↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最弱能力"感情が読めるだけ"の私が、13人のデスゲームで盤面を支配する(と、本人は思っている)  作者: SSS


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
10/14

第10話 溶けろ、服よ



拘束を、解かれて。


私は、動き出した。



……とは、いっても。


正直に、言うと。


何を、どうすれば、いいのか。


具体的な、策は、一つもなかった。


(いつも、そう。


私は「盤面を、支配する」と、意気込むわりに。


その、方法は。


だいたい、出たとこ勝負)



でも、それでも。


私は、前に出た。


だって、拘束を、解かれた以上。


何か「やってみせ」なければ、ならない。


みんなの、注目を、浴びて。


「さすが」と、言われなければ。


……そうでなければ。


私が、ここにいる、意味がない。



◇



私は、五人の、真ん中に、進み出て。


くるり、と、振り返った。



「――皆さん、聞いて。私。……この、連続殺人の、犯人が。誰だか、わかったの」



……嘘だ。



いや、半分は、本当。


私は、知っている。


一連の、事件を、本当に、動かしていたのは。


ドワーフと、X、だと。


(音で、聞いていた、から)


でも、それを、今、明かすつもりは。


……ない。


だって、それを、言っても。


私の、見せ場に、ならないもの。



◇



(――ここで、少し、白状しておく)



実は、私は。


このとき「犯人当て」なんて、どうでもよかった。



私の、頭の中は。


さっきから、別のことで、いっぱいだった。



リーダー格の、男。


それから、X。



……この、二人。


顔が、いい。



精悍で、男らしい、リーダー格と。


陰の、ある、鋭い、Xの。


……並び。


想像すると。


……ごくり。



私の、中の「スイッチ」は。


もう、完全に、入っていた。



◇



(……落ち着け。落ち着くのよ、ミライ)



私は、必死に、自分を、律しようとした。


今は、デスゲームの、真っ最中。


命の、かかった、頭脳戦の、最終盤。


そんなときに。


……男二人の、いい感じを、拝もう、だなんて。


……不謹慎。


不謹慎、だわ。



……でも。



(でも、待って。よく、考えて)



私は、天才だ。


盤面を、支配する、者。


その、私が「見たい」と、思ったなら。


それは、もう、見るべき、なのでは?


むしろ、この、極限状況で。


あの、二人を、並べることには。


……何か、深い、戦略的意味が、あるのでは?



……ある。


きっと、ある。


(ない。でも、あることに、しておく)



◇



私は、びしり、と、指を、突きつけた。


リーダー格と、X。


その、二人に。



「犯人は。……あなたと、あなたよ!」



……ざわ。



二人が。


(というか、その場の、全員が)


ぽかんと、した。



「な……俺が?」リーダー格が、目を、剥いた。「馬鹿な! 俺は、何も……!」


「……ほう」Xは、相変わらず、無表情。


でも、ほんの少し。


……面白がるような、気配。「俺が、犯人だと? 証拠は」



◇



――証拠?



……ない。


そんなもの、あるわけ、ない。


だって、二人を、選んだ基準は「顔が、いいから」。


それ、だけ。



でも、私は、ひるまなかった。


(ひるんだら、終わり。


私は、打たれ弱い。


一度でも「あれ、この子、でたらめ言ってる」と、見抜かれたら。


その、瞬間、私の、化けの皮は、剥がれて。


心が、ぽっきり、折れてしまう。


……だから、突き進む。


でたらめでも、堂々と、突き進めば。


でたらめは、でたらめじゃ、なくなる。


……たぶん)



「証拠なら、あるわ」私は、髪を、かき上げた。「でも、今、ここで、口で、説明しても。あなたたちは、認めないでしょう。……だから、証明してみせる。私の、能力で」



◇



……能力。



そう、言った、瞬間。


場の、空気が、ぴん、と、張り詰めた。


Xの、目が、すっと、細くなる。


(……そう。みんな、私の、能力を、まだ、知らない。


だから「能力で、証明する」と、言えば。


何か、とんでもないことが、起きる、と、身構える)



……ふふ。


いい。その、緊張感。


私は、それを、たっぷり、味わってから、言った。



「二人とも、そこの、壁に、並んで、立って」


「……何?」


「いいから、並ぶの。やましいことが、ないなら。できる、はずよね?」



◇



リーダー格は、憮然と、しながらも。


「潔白を、証明してやる」という、顔で、壁際に、立った。


Xは……少し、迷った、ようだが。


やがて、ゆっくりと、リーダー格の、隣に、並んだ。


(Xが、応じたのは、たぶん。


「この女が、何を、するのか、見極めたい」から。


……お互い、様子見。


でも、私の、狙いは。


そんな、高尚な、ものじゃ、ない)



二人が、壁に、並ぶ。


精悍な、リーダー格と。


陰の、ある、X。


肩を、並べて、立っている。


……ああ、いい構図。


完璧。



「あと……念のため。みんなは、二人を、囲んで。逃げられないように、して」



私が、言うと。


少年と、協力者が。


二人の、周りを、囲むように、位置に、ついた。


これで、リーダー格と、Xは。


壁を、背に、周囲を、囲まれ。


……逃げ場が、ない。


(完璧。完璧だわ。


舞台は、整った)



◇



私は、大きく、息を、吸った。



さあ、ここから。


私の「能力」を、お見せしましょう。



……もっとも。


これから、私が、使う、能力は。


厳密には、私の、能力じゃ、ない。


(私の、能力は「感情が、読める」だけ。


服を、どうこうする、力なんて、ない)



これは……協力者に、頼んでおいた、力。



いつだったか、私は。


会話の、中で、気づいていた。


あの、気弱な、少年。


薬師の、弟子。


「いろんな、ものを、溶かす」修行を、していた、と。


……そして、その、少年が。


こっそり「繊維を、溶かす」能力を、使うところを。


協力者が、見ていた、らしい。


――そういえば。


拘束されて、目隠しされて、いた、あの、あいだ。


私は、例の、"独り言"に、紛れて。


一度だけ。


その、少年の、"溶かす"能力に、触れて、おいた、気がする。


隣に、いた、協力者に。


聞こえるように。ぽつり、と。


……ふふ。用意周到。


(もっとも。この、あたりの、情報の、やりとりを。


私と、協力者が、いつ、どうやって、していたのかは。


……まあ、省く。


とにかく、私たちは、いつの間にか。


その、準備を、済ませていた)



◇



私は、高らかに、宣言した。



「――さあ、犯人を、暴く時よ。私の、能力で。あなたたちの……"隠しているもの"を、暴いてあげる」



そして、びしり、と、手を、かざして、叫んだ。



「――溶けろ! 服よ!」



◇



その、瞬間。



……私は。


息を、止めて。


まばたきすら、惜しんで。


その、一瞬に、すべての、神経を、注いだ。


(……この、一瞬のために。私は、この、命がけの、ゲームを。生き延びて、きたのかも、しれない。……いえ、それは、言いすぎ。でも、それくらい)



リーダー格と、Xの、服が。


……みるみる、溶けた。



じゅう、と、音を、立てて。


革の、防具が。


ローブが。


シャツが。


ズボンが。


端から、溶けて、崩れて。


……消えていく。



あとに、残ったのは。



――生まれた、ままの、姿の。


精悍な、リーダー格と。


陰の、ある、Xの。


……二人。



壁を、背に、周囲を、囲まれ。


逃げ場も、なく。


一糸まとわぬ、姿で。


肩を、触れ合わんばかりに、並んで、立つ。


……絶世の、美丈夫が、二人。



◇



…………。



…………ぐっ。



私は、口を、手で、押さえた。



(――尊い)



時間が。


止まった、気が、した。


……いえ。止めた。


この、一瞬を。この、目に、焼きつける、ために。


部屋の、空気も。誰かの、悲鳴に、なりかけた、息も。全部、遠く。


ただ、目の前だけが。



目の前が、きらきら、と、輝いている。


……ああ、なんてこと。


なんて、尊い、光景。


精悍な、男と、陰のある、男が。


裸で、肩を、寄せ合って。


逃げ場も、なく、追い詰められて、いる。


……この、構図。


この、シチュエーション。


私が、夢にまで、見た。


……。


(眼福。眼福だわ……!)



◇



「……お、おい!」



我に、返った、リーダー格が。


真っ赤に、なって、叫んだ。



「な、何を、する! 俺の、服を……!」


「…………」Xは、さすがに、無表情では、いられなかった。


わずかに、眉を、寄せて。


手で、身体を、隠している。



……そして、それを、見ていた。


少年と、協力者は。



「…………」


「…………」



ぽかん、と、していた。



◇



「……あの」少年が、おずおずと、口を、開いた。「……ミナトさん。……これ。……犯人当てと。……何の、関係が」


「…………」



私は、答えなかった。


いえ、答えられなかった。


だって……関係、ないから。


犯人当てなんて、最初から、どうでも、よかったから。


私が、したかったのは。


ただ、これ。


この、眼福を、得ること。


それ、だけ。



私は、恍惚と、した、顔で。


二人を、眺めながら。


ぽつり、と、呟いた。



「……眼福。眼福だわ」



◇



…………。



場が、凍りついた。



「…………」


「……こいつ」リーダー格が、わなわなと、震えた。「まさか……最初から。これが、目的か!? 犯人当てだの、能力だのと、言って。……ただ、俺たちを、裸に、したかった、だけか!?」


「そうとも、言うわね」私は、悪びれず、微笑んだ。



「――結局! ただの! 変態か――っ!!」



リーダー格の、絶叫が。


白い、部屋に、響き渡った。



◇



……こうして。



私の、華々しい「犯人、暴き」は。



――イケメン二人を、裸にして、眼福を、得る。



という、一点においては、完璧に、成功し。


それ以外の、すべてにおいて、完全に、失敗した。



リーダー格は「とんでもない、変態がいる」と、私を、警戒するようになり。


少年は、私を、見る目が「うわあ」に、なり。


そして、Xは。



……ここで、一つ。


大きな、誤算が、生まれていた。



でも、それは、私にとっては。


(結果的に)


とても、幸運な、誤算だった。



◇



X、は。



服を、溶かされた、あと。


じっと、考え込んでいた。



(この、女の、能力は――"繊維を、溶かす"、ものか?


いや、待て。……違う。


あの、少年。薬師の、弟子。


"溶かす"のは、本来、あいつの、能力の、はず。


……では、なぜ、この女が、それを、使えた?


……まさか、誰かの、能力を"借りた"?


いや、それとも。


この、女、自身は……ただの、変わり者で。


本当に、盤面を、動かしているのは――別の、誰か、か?)



Xの、思考は。


深く、深く、沈んでいった。


……そして、一つの、結論に、近づいていく。


「この、湊ミライという、女は。


ただの、変態で、撹乱要員。


……本当の、黒幕は、別に、いる」



◇



……これが、誤算だった。



Xは、私を「ただの、変態」と、見なし。


(それは、正しい)


その、裏に「本当の、黒幕」がいる、と、疑い始めた。


(それは、間違い。


いえ、半分、正しい。


だって、本当に、盤面を、動かしているのは、協力者、だから。


でも、Xは、その、正体には、まだ、たどり着けない)



つまり、私が、あまりにも「くだらない」ことを。


大真面目に、やったせいで。


Xの「敵の、見極め」が……ずれた。


一番、警戒すべき、相手を、見失った。



……もっとも、このときの、私は。


そんな、高度なことは、何も、考えていない。


ただ、裸の、二人を、見て「眼福だった……」と、満足していた、だけ。


(でも、あとで、きっと、言う。


「あれも、私の、作戦の、うち、よ」と)



◇



そして。



一人だけ。


この、茶番を、フードの、奥から、静かに、見ていた。


協力者が。



……くすり、と、笑った、ような、気がした。



まるで「まったく、この子は、相変わらず」とでも、言うように。



……でも、その、小さな、笑みの、意味を。


恍惚と、していた、私は。


やっぱり、気づかなかった。



(第10話 了)



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 【 湊ミライの ゲーム攻略メモ 】

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

・私の能力:感情の揺れがわかる。中身は不明。攻撃不可。

・私の役割:……なんか地味。よく読んでない。

・残り5人:リーダー格/少年/X/協力者/私。

〔今回〕

・「犯人はあなたたち!」とリーダー格とXを名指し(嘘)。

 →壁に並べ、囲ませ、「溶けろ服よ!」で服を溶かす。

 →(実は協力者がコピーした、少年の"繊維溶かし")

・目的は犯人当てではなく、イケメン二人の眼福。……達成。

・結果、私は"変態"認定される。でも心は折れてない。

・誤算(幸運):Xが私を「ただの変態=撹乱要員」と見なし、

 「本当の黒幕は別にいる」と敵の見極めがズレた。

・(※あれも私の作戦のうち、と後で言うつもり)

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。