第4話 拘束
屈強な、能力者たちが。
消えた、あと。
白い、部屋に、残ったのは。
私を、含めて。
九人だった。
分身も。
怪力も。
かまいたちも。
命令も。
いない。
派手な、力は。
出尽くした。
残ったのは。
……ぱっと見。
みんな。
「普通」の、連中だ。
大人しそうな、者。
気弱そうな、少年。
物腰の、柔らかい、男。
……でも。
だからこそ。
怖い。
この、まわりの、八人は。
派手な、力を。
持たない、かわりに。
まだ。
手札を。
一切。
切って、いない。
◇
そして。
その、八人の、視線が。
今。
私に。
集中して、いた。
……当然だ。
さっき。
私が。
あの、膠着を、破った。
(正確には。
協力者が、破ったのだけど。
それは。
みんな。
知らない)
命令の、男を。
引きずり下ろした、女。
武器も、力も、なさそうなのに。
何か。
得体の、知れない、ことを。
した、女。
――警戒される。
当然だ。
「……あんた」
大人しそうな、女が。
口を、開いた。
「さっきの。……何を、したの」
「別に」私は。
澄まして、答えた。「ただ。……みんなに。呼びかけた、だけよ」
「呼びかけた、だけで。あんなに。上手く、いく?」
「私に。人望が、あるからよ」
……嘘だ。
人望なんて。
ない。
でも。
こういうときは。
堂々と、していた、ほうが。
いい。
(実際。
動いたのは。
協力者の。
号令の、おかげ。
でも。
それは。
言わない。
手柄は。
私の、もの)
◇
でも。
八人の、警戒は。
解けなかった。
むしろ。
私が。
のらりくらり。
かわすほど。
疑いは。
濃く、なって、いく。
「……こいつ。何か、隠してる」
「さっきの、あれ。……能力じゃ、ないのか」
「そうだ。……役割で。俺たちを。操ろうと。して、いるのかも」
――まずい。
私は。
内心。
焦った。
空気が。
「湊ミライ、危険」の。
方向に。
傾いて、いく。
このままだと。
私は。
「得体の知れない、危険人物」として。
真っ先に。
始末される、対象に。
なりかねない。
……盤面を、支配する、どころじゃ、ない。
盤面から。
蹴落とされる。
「そいつの、口を。封じたほうが、いいんじゃ、ないか」
誰かが、言った。
「妙なことを。喋られる、前に」
……ちょっと。
待って。
それは。
まずい。
◇
その、とき。
「――待って」
静かな、声が。
割って、入った。
フードの、人影。
……協力者だ。
彼女は。
ゆっくりと。
前に、出て。
私と、八人の、あいだに。
立った。
「その、女なら。……私が。押さえて、おくわ」
「押さえる?」
「拘束する、ってこと」協力者は、言った。「見たところ。この子の、能力は。……何かを、"操る"系。目や、口を。塞いで、動きを、封じておけば。無害よ」
……え?
私は。
一瞬。
ぽかんと、した。
この人が。
私を。
拘束する?
……味方の、はずでしょう?
まさか。
裏切り?
「縄なんて、ないけど」協力者は、続けた。「この、部屋の、隅に。……たまたま。丈夫な、布が、落ちていたわ。これで、手を、縛って。目隠しも、しておけば。この子は。何も、できない」
◇
八人が。
顔を、見合わせた。
「……それで。無害に、なるなら」
「まあ。……殺すよりは。後腐れが、ないか」
「じゃあ。頼む」
――待って、待って。
私は。
混乱した。
なんで。
協力者が。
私を、拘束するの。
これじゃ。
私。
本当に。
何も。
できなく、なる。
抵抗、しようと、した。
でも。
協力者が。
私の、手を、取りながら。
……ほんの、小さな、声で。
私にだけ。
囁いた。
「――暴れないで。合わせて」
その、一言で。
私は。
動きを。
止めた。
◇
(……合わせて?)
私の、頭が。
猛烈な、勢いで。
回転した。
協力者は。
私を。
裏切って、いない。
「合わせて」と、言った。
つまり。
これは。
芝居。
私を。
拘束する、という。
芝居を、打つことで。
――何かを。
狙って、いる。
何を?
……考えろ。
今。
私が。
拘束されると。
どうなる?
八人の、警戒が。
解ける。
「湊ミライは。無害に、なった」と。
みんなが。
安心する。
……安心、すると?
……ああ。
そうか。
――口が。
軽く、なる。
◇
見えた。
今。
この、部屋は。
極度の、緊張状態に、ある。
全員が。
手札を、隠し。
誰も。
本音を。
喋らない。
……でも。
「危険人物」の、私が。
拘束されて。
無力化されたら?
場の、緊張が。
ふっと。
緩む。
「とりあえず。一番、怪しい、奴は。押さえた」と。
みんなが。
一息、つく。
そして。
緊張が、緩めば。
人は。
喋り始める。
自分の、ことを。
出身を。
能力を。
……ぽつり、ぽつりと。
そう。
協力者は。
「会話が、生まれる、環境」を。
作ろうと。
して、いる。
……でも。
なぜ?
なぜ。
会話を。
生ませたい?
――そこまで、考えて。
私は。
気づいた。
いえ。
思い出した。
私の。
能力を。
◇
私の、力は。
「他人の、感情の、揺れが、わかる」こと。
誰かが。
嘘を、つけば。
感情が。
揺れる。
誰かが。
何かを、隠せば。
揺れる。
誰かが。
本当のことを。
言えば。
……揺れない。
――つまり。
みんなが、喋り始めれば。
私は。
その、一言、一言が。
嘘か、本当か。
誰が。
信用、できて。
誰が。
危険か。
それを。
座って、いる、だけで。
見抜ける。
……そうか。
協力者は。
私を。
拘束する、ことで。
私の、能力が。
一番。
働きやすい、状況を。
作ろうと、して、いる。
私を。
「無害な、置物」に、見せかけて。
その、実。
部屋の、全員の。
心を。
読ませる。
……この人は。
私の、能力の、中身までは。
たぶん。
知らない。
(能力の、ことは。
さすがに。
話して、いない)
でも。
この、協力者は。
妙に。
的確に。
私を。
見抜いて、いた。
私が。
どこに、置かれれば。
一番、働くか。
前に、出るより。
じっと、見ている、ほうが。
恐ろしい、ということを。
……まるで。
見て、きたかのように。
わかって、いる。
だから。
能力の、中身なんて。
知らなくても。
――そう。
見抜いたうえで。
私を。
座らせる、環境を。
作ったのだ。
……まったく。
食えない、人。
◇
……悪くない。
私は。
内心で。
にやりと、した。
拘束される、なんて。
一見。
屈辱的だ。
盤面の、支配者が。
縛られて。
目隠しまで、されて。
部屋の、隅に。
転がされる。
……でも。
違う。
これは。
最高の。
観測ポジションだ。
拘束されて。
無力に、見える。
誰も。
警戒し、ない。
だから。
みんな。
私の、目の前で。
(正確には。
目隠しされた、私の、耳元で)
好き放題。
喋る。
その、全部を。
私は。
感情の、揺れとして。
受信する。
……ふふ。
誰にも。
見られず。
すべてを。
見る。
これこそ。
私の。
真骨頂。
私は。
協力者の。
「芝居」に。
乗ることに、した。
「――放して! なんで、私が、こんな……!」
わざと。
悔しそうに。
じたばた。
暴れて、みせる。
(もちろん。
全部。
演技)
協力者が。
手際よく。
私の、手を、布で、縛り。
目に、目隠しを、巻く。
視界が。
闇に、なる。
「……これで。しばらくは。大人しく、してるでしょう」
協力者の、声。
八人に、向けた、その、声は。
冷静で。
落ち着いて、いて。
……ほんの、少しだけ。
私にしか。
わからない、くらい。
――楽しんで。
いる、ような。
気が、した。
◇
目隠しの、中で。
私は。
じっと。
息を、殺した。
視界は。
ない。
でも。
それで、いい。
むしろ。
目が、見えない、ぶん。
感覚が。
研ぎ澄まされる。
誰かが。
動く、気配。
誰かが。
息を、吐く、音。
そして。
――誰かの。
心が。
揺れる。
その、波。
やがて。
予想、通り。
部屋の、緊張が。
少しずつ。
緩んで、いくのが。
わかった。
「危険人物は。押さえた」という。
安心が。
空気を。
やわらげて、いく。
そして。
……ぽつり、と。
誰かが。
口を、開いた。
「……なあ。あんたたち。……どこから、来たんだ?」
――始まった。
私は。
目隠しの、奥で。
そっと。
微笑んだ。
さあ。
喋りなさい。
好きなだけ。
あなたたちの。
嘘も。
本当も。
全部。
私が。
いただくわ。
(――そして。
このときの、私は。
やっぱり。
気づいて、いない。
この、完璧な。
「観測の、舞台」を。
用意したのが。
私では、なく。
あの、協力者だった、ことに。
私は。
ただ。
「自分の、能力を、活かす、名案を。
私が、思いついて。
協力者に、拘束させた」と。
……そう。
記憶を。
都合よく。
すり替えつつ、あった)
(第4話 了)
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【 湊ミライの ゲーム攻略メモ 】
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・クリア条件=①最後まで生き残る ②役割を達成する。
・重要ルール:物理攻撃が最も弱い。
・私の能力:他人の感情の揺れがわかるだけ。攻撃不可。
→嘘・隠し事は"揺れ"でわかる。座って情報を集める型。
・私の役割:……なんか地味。よく読んでない。
・階段(数<力<技<支配<結束)で派手な4人が脱落。残り9人。
〔今回〕
・協力者が私を"拘束"する芝居。真意=場の緊張を緩めて
皆に喋らせ、私の心読みを働かせること。私は乗った。
・目隠し=最高の観測ポジション。見られず、すべてを読む。
・(※この名案、私が思いついたことにしておく)
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