第7話 悟られていた
翌朝。
天井の、光が。
すう、と。
戻って。
部屋が。
また。
白く。
明るく、なった。
眠って、いた、七人が。
一人、また一人と。
目を、覚ます。
……そして。
気づく。
一人。
足りない。
昨夜まで。
いた、はずの。
夜目の、男が。
白い、床に。
倒れて。
……動かない。
◇
「――なっ」
「し、死んでる……!」
「昨日の、夜に? いつの間に?」
七人が。
ざわめいた。
誰も。
気づかなかった。
みんな。
ぐっすり。
眠って、いた、から。
(眠らされて、いた、なんて。
思いもしない)
……当然だ。
私は。
心の中で。
呟いた。
ドワーフの、酩酊で。
全員。
前後不覚。
その、隙に。
夜目の、男は。
始末された。
それを、知って、いるのは。
この、部屋で。
……起きて、いた、私と。
手を、下した、ドワーフと。
そして。
闇の中で、見て、いた。
Xだけ。
私は。
まだ。
拘束された、まま。
目隠しの、奥から。
気配だけで。
場の、動揺を。
味わって、いた。
(ふふ。
みんな。
慌てて。
いるわね。
何も。
知らない、って。
幸せね)
◇
「……犯人は。誰だ」
誰かが。
押し殺した、声で。
言った。
疑心暗鬼が。
部屋に。
満ちて、いく。
昨日まで。
「殺し合いなんて。したくない」と。
言い合って、いた、はずの、面々が。
今は。
互いを。
探る、目で。
見て、いる。
「……あの、女じゃ、ないのか」
――お。
私の、ことだ。
「あいつ。ずっと。縛られて。転がされて、たろ」別の、声が、言った。「動ける、わけが、ない」
「……そう、だな」
「じゃあ、誰が」
……ふん。
拘束が。
こんな、ところで。
役に、立つ。
私は。
「動けない、から。犯人では、ない」と。
全員に。
保証されて、いる。
一番、怪しい、位置に、いて。
一番、疑われ、ない。
……悪くない。
(協力者の、拘束が。
ここでも。
効いて、いる、なんて。
……いえ。
私の。
拘束が。
効いて、いる。
うん)
◇
結局。
その朝は。
犯人が。
わからない、まま。
終わった。
誰もが。
誰かを。
疑い。
誰も。
確証を。
持てない。
……そして。
ドワーフは。
その、輪の、中で。
素知らぬ顔で。
座って、いた。
私には。
わかる。
ドワーフの、感情。
……揺れて、いない。
堂々と。
して、いる。
いや。
むしろ。
……かすかに。
弾んで、いる。
(……こいつ。
楽しんで、いる?)
◇
その、日の、うちに。
私は。
ドワーフの。
心の、揺れから。
一つの、事実を。
拾い上げた。
誰かが。
ドワーフに。
話しかける。
何気ない、会話。
「あんたは。あと。何人、残れば。いいと、思う?」
その、問いに。
ドワーフの、感情が。
……ぴくり、と。
跳ねた。
「人数」という、言葉に。
反応した。
(……人数?)
私は。
考えた。
ドワーフは。
「人数」に。
強く。
反応する。
……もしかして。
ドワーフの、役割は。
「人数」に。
関係が、ある?
何人か、殺せ、とか。
何人、残せ、とか。
……昨夜。
ドワーフは。
夜目の、男を。
殺した。
あれが。
もし。
「役割の、ため」だと、したら。
ドワーフは。
まだ。
殺し足りて、いない、のかも。
あと。
何人か。
手に、かける、気だ。
――要警戒。
◇
そして。
その、夜。
また。
天井の、光が。
すう、と。
落ちた。
本物の、闇が。
部屋を。
満たす。
私は。
眠ら、なかった。
目隠しの、奥で。
ただ。
神経を。
研ぎ澄ませて。
待って、いた。
……来る。
きっと。
今夜も。
ドワーフは。
動く。
だって。
昨日。
あんなに。
上手く、いった。
味を、しめた、はず。
果たして。
しばらくして。
また。
あの、感覚が、来た。
部屋中の、呼吸が。
一斉に。
深く、沈む。
……酩酊。
ドワーフが。
また。
みんなを。
眠らせた。
(でも。
今夜も。
私は。
数え忘れられて、いる)
拘束されて。
隅に、転がされた、私は。
相変わらず。
ドワーフの。
意識の、外。
だから。
今夜も。
私は。
起きて、いる。
そして。
聞く。
◇
かすかな。
足音。
ドワーフが。
眠りこけた、誰かに。
近づいて、いく。
……ため息の、ような。
低い、呟きが。
聞こえた。
「……これで。二人目。……悟られず、二人。……これで。わしの、役割は。……達成、だ」
――悟られず、二人。
私は。
闇の、中で。
息を、呑んだ。
それが。
ドワーフの、役割。
「悟られず、二人、殺す」。
昨夜の、夜目の、男が。
一人目。
そして。
今夜。
二人目を。
手に、かけようと、して、いる。
くぐもった。
呻き。
何か、が。
崩れる、音。
……二人目が。
息絶えた。
ドワーフの。
声が。
弾んで、いた。
「……やった。やったぞ。……クリア、だ。……わしは。……家に、帰れる」
◇
……でも。
おかしい。
ドワーフの、声が。
……止まった。
「……あれ?」
とまどう、声。
「……なぜ。……クリアに。……ならん?」
私は。
闇の、中で。
眉を、ひそめた。
(……クリアに、ならない?)
ドワーフは。
確かに。
二人。
殺した。
夜目の、男と。
今夜の、誰か。
「悟られず、二人」。
条件は。
満たした、はず。
なのに。
クリアに。
ならない。
……なぜ?
答えは。
すぐに。
やってきた。
◇
「――"悟られず"、だろう」
闇の中に。
ふいに。
声が。
響いた。
低く。
静かで。
感情の、ない、声。
……この、声。
昼間。
ほとんど。
喋らなかった、男。
私が。
「X」と。
名付けた。
あの、男の。
声、だった。
「お前は。二人、殺した。それは。確かだ。……だが。"悟られず"の、条件は。満たして、いない」
「……なに?」
「なぜなら」Xの、声は。
ぞっとするほど。
平坦だった。「――俺が。見て、いたからだ。昨夜も。今夜も。お前が、殺すところを。……全部」
――ざわ。
私の、背筋が。
粟立った。
(……気づいて、いた。
X。
こいつ。
ドワーフの、犯行を。
昨夜から。
ずっと。
見て、いた)
◇
「……い、いつから」ドワーフの、声が。
震えて、いた。「お前。……酩酊は。……効いて、いた、はず」
「効かない」Xは。
短く、言った。「一度、食らった、状態異常は。……二度と、俺には、効かない。昨夜。お前の、酩酊を、一度、浴びた。だから。今夜は。……効かない」
「……そんな」
「お前の、負けだ」Xの、声。「"悟られず"殺す、はずが。……最初から。ずっと。俺に、見られて、いた。お前の、役割は。……昨夜の、時点で。とっくに。破綻して、いた」
……ああ。
私は。
闇の、中で。
目を。
(見えないけど)
見開いた。
ドワーフは。
昨夜。
一人目を、殺した、時点で。
もう。
Xに。
見られて、いた。
「悟られず」の、条件は。
その、瞬間に。
壊れて、いた。
なのに。
ドワーフは。
それを、知らずに。
「上手く、いった」と。
過信して。
今夜。
二人目を、殺した。
……無駄に。
一つ、命を。
奪って。
自分の、クリアも。
ないまま。
◇
「ま、待て……! 話せば……!」
ドワーフの、声が。
恐怖で。
裏返る。
「話す、こと、など、ない」
Xの、声は。
どこまでも。
冷たかった。
そして。
――鈍い、音が。
一度。
響いた。
何か、硬いもので。
思い切り。
殴りつけた、ような。
重い、音。
ドワーフの、声が。
途切れる。
どさり、と。
何かが。
崩れ落ちる。
……そして。
静寂。
ドワーフの、気配が。
消えた。
◇
闇の、中で。
私は。
硬直して、いた。
(……こわい)
ごまかしようも、なく。
そう、思った。
X。
あの、男。
感情が。
まったく。
揺れない。
ドワーフを。
殴り殺す、あいだも。
……ずっと。
凪いだ、まま。
罪悪感も。
高揚も。
何も、ない。
ただ。
淡々と。
「役割の、邪魔だから」とでも。
言うように。
一つの、命を。
消した。
……そして。
もう一つ。
わかった、ことが、ある。
Xは。
能力で、殺さなかった。
何か、硬いもので。
殴った。
つまり。
Xの、本当の、武器は。
……能力じゃ、ない。
もっと。
別の、何か。
心の、メモに。
私は。
一番、濃い、字で。
刻み込んだ。
――X。
状態異常が、効かない。
感情が、読めない。
そして。
能力に、頼らず、殺す。
……この、ゲームで。
一番。
危険な、男。
◇
やがて。
Xの、気配も。
自分の、寝床へ。
戻って、いった。
何事も、なかった、かのように。
闇の、中に。
残されたのは。
二つの。
動かない、亡骸と。
眠りこける、五人と。
拘束された、まま。
起きて、いる、私。
……八人から。
二人、減って。
六人。
(ドワーフと。
今夜、手に、かけられた。
名も、知らぬ、一人。
二人、減った)
私は。
目隠しの、奥で。
長い、息を。
吐いた。
ドワーフは。
死んだ。
「悟られず、二人、殺す」役割を。
果たそうと、して。
……皮肉にも。
最初から。
悟られて、いた。
一人目を、殺した、時点で。
もう。
詰んで、いた。
なのに。
「上手く、いった」と。
思い込んで。
二人目を、殺し。
その、慢心の、隙を。
Xに、突かれて。
死んだ。
◇
……過信は。
身を、滅ぼす。
私は。
闇の、中で。
その、教訓を。
深く。
噛みしめた。
ドワーフは。
賢かった。
温厚を、装い。
狙う者を、罠にかけ。
冷静に。
事を、運んだ。
……でも。
たった、一つ。
「上手く、いって、いる」という。
思い込みが。
全てを。
台無しに、した。
見えて、いない、ものが。
あることに。
気づけ、なかった。
(……ふふ。
気を、つけ、ましょう。
私は。
あんな、風には。
ならない。
だって。
私は。
全部。
見えて、いるもの。
この、盤面の。
何もかも)
――そう。
得意げに。
思う、私、自身が。
ドワーフと。
同じ、過ちの。
入り口に。
立って、いる、ことには。
まるで。
気づか、ないまま。
(第7話 了)
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【 湊ミライの ゲーム攻略メモ 】
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・私の能力:感情の揺れがわかる。中身は不明。攻撃不可。
・私の役割:……なんか地味。よく読んでない。
〔今回〕
・ドワーフの役割=「悟られず二人殺す」。
一人目(夜目の男)→二人目→でもクリアにならず。
・理由:Xに最初から見られていた="悟られず"が未達。
・ドワーフ、過信の隙をXに撲殺される。残り6人。
・X判明:①一度食らった状態異常は二度と効かない(適応)。
②能力でなく"硬いもの"で殴殺=武器は能力に非ず。
③感情がまるで揺れない。→最大の危険。
・教訓:過信は身を滅ぼす。(※私は大丈夫、と思っている)
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