お正月明け
三が日は無事に明けた。
華は去年と同じく小春庵のワッフルを手土産に、群馬の実家に4日の昼頃に着き、久しぶりに会う母親からぽっちゃり同士の暑苦しい抱擁を受けた。
去年は母親が3日間みっちり、男子高校生かと思うようなごちそうを作ってくれて、華はお腹いっぱい食べては昼寝をして過ごしたので3キロ太ったが、今年は少しは控え、夜にはストレッチもしたので、増量は2キロにとどまった。
実家に2泊したあと、去年と同じく母から商店街の和菓子屋の干支の絵付きもなかを持たせてもらい、6日の夜に白沢に戻った。
1月の2週目、今日はお正月明けの関係でシフトが少しずれた関係で、早番が蘭、遅番が麗花だ。
麗花は12時前に小春庵に着き、
「おはようございます」
と入っていく。
「麗花さんおはようございます!もう大丈夫なんですか?」
「大丈夫。お正月全休しちゃってごめんなさいね」
「いえいえ全然!」
「とりあえず荷物置いてくるわ」
麗花は2階に上がった。
スタッフルームのロッカーの上にあるブックスタンドには、ChaChaの2月号がもう置いてあった。
手に取ってめくってみると、藍子が群馬の古民家カフェへ取材に行って看板を作った時の記事が載っている。
「群馬だったのね。華ちゃんのご実家があるところね。華ちゃん見たらテンション上がるだろうな」
麗花は1人微笑む。
12月に寝込んで体重は40kgから38kgまで一時減ったが、やっと39.5kgまで戻った。
顔色もずいぶん良くなったのを、スタッフルームの鏡で確認してホッとする。
しかしまだだるい感じは少し残っている。
今まではトントンと軽快に下りていた階段を、今日はゆっくりと下りていった。
「春子さん、蘭ちゃん、ChaCha見ました?今回群馬だったんですね!華ちゃんのご実家のあるところですよね。華ちゃん見たらテンション上がるでしょうねー」
麗花は自分もテンションをアップして話しかける。
春子は、
「そうなのよ、私も思ってたの。あ、そうそう、華ちゃんからその群馬の和菓子屋さんのもなかをいただいてるのよ。自分で粒あんをはさむタイプのもなかで、皮には干支の絵が描いてあるの。麗花さんもいただいてね」
「はい!あとで帰る時にいただきます!」
お客様が数人入ってきたので、麗花と蘭は2人で接客する。
12月からかなり欠勤が多かった麗花だが、復帰するとなると前と全く変わりなくスムーズに対応し、にこやかにお客様に接した。
お客様が出ていくと蘭は、
「麗花さんが元通りになって良かったです!」
とホッとしたように微笑んだ。
ドアが開き、
「こんにちは、栄です」
栄牧場のサカちゃんが来る。
「栄さんお久しぶりです」
「あら、麗花さんお久しぶりね。お元気?」
「12月は体壊して寝込んでたんですけど、もうこの通り、すっかり元気になりました!」
「それは大変だったけど、回復して良かったわね」
「ありがとうございます。蘭ちゃんとか他の人たちに何回も勤務代わってもらっちゃって、申し訳なかったんですけど」
「いえいえそんな、全然ですよ!いつでも代わりますよ!もちろん麗花さんがずっと元気なのがいちばんですけどね、でももし体調悪くなることがあればこれからもいつでも言ってくださいね」
サカちゃんは
「小春庵はこういうところが素晴らしいわよね」
と微笑む。
春子が出てきて
「サカちゃんありがとう」
と嬉しそうだ。
「そうそう、サンプルの濃厚牛乳を3本持ってきてるのよ。3人で1本ずつどうぞ。牛乳飲んで元気つけてまたがんばってくださいな」
「ありがとうございます!いただきます」
1月後半になった。今日は蘭と真凛と初響が勤務の日だ。
いつもは初響が出勤すると真凛は入れ違いで帰るのだが、今日は初響が春子とSNSの打ち合わせをするとのことで、代わりに真凛が少し残ることになっている。
春子と初響はスマホを見ながら話していたが、春子は時々ワッフルを焼いたりまた初響のところに戻ったりと、大忙しだ。
1時間ほどして初響は戻ってきた。
「真凛さん、ありがとうございました。ここからは私やります」
「初響ちゃんおかえり。じゃ、私帰るね」
春子が
「真凛ちゃん」
と呼びとめる。
「2月の水曜日で空いてる日を教えてくれない?ちょっと早いけど送別会兼ランチ会の日を決めたいのよ」
「あ、送別会…!」
真凛は初響を見る。
真凛は自分のスマホを取ってきて、
「水曜日ならどの日でもあいてます」
と言う。
春子は、
「じゃあ他のみんなの予定も聞いて、早めに日を決めるわね」
「はい、ありがとうございます」
真凛はスマホを閉じる。
「送別会、ね…」
この物語はフィクションです。作中に登場する人名や地名、校名、お茶やフルーツの銘柄などはすべて架空のものです。一部実在の名称と同じものも混在しますが、実在の人物や団体などとは一切関係ありません。




