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新生ワッフル店小春庵の日常  作者: 小春庵


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22/49

リニューアルオープン日

9月18日金曜日。

小春庵のリニューアルオープンの日になった。


今日から6日間は忙しくなることが予想されるので、特別シフトだ。


今日は朝から蘭、11時半のランチタイムからは華と真凛も入る。


13時半には初響が来るので真凛は入れ違いで帰るが、華は閉店まで残る予定だ。


午前中はいつもとそれほど変わらなかったが、常連のお客の中には

「あら、スペシャルの名前が変わったのね」

と気づく人や、


「奥にお部屋ができたのね」

と覗いていく人もいた。


11時25分。

間もなくランチタイム開始だ。


蘭、真凛、華が注文カウンターに並んだ。


「ここに3人並ぶなんて珍しいわね」


そこでドアが開き、西洋人の男性4人と日本人女性1人の5人組が入ってきた。


「いらっしゃいませ」

3人の声が揃う。


女性は連れの男性達に、


「You know, I used to work here. Those waffles are amazing!(私、前にここで働いていたことがあるのよ。ここのワッフルめちゃくちゃ美味しいの!)」


と言いながら注文カウンターに進む。


そして厨房にいる春子に向かって


「It's been a minute! How are things?(お久しぶり!最近どうしてるの?)」

と大きな声で叫んだ。


蘭はあまりの大声に不審者かクレーマーかと思い、とっさに手で真凛と華をかばって1歩前に出た。


しかし次の瞬間華が、

「すみれちゃん!?」

と叫び、蘭も

「あ!」

と口を押さえた。


髪型が変わり、派手なメイクをしていたので、気づかなかったのだ。


「Hi. How's it going?(最近どう?)」

すみれは華にニッコリするが、華は返し方がわからないので黙った。


すみれは蘭と真凛に、

「Are you guys new here? I used to work here a while back.(あなたたち新人?私は前ここで働いてたのよ」

と早口で言う。


実際にはすみれは蘭と一応面識はあったのだが、蘭のことをすっかり忘れているようだ。


「I'm Sumire. They call me "Smile"(私はすみれ。友達からはスマイルって呼ばれてるの)」


誰も返事をしないが、すみれがさらに続けると、真凛が

「I'm Marin.」

と言った。


奥から春子は心配そうに見ていたが、真凛が反応したので、ひとまずホッとした。


手を止めて出て行く暇はないので、そのまま見ていることにする。


すみれは真凛から返事が返ってきたので嬉しそうに、


「Oh, Marine? That's such a cute name!(あら、マリン?可愛い名前ね!)」

とオーバーリアクション気味に言う。


真凛が、

「But I don't like the ocean. I can't swim.

(でも私海は嫌いなんです。泳げないから)」

と言うと、


「That makes it even better. I love it!(逆にめっちゃいいわね!気に入ったわ!)」

と手を叩いて喜んだ。


そして、

「春子さん!お久しぶりです!春風ワッフルランチいただきに来ました!」

と日本語で叫ぶ。


春子は

「ありがとう。そちらでオーダーしてね」

と言って製造の手を止めなかった。


すみれは特に気を悪くすることもなく、

「春風ワッフルランチを5つお願いします。飲み物は全部ホットコーヒーで」

と言い、真凛が


「かしこまりました。こちらのレジへお進みください」

と手のひらで指す。


「お席はこちらのカウンター席か、奥のお部屋か、どちらになさいますか?」


「奥がいいな」


「かしこまりました。お時間は1時間までですので、12時30分までとなりますが、よろしいでしょうか?」


「じゅうぶんよ!30分ぐらいで帰ると思います。お昼休み早めに出てきただけなの」


「そうなんですね。お仕事の合間に来てくださってありがとうございます」


真凛はにっこりしてレジを済ませ、


「出来上がりましたらお呼びいたしますので、少々お待ちください」

とお辞儀をした。


次のお客様の対応は蘭がして、真凛と華が後ろに下がり、春風ワッフルランチの準備をする。


春子が

「記念すべき第1号のお客様がすみれちゃんとはね…」

と言いながら調理をする。


華は、

「真凛さんあんな英会話できるんですね」


「高校の時にも英会話の授業で似たようなやりとりしたことあるし、日本語でも『マリンやのに泳がれへんのかい!』みたいなのはよう言われるからな」


トレーにどんどん春風ワッフルランチが盛り付けられていく。


「足首ぐらいまでの海やったらパシャパシャ遊べるけどなぁ。深い海は怖いからいややわ」


「確かに、私も怖いです」


「でもあの子日本語喋れたんやん。それやったら私も最初からあんな頑張って英語喋らんでも良かったのになぁ」


真凛は半笑いでちょっと恥ずかしそうに小声で言いながら、手際よくコーヒーを5つ入れる。


真凛がトレーをカウンターに運び、

「お待たせいたしました」

とにこやかに呼びかけると、5人は、


「Thank you.」

「アリガトウ」

と次々にトレーを受けとって、奥の部屋に消えていく。


次は両親と子供2人の親子4人連れが来て春風ワッフルを注文し、カウンター席に座った。


「2組目はほのぼの系で癒やされますねー」


「こらこら、お客様の選り好みせえへんの!」


「でももう早くも限定20食のうち半分近く終わりましたね」


「ここからは席がないから当分お持ち帰りだけになるし、12時からまた再開やね」


次々にお客様が来店し、席がないので持ち帰りとなる。


最初は華が中でひたすらワッフルを包んだりコーヒーを作ったりして、2人が順番にオーダーを聞いた。


しばらくしたら交代し、蘭が包み係になる。


そのうち12時になり、奥からゾロゾロとすみれ達5人が出てきた。


「ごちそうさまでした!I'm stuffed!(お腹いっぱい!)」

と言いながらトレーを返却する。


「ところでこれ、Rock Tail English Schoolの、企業向けの接客英会話のパンフレットなの。良かったら見てね」

と注文カウンターに置く。


「じゃあマリンさん、またね!」


すみれは真凛をいたく気に入ったようで、ピンポイントで真凛に手を振った。


ドアまで行ったが走って戻ってきて、


「あの背の高い金髪の講師、見えるでしょ?彼、マリンさんのこと気に入って、連絡先教えてほしいんだって。いい?」

と聞く。


真凛は

「ごめんなさい、私、彼氏がいるんです」

と手を合わせる。


「あー、じゃあ仕方ないわね。ごめんなさいね、no worries!(気にしないでね)」

すみれは走っていった。


華がじーっと見ると、真凛は

「ほんまは彼氏いてへんで。断る口実に言うただけ」

と笑う。


「でもイケメンでしたよ。もったいないな」


「えー。あんなヒョロガリ、タイプやないわ」


蘭は横で聞いてニヤニヤしながら次のお客様のオーダーを聞きに行った。


午後から初響が出勤してきた。


「初響ちゃん!あのメニューすごく綺麗で見やすいね!」


「SNSも良かったよー。おかげで今日ずっとお客様が途切れないのよ」


みんな口々に初響に言い、初響は

「ありがとうございます」

と小さい声で言っただけだが、うれしそうな表情だ。


真凛は退勤し、蘭と華と初響で次々にオーダーをさばいていって、夕方にレジを見た時にはびっくりするような額になっていた。


春子が

「みんなお疲れさまーありがとう」

とやっと出てくる。


「春子さん延々ずっと厨房でしたね。大丈夫ですか?」


「大丈夫。明日からは連休でもっと嵐よ。でもこんな嬉しい嵐はないわね」


「大歓迎の嵐ですね」


「さ、それじゃあ片付けて明日に備えましょう!」



この物語はフィクションです。作中に登場する人名や地名、校名、お茶やフルーツの銘柄などはすべて架空のものです。一部実在の名称と同じものも混在しますが、実在の人物や団体などとは一切関係ありません。

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