袋に入れて、
「お待たせいたしました」
と渡し、麗花は
「ありがとうー!」
と嬉しそうに受け取ってパチパチと拍手をした。
春子も、
「完璧」
と一緒に手を叩く。
真凛が
「全然緊張せんとできました!こんなにリラックスしてできたん初めてです。麗花さんありがとうございます」
麗花は、
「あれ?真凛ちゃん関西出身なの?」
「あ、そうなんです。神戸人です。気が緩むと関西弁になるんです」
「えーそうなんだ。なんか可愛い」
「真凛ちゃんが関西弁になると、気を許してくれてる感じで嬉しいわよね」
「ですね」
「えー!でも接客の時は出ないようにしますね」
「そんなに気にしなくていいよ」
みんなで笑い、麗花は
「じゃ、真凛ちゃんありがとう。春子さんお先に失礼します」
と夫へのお土産を手に嬉しそうに帰っていった。
この物語はフィクションです。作中に登場する人名や地名、校名、お茶やフルーツの銘柄などはすべて架空のものです。一部実在の名称と同じものも混在しますが、実在の人物や団体などとは一切関係ありません。




