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新生ワッフル店小春庵の日常  作者: 小春庵


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久々のお客様

8月になった。


春子は定休日の水曜日になる度に、古沢工務店に行って打ち合わせをしたり、家具店に行ってテーブルと椅子を見たり、家電量販店でエアコンなどを購入したりと、忙しい日々を送っていた。


畳の時の失敗があったので、できるだけスタッフ5人には、決定する前にパンフレットや写真などを見せるように心がけた。


ある日、蘭と麗花が勤務していた時、客足が途切れたので春子は厨房から出てきた。


「麗花さん、蘭ちゃん、これ見てちょうだい。テーブルと椅子の第1候補なんだけど」


「えーどんなのですか?」


2人は興味津々でパンフレットを見た。


「これなのよ」


「わぁ、重厚な感じでかっこいいですね」


「これは中古なんですか?」


「新品なんだけど、まるで中古みたいな感じに加工してあるものなの。古民家カフェ専用の家具屋さんが作ってるものなのよ」


「えー!ヴィンテージ風加工ですか!」


「若者風の言い方だとそうなのね。まあわざと傷をつけたり一部塗装を剥がしたりしてあるんだけど、計算し尽くした加工らしいのね。本物のアンティークよりは断然安いけど、ピカピカの新品よりはむしろ高いのよね。でも古民家カフェには合うでしょ」


「はい。雰囲気ピッタリですね」


「あとこれ、照明器具も『ヴィンテージ風』なの。でも実は中はLEDなのよね」


「すごい!2階の家具もこういうお店で買うんですか?」


「あ、2階はスタッフだけだから、完全なる新品にするわ。古民家の趣には欠けるけどごめんなさいね」


「いえいえそんな!スタッフルームはそれでいいと思います!」


「あ、でもスタッフの鍵付きロッカーは、今までのはさすがにちょっと、と思って、木目調のを6つ買うことにしたのよ。それがこれね」


「わ、これなら和室にも合いますね」


「あれこれ見てたらどんどん新調したくなってきちゃって」


「わかります。引っ越しの時の楽しさみたいですね」


そこへドアが開き、太田園が納品に来た。


「こんにちはー」


「あら、若旦那さん、おつかれさま」


春子は納品物を受け取り、サインをする。


「新しい家具ですか?」


若旦那は控えめに聞く。


「そうなの、リフォームするから選んでるのよ」


「それは楽しみですね」


そこでまたドアが開き、お客様が入ってきたので若旦那が帰ろうとしたが、女性3人は

「藍子さん!!!」

と叫んだ。


「皆さんお久しぶりです」


藍子はスタッフにも若旦那にも微笑む。


若旦那はびっくりしてフリーズしている。


麗花は走ってきて

「藍子さーん」

と手を取り、蘭も横について嬉しそうだ。


春子が、

「いやー藍子さん、元気でがんばってる?看板作りはどう?」

と尋ねると、藍子は


「4月5月はバタバタして全然手がつけられなかったんですけど、6月末にやっと第1回目の取材で、日帰りで東京のカフェへ行ってきたんです。で、7月末に看板が出来上がって、9月に発売の雑誌の『ChaCha10月号』に最初の記事が載る予定です」


「そうなのね。東京のどのあたり?」


「窓からスカイツリーが見える古民家カフェの看板を作ったんです。東京の中にこんな素朴なところがあるんだって思いました。素敵なところでした」


「それはいいわね」


「で、ここからはChaChaさんとの契約で毎月1回必ず現地取材で各地に行かないといけないので、ちょっとプレッシャーなんですけど、先日7月末に2回目の取材で福井に行って、看板制作に取りかかったところなんです」


「福井ね、いいところね」


「恐竜の町ですね」


「そうなんです。で、これ、おみやげの恐竜の形のアメです。ちゃんと熱中症予防に塩アメになってるらしいので、皆さんお仕事で熱中症にならないように召し上がってください」


「わあ、可愛い」


「まあ、ありがとう。お気遣いが藍子さんらしいわ。若旦那さんもいただきなさいな」


そこでやっと若旦那がフリーズから解けた。


「ありがとうございます」


麗花が、

「藍子さん、若旦那さんのところは4月からは弟さんの煎さんが3回に1回ぐらいは来られてるんですよ」


「まあ、弟さんが?」


「はい、大学を出たばかりの新人です」

と若旦那が言う。


春子は、

「でね、弟さんが煎さんで、若旦那さんの本名は玄さんなのよ。私、源田さんのことを源さんって呼んでるから、ややこしくて申し訳ないことしたなーって、今になってやっとわかったのよ」


藍子は面白そうに笑う。


「でも若旦那さんは本当に若旦那さんって感じですよね。いかにもお茶屋さんっていう落ち着いた雰囲気で。急に来たけどお会いできて良かったわ」


「藍子さんがお元気そうで良かったです」

若旦那が控えめながら嬉しそうに言う。


「私も本当に嬉しいわ、藍子さん。来てくれてありがとう」


「いえいえこちらこそ。で、ワッフルの持ち帰り、買ってもいいですか?」


「ありがとうございます!」


「どっちがレジする?じゃんけん?」


麗花と蘭ははしゃいでじゃんけんし、麗花は

「勝ったー!」

とバンザイしてレジに向かう。


蘭と春子は

「麗花さんってこういう時いちばん年下みたいになるわね」

と笑いながら後ろへ下がった。


「ワッフル3種類を2個ずつ、合計6個いただけるかしら?」


「はい、かしこまりましたー!」


蘭と春子が3個ずつ包み、紙袋に入れる。


「お待たせいたしました!」


「ありがとう。じゃあ皆さんもがんばってね。また来るわね」


「ChaChaが発売されたら買いますね!」


「ありがとう」


「ありがとうございましたー!」


そこで若旦那もお辞儀をして一緒に帰って行った。


その頃、休日だった華は、元小春庵スタッフのヒカルに送ってもらったスポーツジムの無料体験チケットを持って、白沢駅前のブレイズアスレチックジムに向かっていた。


春子にアドバイスされて久しぶりにヒカルに連絡を取り、少し体を絞ろうかなという相談をしたのだが、春子が心配していたような劣等感からはすっかり解放されていたので、特にそちらの悩み相談をすることはなく、もっぱらトレーニングの話となった。


「ハナは特にどの部分を痩せるとかピンポイントじゃなくて、まあ運動不足だろうから全体的に少しずつほぐしていく感じで軽く始めようか。膝や腰に負担がかからないようにしなきゃね」


そして富川県にいるヒカルが白沢のジムのスタッフに引き継いでくれて、今日体験トレーニングをしてみることになったのだ。


「さあ、生まれ変わるわよー」



この物語はフィクションです。作中に登場する人名や地名、校名、お茶やフルーツの銘柄などはすべて架空のものです。一部実在の名称と同じものも混在しますが、実在の人物や団体などとは一切関係ありません。

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