第9話 道化、戻る
「――この子の、拘束を、解こう」
そう、言い出したのは。
一人の、男だった。
がっしりとした、体格。
使い込まれた、革の、防具。
腰には。
剣。
……いかにも。
「歴戦の、冒険者」といった。
風貌の、男。
生き残った、五人の、中で。
誰よりも。
堂々と、して、いて。
誰よりも。
場を、仕切りたがる。
……私は。
心の中で。
彼を。
「リーダー格」と。
呼ぶことに、した。
(名前? 知らない。
興味も、ない。
リーダー格は。
リーダー格よ)
◇
「犯人は。エルフだった。決着は。ついた」リーダー格は。
よく通る、声で、言った。「この子は。ずっと。縛られて、動けなかった。無実だ。……いつまでも。縛って、おく、理由は。ない」
……ほう。
私は。
目隠しの、奥で。
耳を、澄ませた。
いい、風向きだ。
リーダー格。
まとめ役を。
気取りたい。
タイプ。
こういう、手合いは。
「公正な、判断を、する、俺」を。
演じたがる。
その、演技心が。
今。
私の、味方に。
なって、いる。
「……だが」
と。
別の、声が。
割って、入った。
低く。
平坦で。
感情の、ない、声。
……X。
「そいつが。無害だと。誰が。決めた」
◇
……来た。
私は。
内心。
舌打ちした。
X。
やはり。
こいつは。
用心深い。
私を。
解放することに。
反対する、気だ。
「そいつの、能力は。まだ。誰も。見て、いない」Xの、声は。
冷たかった。「拘束されて。おとなしく、して、いるのは。……能力を。使えない、状況だから、かも、しれん。解けば。何を、するか。わからん」
……鋭い。
(ぞくり、と、する。
こいつ。
私の、能力を。
見て、いないのに。
「何か、ある」と。
感づいて、いる)
場の、空気が。
少し。
揺れた。
Xの、言葉には。
妙な。
説得力が。
ある。
何しろ。
この、男は。
(みんなは、知らないが)
これまでの、殺し合いを。
陰で。
動かして、きた。
その、凄みが。
声に。
滲んで、いる。
◇
――まずい。
私は。
焦った。
このままだと。
拘束は。
解かれ、ない。
それどころか。
Xに。
「危険分子」と。
見なされて。
次に。
消されるのは。
私、かも。
何か。
言わないと。
……でも。
下手に。
喋れば。
藪蛇。
目隠しの、奥で。
私は。
必死に。
頭を。
回転させた。
――と。
「……私は。解いて、いいと、思う」
静かな、声が。
した。
フードの。
協力者。
彼女が。
ゆっくりと。
口を、開いた。
◇
「この子は。ずっと。私が。見て、いた」協力者は、言った。「縛られて。目隠しされて。何も、できなかった。……それは。私が。保証する」
「お前が。保証する?」Xの、声。「なぜ。お前が。そこまで。この女を。庇う」
「庇っては、いない」協力者は。
落ち着いて、返した。「ただ。……公平で、ありたいだけ。無実の、人間を。縛り続けるのは。……このゲームで。生き残る、うえで。得策じゃ、ない。疑心暗鬼は。もう。……エルフ、一人で。十分でしょう」
……上手い。
私は。
感心した。
(いえ。
感心、は。
して、いない。
だって。
協力者は。
私の、味方。
味方が。
私のために。
動くのは。
当然。
うん)
協力者は。
「私を、庇っている」ように。
見せず。
「公平さ」を。
語って、いる。
だから。
リーダー格のような。
「正しく、ありたい」タイプが。
うなずき、やすい。
「……俺は。賛成だ」案の定。
リーダー格が。
うなずいた。「彼女の、言う、通り。無実の、人間を。縛り続けるのは。……俺たちの、名折れだ」
◇
二対一。
リーダー格と。
協力者が。
「解く」。
Xが。
「解かない」。
……そして。
最後の、一人。
ずっと。
隅で。
黙って、いた。
気弱な、少年が。
おずおずと。
口を、開いた。
「ぼ、ぼくも。……解いて、あげたい、です。……だって。……ずっと。縛られてるの。……かわいそう、だし」
三対一。
X、一人が。
反対。
でも。
残りの、三人が。
「解く」。
多数決なら。
決まりだ。
◇
Xは。
しばらく。
沈黙して、いた。
その、感情は。
……読め、ない。
相変わらず。
凪いだ、まま。
何を、考えて、いるのか。
わからない。
でも。
やがて。
Xは。
ふっ、と。
息を、吐いて。
言った。
「……好きに、しろ」
引いた。
意外だった。
(あの、X が。
引く?)
でも。
すぐに。
わかった。
これは。
「納得」じゃ、ない。
「様子見」だ。
Xは。
私を。
解いて。
泳がせて。
その、能力を。
見極める、気だ。
危険だと、思えば。
そのとき。
消せば、いい。
……そう。
考えて、いる。
(こわい。
やっぱり。
この、男。
一番。
こわい)
◇
ともあれ。
私の、拘束は。
解かれた。
手首を、縛って、いた、布が。
ほどかれ。
目隠しが。
外される。
……久しぶりの。
光。
白い、部屋が。
目に。
眩しい。
私は。
ゆっくりと。
手首を、さすりながら。
立ち上がった。
そして。
改めて。
見回す。
生き残った。
五人を。
リーダー格の、男。
気弱な、少年。
感情の、読めない、X。
フードの、協力者。
そして。
私。
……この、五人が。
最後の、盤面。
……ふと、思う。
この、部屋で。私が、唯一。
感情を、探らなくて、いい、相手。
――フードの、協力者。
(味方だもの。当然よ)
気を、張らずに、いられる。
ただ、一人の、存在。
……それが、どれだけ、心強いか。
このときの、私は。まだ、ちゃんと、わかって、いなかった。
◇
(ふう)
私は。
深く。
息を、吸った。
ようやく。
縛めが。
解けた。
ようやく。
表舞台に。
戻って、きた。
これまでは。
縛られて。
目隠しされて。
「聞く」ことしか。
できなかった。
でも。
もう。
違う。
これからは。
見て。
喋って。
動いて。
――盤面を。
直接。
動かす。
……ふふ。
ふふふ。
待たせたわね。
私の、独壇場が。
ようやく。
始まる。
◇
(――もっとも)
私は。
心の、隅で。
ちらりと。
思った。
この、絶妙な、タイミングで。
私の、拘束を、解く、流れが。
できたのは。
……本当に。
私の、実力、だったろうか。
リーダー格が。
言い出し。
協力者が。
「公平さ」で。
後押しし。
少年が。
情に、訴え。
Xの、反対を。
押し切った。
……あまりにも。
都合よく。
事が。
運んで、いない?
……いえ。
私は。
その、疑問を。
いつもの、ように。
ぐっと。
呑み込んだ。
都合よく。
運んだのは。
私に。
徳が。
あるから。
私が。
優れて、いるから。
盤面が。
私を。
中心に。
回って、いるから。
……そう。
そういう。
ことに。
して、おく。
(この、癖が。
いつか。
とんでもない、勘違いを。
生むことに。
私は。
やっぱり。
気づいて、いない)
◇
「さて」
私は。
ぱん、と。
手を、打って。
五人の、注目を。
集めた。
「みなさん。改めて。よろしく。……これまでは。ちょっと。事情が、あって。おとなしく。して、いたけれど。ここからは。私も。……本気を、出すわ」
リーダー格が。
怪訝な顔を、した。
少年が。
びくりと。
肩を、すくめた。
Xは。
無表情の、まま。
私を。
見て、いる。
協力者は。
フードの、奥で。
……何も、言わない。
……反応が。
薄い。
(いつもの、ことだけど)
でも。
いい。
これから。
見せて、あげる。
この、湊ミライが。
どうやって。
この、盤面を。
掌握するのかを。
◇
五人。
数字だけ、見れば。
もう。
大詰めだ。
十三人が。
五人に、なった。
残るのは。
リーダー格。
少年。
X。
協力者。
私。
……この、中に。
まだ。
隠された。
役割と。
思惑が。
うずまいて、いる。
私は。
一人ずつ。
顔を。
眺めた。
リーダー格は。
何を。
狙って、いる?
少年は。
何を。
隠して、いる?
Xは。
……いえ。
Xは。
今は。
いい。
あいつは。
最後の、敵。
今、考えても。
仕方が、ない。
まずは。
手近な、ところから。
崩して、いく。
……そう。
例えば。
あの。
リーダー格の、男と。
――X。
この、二人あたりから。
◇
……ん?
私は。
ふと。
気づいた。
リーダー格の、男。
それから。
X。
……この、二人。
顔立ちが。
……悪く、ない。
いえ。
悪く、ない、どころ、じゃ、ない。
リーダー格は。
精悍で。
男らしく。
Xは。
陰の、ある。
整った、顔立ち。
……。
……。
……あら?
あらあら?
私の、頭の中で。
何か。
別の、スイッチが。
かちり、と。
音を、立てた。
(……いえ。
いえいえ。
今は。
それどころ、じゃ、ない。
集中。
集中よ、ミライ。
盤面。
盤面を。
支配するの)
私は。
慌てて。
その、邪念を。
振り払った。
……でも。
その、邪念が。
これから。
この、デスゲームを。
とんでもない、方向へ。
転がして、いくことを。
このときは。
まだ。
誰も。
(私、自身すら)
知らなかった。
(第9話 了)
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【 湊ミライの ゲーム攻略メモ 】
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・私の能力:感情の揺れがわかる。中身は不明。攻撃不可。
・私の役割:……なんか地味。よく読んでない。
〔今回〕
・拘束、解除。ようやく盤面に復帰。
・残り5人:リーダー格/少年/X/協力者/私。
・リーダー格=まとめ役気取り(公正でありたいタイプ)。
・Xは私の解放に反対→でも「様子見」で引いた。泳がせて
能力を見極める気。=最も危険。
・(※解放が都合よく運んだのは、私の実力……のはず)
・リーダー格とX、よく見たら顔がいい……(集中!)
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