第8話 犯人は、エルフということに
六人に、なった。
二晩、続けて。
人が、死んだ。
誰が、殺したのか。
わからない、まま。
生き残った、面々は。
もう。
誰も。
誰も。
信じて、いなかった。
……いい、傾向だ。
私は。
拘束された、まま。
目隠しの、奥で。
そう、思った。
疑心暗鬼は。
私の。
味方。
みんなが。
互いを、疑い。
勝手に。
潰し合って、くれれば。
私は。
座って、いる、だけで。
いい。
◇
その、疑心暗鬼の、中で。
一人。
妙に。
動き回る者が。
いた。
エルフの、女。
昼間。
やたら。
饒舌に。
「平和が、好き」だの。
「争いは、嫌い」だのと。
語って、いた、あの、女だ。
彼女は。
生き残った、四人の、あいだを。
ちょろちょろと。
動いて。
何やら。
一人ずつ。
耳打ちを。
して、回って、いた。
……そして。
その、足が。
ついに。
拘束された。
私の、ところにも。
やってきた。
◇
「……ねえ、あなた」
エルフの、女が。
私の、耳元で。
囁いた。
甘い。
心配そうな。
声、色で。
「大丈夫? こんな、ところに。縛られて。……ひどいわよね。みんな。あなたのこと。すっかり。犯人だと。思って、いるの」
……ほう。
「さっきも。話して、たわ。『あの女が。一番、怪しい』『さっさと。始末した、ほうが、いい』って。……ねえ。怖いでしょう? このままだと。あなた。殺されて、しまう」
……ふうん。
「だから。今のうちに。逃げ出すか。……いっそ。先に。みんなを。……ね?」
◇
(……なるほど)
私は。
目隠しの、奥で。
エルフの、感情を。
読んで、いた。
……この、女。
嘘を、ついて、いる。
「みんなが、あなたを、犯人だと」の、あたりで。
感情が。
揺れた。
大袈裟に。
言って、いる。
私を。
不安に、させて。
焦らせて。
……何かを。
させたい。
混乱を。
起こさせたい。
そういう。
魂胆。
……たぶん。
このエルフの、役割は。
「場を、混乱させる」こと。
誰かを。
パニックに、して。
騒ぎを。
起こさせる。
そういう。
役割。
だから。
一番。
御しやすそうな。
拘束された、私を。
焚きつけに、来た。
◇
……でも。
残念。
私は。
その、手には。
乗らない。
(だって。
私は。
焦って、いないもの。
むしろ。
今の、状況。
すごく。
楽しい)
私は。
目隠しの、奥で。
にっこりと、笑って。
言った。
「――あら。みんな。私を。恐れて、いるの?」
「え?」
「そう。当然よね」私は。
胸を、張った。
(縛られて、いるので。
正確には。
胸を、張った、つもり)「これだけ。何もかも。見通して、いる、私を。恐れない、ほうが。おかしいわ。ふふ。もっと。恐れ、なさい。もっと。敬い、なさい。この、湊ミライを」
◇
……沈黙。
エルフの、女が。
……困って、いる。
感情が。
それを。
伝えて、くる。
予定と、違う。
という。
戸惑い。
(ふふ。
そうでしょう。
そうでしょう。
私を。
パニックに、させて。
場を、混乱させる。
……なんて。
甘いのよ。
だって。
私は。
「みんなが、私を、恐れている」と、聞いて。
むしろ。
気分が。
いいんだから)
「……あ、あなた。……状況が。わかって、いるの?」エルフの、声が。
少し。
苛立って、いた。「本当に。殺される、かも、しれないのよ?」
「あら。殺せる、ものなら。殺して、みなさい」私は。
鼻で、笑った。「できっこ、ないわ。だって。私を、殺したら。この、盤面は。誰にも。制御、できなく、なる。みんな。それを。わかって、いるから。私を。殺せ、ないの」
……嘘だ。
そんな。
保証は。
どこにも、ない。
でも。
堂々と。
言えば。
それっぽく。
聞こえる。
(それっぽく。
聞こえるだけで。
十分。
気持ちいい)
◇
エルフの、女は。
しばらく。
私を。
焚きつけよう、と。
あの手。
この手で。
囁いて、いた。
でも。
私が。
何を、言われても。
ポジティブに。
受け取る、ものだから。
……ついに。
諦めた。
「……もう、いい」
吐き捨てる、ように、言って。
エルフの、気配が。
離れて、いった。
……ふふ。
残念、ね。
私は。
あなたが。
思って、いる、ほど。
弱く、ない。
(弱い、けど。
メンタルは。
強い。
いえ。
打たれ強い、というより。
単に。
都合の悪いことを。
都合よく。
変換して、いる、だけ、とも。
言う。
でも。
結果。
平気なら。
それで、いい)
◇
だが。
エルフは。
諦めて、いなかった。
その、夜。
また。
天井の、光が。
落ちて。
闇が。
部屋を、満たした、頃。
……かさ、と。
かすかな、音が。
した。
誰かが。
拘束された、私に。
近づいて、くる。
抜き足。
差し足。
でも。
その、感情は。
……ぐらぐらと。
揺れて、いた。
焦りと。
苛立ちと。
それから。
……殺意。
(……来た)
エルフだ。
昼間。
私を。
混乱させ、そこなった、エルフ。
焚きつけが。
失敗したから。
今度は。
自分の、手で。
私を。
亡き者に、しようと。
して、いる。
きっと。
「混乱を、起こせない、なら。
せめて。
一人。
消して。
場を、乱そう」と。
そういう。
魂胆。
◇
……でも。
甘い。
私は。
とっくに。
気づいて、いた。
エルフが。
近づいて、くる。
その、殺意の、揺れを。
私は。
昼間から。
ずっと。
警戒して、いた。
そして。
――もう、一つ。
私には。
打つ手が、あった。
昼のうちに。
私は。
「協力者」に。
そっと。
伝えて、あったのだ。
……いや。
正確に。
言おう。
私は。
拘束されて。
目隠しされて。
喋ることしか。
できない。
だから。
独り言のように。
ぽつり、と。
呟いて、おいた、だけ。
「……今夜あたり。誰かが。私を、狙う、かもね。……こういう、閉じた、場所で。焦った、やつは。……たいてい。夜に、動く、から」
と。
それを。
近くに、いた、協力者が。
聞いて、いたか、どうかは。
わからない。
(聞いて、いて、ほしい、とは。
思って、いた)
◇
エルフの、手が。
私に。
伸びる。
その、瞬間。
「――そこよ! 誰か! この子が、襲われてる!」
闇を、切り裂いて。
協力者の。
鋭い、声が。
響いた。
びくり、と。
エルフの、動きが。
止まる。
そして。
眠って、いた、はずの。
他の、面々が。
その、声で。
目を、覚ます。
「な、なんだ!?」
「誰か、いるのか!」
「明かり……いや。誰だ。動いてる、のは」
闇の、中で。
エルフは。
完全に。
浮き足立った。
――見つかった。
私を。
襲う、ところを。
目撃、された。
(正確には。
声で。
存在を。
暴かれた)
◇
「ち、違う! 私は……!」
エルフが。
弁明しようと。
する。
でも。
その、声は。
焦りで。
上ずって、いた。
……墓穴。
闇の、中で。
一人だけ。
動いて、いて。
拘束された、私の、そばに、いて。
焦って、弁明する。
これでは。
どう、見ても。
(見えない、けど)
怪しい。
そして。
そこに。
――あの、声が。
響いた。
「そいつだ」
低く。
静かで。
感情の、ない、声。
……X。
「その、女が。……ずっと。夜な夜な。動いて、いた。昨夜も。一昨夜も。……こいつが。みんなを。手に、かけて、いたんだ」
◇
――え。
私は。
目隠しの、奥で。
一瞬。
ぽかんと、した。
(……嘘。
それ。
嘘、じゃ、ない。
……いえ。
嘘、だ。
全部。
やったのは。
ドワーフと。
X、自身。
エルフは。
昨夜も、一昨夜も。
何も。
して、いない。
……なのに。
X。
全部。
エルフの、せいに。
して、いる)
私は。
気づいた。
Xの。
狙いに。
……そうか。
連続殺人の、犯人が。
「わからない」ままだと。
みんな。
疑心暗鬼で。
落ち着か、ない。
でも。
ここで。
「犯人は、エルフだった」と。
決まれば?
みんな。
安心する。
事件は。
解決した、と。
思い込む。
……そして。
本当の。
犯人(ドワーフと、X)は。
その、陰に。
隠れて、しまう。
◇
「そ、そんな! 私じゃ……!」
エルフが。
必死で。
叫ぶ。
でも。
もう。
遅い。
闇の、中で。
一人。
動いて、いた。
私を。
襲おうと、して、いた。
そこを。
「連続殺人犯」だと。
名指しされた。
……状況が。
全部。
エルフを。
犯人だと。
指して、いる。
「やっぱり。あいつが……!」
「道理で。……夜にばかり。人が、死ぬ、はずだ」
「やれ! あいつを。……やってしまえ!」
疑心暗鬼で。
張り詰めて、いた。
みんなの、恐怖が。
一気に。
エルフに。
向かって。
爆発した。
闇の、中で。
複数の、足音が。
エルフに。
殺到する。
「ま、待って! 違うの! 本当に……! 私の、役割は。ただ。……叫ばせる、だけ……!」
悲鳴。
もみ合う、音。
そして。
……静寂。
エルフの、気配が。
消えた。
◇
……皮肉な、ものだ。
私は。
闇の、中で。
思った。
エルフの、役割は。
「場を、混乱させ。誰かを。叫ばせる」こと。
……最後に。
一番。
叫んだのは。
エルフ、自身、だった。
場を、混乱させ、そこなって。
自分が。
混乱の。
中心で。
叫んで。
死んだ。
そして。
その、死は。
――Xに。
利用された。
連続殺人の。
幕引きとして。
「犯人は、エルフ」という。
筋書きの。
生贄として。
◇
夜が。
明けて。
天井の、光が。
戻った、頃。
部屋の、空気は。
……不思議と。
落ち着いて、いた。
「……終わった、のか」
「ああ。……犯人は。あの、エルフだった」
「これで。……もう。夜中に。殺される、心配は。ない」
みんなの、声に。
安堵が。
滲んで、いた。
連続殺人は。
解決した。
犯人は。
討たれた。
……そう。
信じて、いる。
本当の、犯人が。
まだ。
この、部屋に。
涼しい、顔で。
座って、いる、とも。
知らずに。
私は。
目隠しの、奥で。
……ぞっと。
して、いた。
X。
あの、男は。
ただ、強い。
だけじゃ、ない。
場を、読み。
死を、利用し。
犯人を。
でっち上げて。
自分を。
完全に。
隠して、しまう。
……本物の。
化け物だ。
◇
そして。
その、「落ち着き」が。
――私に。
思わぬ。
幸運を。
もたらした。
「……なあ」
生き残った、一人が。
言った。
「その、拘束された、女。……もう。解いて、やっても。いいんじゃ、ないか」
「え?」
「だって。犯人は。エルフ、だったんだろ。……この子は。ずっと。縛られてて。動けなかった。……つまり。無実だ」
「それは。……そうだが」
「それに」その、男は。
声を、潜めた。「……もう。残り、五人だ。これ以上。仲間割れ、してる、場合じゃ、ない。……この子も。生きて、いる、以上。……手を、組める、なら。組んだ、ほうが、いい」
◇
……おや。
私は。
目隠しの、奥で。
耳を、そばだてた。
……いい、流れ。
とても。
いい、流れだ。
連続殺人が。
「解決」して。
場が。
落ち着いて。
その、結果。
「無実」の、私を。
解放しよう、という。
声が。
上がって、いる。
……ふふ。
ふふふ。
拘束は。
いい、隠れ蓑だった。
でも。
そろそろ。
潮時。
ここから、先の。
心理戦は。
縛られた、まま、じゃ。
戦えない。
ちょうど、いい。
……解いて。
もらいましょう。
そして。
今度こそ。
この、盤面の。
表舞台に。
立つのよ。
(――もっとも。
この、絶妙な、タイミングで。
「拘束を、解こう」という、声が。
上がるように。
誰が。
最初に。
そう。
言い出したのか。
その、声が。
どこから。
聞こえて、きたのか。
……そこまでは。
私は。
気に、留めて。
いなかった)
(第8話 了)
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【 湊ミライの ゲーム攻略メモ 】
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・私の能力:感情の揺れがわかる。中身は不明。攻撃不可。
・私の役割:……なんか地味。よく読んでない。
〔今回〕
・エルフの役割=「場を混乱させ、誰かを叫ばせる」。
私を焚きつけようとするも、私が全部ポジティブ変換で不発。
・エルフ、逆上して私を夜襲→協力者の号令+皆で返り討ち。
・Xが連続殺人を"全部エルフのせい"にして幕引き。
→真犯人(ドワーフ・X)は闇に隠れる。X=場を操る化け物。
・残り5人(ミライ・協力者・リーダー格・X・少年)。
事件"解決"で場が緩み、私の拘束を解く声が。
・(※誰が最初に「解こう」と言い出したかは、気にしてない)
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