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最弱能力"感情が読めるだけ"の私が、13人のデスゲームで盤面を支配する(と、本人は思っている)  作者: SSS


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2/14

第2話 最強は、次の最強に負ける



最初に、動いたのは。


私では、なかった。


(当たり前だ。


私は。


動かない。


動かすのだ。


……まだ、誰も、動かせて、いないけど。


それは、これから)



沈黙を。


最初に、破ったのは。


痩せた、若い男だった。



◇



その男は。


へらへらと、笑いながら。


一歩、前に、出た。


「なあ、みんな。……こんな、殺し合いなんて。やめようぜ」


猫なで声。


「仲良く、しようや。な?」


……胡散臭い。


全員が。


そう、思ったのが。


空気で、わかった。


私の。


感情を、読む力を。


使うまでも、ない。


(でも、いちおう、読んだ。


男の、感情は。


笑顔の、裏で。


……嗤っていた。


ああ、こいつ。


何か、やる気だ)



◇



次の、瞬間。



男の、隣に。


もう一人。


同じ、顔の、男が。


立って、いた。



え。


と、思った、ときには。


その、隣にも。


反対側にも。


後ろにも。


……次々と。


同じ顔の、男が。


増えて、いく。


二人。


四人。


八人。


気がつけば。


白い、部屋は。


へらへら笑う、同じ顔で。


埋め尽くされて、いた。



「――分身、だ」


誰かが、呻いた。


「数を、増やす、能力か……!」



分身の、群れが。


じり、と。


私たちを。


取り囲む。


数十人。


いや。


まだ、増える。


……なるほど。


数の、暴力。


一人が、何十人にもなれば。


どんな、強者でも。


押し潰される。


これは。


……強い。


素直に。


そう、思った。



◇



(――ちょっと、待って)



私は。


群れの、中で。


冷静に。


考えた。


数十人の、分身。


確かに、脅威だ。


でも。


これ、全部。


「あの、一人」から。


生まれて、いる。


……もし。


本体を、叩けば?


分身は。


どう、なる?



でも。


その、仮説を。


試す、間も、なく。



――事態は。


動いた。



◇



分身の、群れを。


かき分けて。


一人の、大男が。


ずんずんと。


進み出た。



筋骨隆々。


身の丈、二メートル近い。


革鎧の、男だ。


男は。


手近な、分身を。


一人。


むんずと、掴んだ。


そして――


軽々と。


頭の上まで。


持ち上げた。



「ぬん!」



掛け声、一つ。


掴んだ、分身を。


他の、分身の、群れへ。


ぶん投げる。


ボウリングのように。


分身が、なぎ倒される。


……力持ち。


いや。


力持ち、なんて、ものじゃ、ない。


男は。


次々と。


分身を、掴んでは。


投げ。


掴んでは。


投げ。


まるで。


紙人形のように。


数十人の、群れを。


蹴散らして、いく。



「何でも、持ち上げる……!」誰かが、叫んだ。「怪力か!」



◇



……あれ?



私は。


首を、かしげた。


物理攻撃は。


一番、弱い。


……って。


さっき。


運営が。


言って、なかった?


なのに。


あの、怪力の男。


めちゃくちゃ。


強くない?



(――いや。


落ち着け。


落ち着くのよ、ミライ。


きっと。


これには。


深い、理由が、ある。


私に、わからないはずが、ない。


だって、私は。


天才、だもの)



……考えろ。


なぜ。


「物理最弱」の、はずの、世界で。


怪力が。


通用して、いる?



……あ。


そうか。



相手が。


「分身」だからだ。


分身は。


数は、多いけど。


一人ひとりは。


ただの、コピー。


特別な、防御力も、ない。


だから。


怪力の。


単純な、力で。


蹴散らせる。


……つまり。


「物理が、最弱」というのは。


物理が。


常に、負ける、という意味じゃ、ない。


相手に、よっては。


物理でも。


勝てる。


要は。


――相性。


なるほど。


なるほど、ね。


(ふう。


わかってしまった。


さすが、私。


天才の、名は、伊達じゃ、ない)



◇



怪力の、男は。


ついに。


群れの、奥。


逃げ惑う。


ただ一人の――


本体を。


見つけ出した。



「――ひっ」



へらへら笑いは。


もう。


消えていた。


本体の、男は。


腰を、抜かして。


尻餅を、ついている。


分身を、いくら、増やしても。


本体の、彼、自身は。


ただの。


非力な。


一人の、男。



「や、やめ……!」



言い終わる、前に。


怪力の、手が。


本体の、頭を。


鷲掴みに、した。


……ごき、と。


嫌な、音。


そして。


男を。


白い、床に。


叩きつける。


――どさ。



その、瞬間。


部屋を、埋めていた。


数十人の。


分身が。


すう、と。


まるで。


最初から、いなかったかのように。


かき消えた。



……やっぱり。


本体を、叩けば。


分身は、消える。


私の。


読み、通り。


(……ほら、ね。


私の、言った、通りに、なった。


誰にも。


言って、ないけど。


心の中で、言った、通りに)



◇



静寂。



白い、床に。


転がる。


分身使いの、男は。


もう。


動かない。


……ゲームが、始まって。


最初の。


脱落者。


数の、力を、誇った、男は。


純粋な、力の前に。


呆気なく、敗れた。



そして。


部屋の、中央には。


一人。


怪力の、大男が。


肩で、息を、しながら。


立って、いる。


返り血一つ、浴びず。


ただ。


圧倒的な。


存在感で。



「……つえぇ」


誰かが。


呆然と、呟いた。


「あいつが。……一番、強いんじゃ、ないか」



……そう、かも、しれない。


私も。


内心。


少し。


警戒を、上げた。


あの、怪力。


味方に、つければ。


心強い。


敵に、回せば。


厄介。


……どうやって、私の、駒に、しようかしら。


(ちなみに、この時点で。


相手を、駒に、する、あても。


手段も。


私には。


一切、なかった。


ただ。


「駒にする」と。


思うのが。


気持ち、よかった、だけだ)



◇



――だが。



「一番、強い」は。


長く。


続かなかった。



怪力の、男が。


ふと。


顔を、上げた、その、瞬間。



しゅっ、と。


空気が。


鳴いた。



何が、起きたのか。


私には。


見えなかった。


ただ。


怪力の、男の。


分厚い、胸元に。


一本。


赤い、線が。


走った。


……次の、瞬間。


その、線が。


ぱっくりと。


開いて。



「――が」



男は。


血を、吹いて。


膝から。


崩れ落ちた。


あれほどの、巨体が。


まるで。


見えない、刃で。


切り裂かれた、かのように。



……見えない、刃?



いや。


違う。


私は。


目を、凝らした。


怪力の、男と。


少し、離れた、場所に。


立って、いる。


ひょろりとした。


女が、一人。


彼女が。


すっと。


手を、薙いだ。


その、動きに、合わせて。


また。


しゅっ、と。


空気が、鳴った。



◇



「――かまいたち」



私は。


思わず。


呟いた。



風の、刃。


空気を、圧縮して。


見えない、刃にして。


飛ばす。


遠、間合いから。


触れずに。


切り裂く。


……怪力の、男は。


強かった。


でも。


その、力を。


振るうには。


相手に。


触れなければ、ならない。


掴んで。


投げて。


叩きつける。


そのために。


近づく、必要が、ある。


――でも。


かまいたちの、女は。


近づかせ、ない。


触れる、前に。


遠くから。


切る。


どんなに、力が、強くても。


掴む、前に、切り刻まれたら。


意味が、ない。



……ああ。


これも。


相性、だ。



「数」は。


「力」に、負けた。


そして。


「力」は。


「技」に、負ける。


間合いを。


制する者が。


力任せの、者を。


制する。


……なるほど。


なるほど。


見えて、きた。


この、ゲームの。


底が。


(見えて、きた、というより。


目の前で。


順番に。


死んで、いくのを。


眺めて、いるだけ、なんだけど。


まあ。


見えて、きたことに。


変わりは、ない)



◇



怪力の、男が、倒れ。


部屋の、空気が。


また。


変わった。



かまいたちの、女。


遠間から、切り裂く、その、力は。


明らかに。


頭一つ、抜けている。


誰も。


うかつに。


近づけない。


近づけば。


触れる前に。


切られる。



女は。


ゆっくりと。


部屋を、見回した。


品定めするように。


次は。


誰を、切ろうか、と。


……その、視線が。


一瞬。


私の、方を。


かすめた。



――ぞくり。



心臓が。


跳ねた。


(……え。


待って。


私?


私を、切る、気?


いや。


やめて。


私は。


支配する、側で。


切られる、側じゃ……!)



冷や汗が。


背中を。


伝った。


私の。


立派な。


頭脳も。


遠くから、飛んでくる、風の刃の、前では。


何の、役にも。


立たない。


考える、より、早く。


首が。


飛ぶ。


……ここに、来て。


初めて。


私は。


自分が。


「殺され得る」という、事実を。


生々しく。


感じた。



◇



だが。



かまいたちの、女の、視線は。


私を。


通り過ぎた。



……たぶん。


私が。


あまりにも。


「弱そう」だったから、だ。


武器も、なし。


鎧も、なし。


どう見ても。


脅威じゃ、ない。


後回しで、いい。


そう。


判断された。


……。


……失礼ね。


(と、思いつつ。


心の底では。


ほっと、していた。


弱そうに、見えるのも。


悪く、ない。


……いえ。


これは。


私の、高度な、戦略。


あえて。


弱者を、演じて。


油断を。


誘っているの。


そう。


そういうことに。


しておく)



◇



かまいたちの、女が。


次の、標的を。


定めようと、した。


その、とき、だった。



「――止まれ」



低い。


短い。


一言。



部屋の、隅から。


声が、した。


痩せた。


神経質そうな。


中年の、男。


彼が。


かまいたちの、女に。


向かって。


静かに。


言い放った。



「動くな。手を、下ろせ」



すると。



……かまいたちの、女の。


動きが。


止まった。



薙ごうと、上げた、手が。


途中で。


ぴたりと。


止まって。


それから。


ゆっくりと。


下りて、いく。


女、自身の。


意思とは。


無関係に。


まるで。


見えない、糸で。


操られる。


人形のように。



「な……っ」



女の、顔に。


初めて。


焦りが。


走った。


動け、と。


念じているのに。


身体が。


言うことを。


聞かない。



◇



「――命令」



私は。


また。


呟いて、いた。



命令する。


声に、出した、指示に。


相手を。


従わせる、能力。


かまいたちは。


遠くから、切り裂く。


誰にも。


近づかせ、ない。


最強に。


見えた。


……でも。


その、切り裂く「手」を。


「動くな」の、一言で。


封じられたら?


刃を。


飛ばす、ことすら。


できない。


――技は。


支配に、負ける。


どんなに。


鋭い、技も。


その、身体を。


乗っ取られたら。


振るえない。



……階段だ。



私は。


悟った。


数は、力に、負け。


力は、技に、負け。


技は、支配に、負ける。


一つ、上が、いれば。


その、下は。


ひっくり返る。


強さの、序列なんて。


見た目じゃ。


決まらない。


誰が。


誰に、勝つか。


それは。


――相性で。


決まる。



◇



「動くな」の、命令に。


縛られた。


かまいたちの、女に。


命令の、男は。


ゆっくりと。


歩み寄った。


そして。


感情の、ない、声で。


告げた。



「――そのまま。じっと、していろ」



女は。


動けない。


抵抗も。


できない。


……そして。


命令の、男は。


分身使いの、男の、亡骸のそばに、転がっていた。


何か、硬いものを。


拾い上げた。



私は。


目を。


逸らした。


その、あとに。


起きたことは。


見なくても。


わかる。


……かまいたちの、女も。


脱落した。



◇



三人。



ゲームが、始まって。


まだ。


いくばくも、経っていない。


なのに。


もう。


三人が。


白い、床に。


転がって、いる。


分身使い。


怪力。


かまいたち。


……次々と。


「最強」が。


現れては。


「次の、最強」に。


潰されて、いく。



そして、今。


部屋の、中央に、立つのは。


命令の、男。


声、一つで。


相手を、操る、能力者。


……確かに。


強い。


近づく、必要も、ない。


触れる、必要も、ない。


ただ。


命じるだけ。


――でも。



私は。


静かに。


その、男を。


見つめた。



(……あなたも。


きっと。


最強じゃ、ないわ)



なぜなら。


この、階段には。


まだ。


続きが、あるからだ。


支配に、勝つ、ものが。


きっと。


この中に、いる。


……そして。


それを。


見極めて。


利用するのが。


私の。


仕事。


(仕事、と言っても。


まだ。


何も。


して、いないけど。


これから。


これから、よ)



◇



白い、部屋に。


残った、九人が。


命令の、男を。


遠巻きに。


見て、いる。


誰も。


動かない。


……いや。


動けない。


うかつに。


声の、届く、範囲に、入れば。


「動くな」の、一言で。


終わり、だから。



張り詰めた。


沈黙。



その、中で。


私だけが。


……ひそかに。


微笑んで、いた。



だって。


私には。


もう。


見えて、いたから。


この、膠着を。


破る、方法が。


命令の、男を。


引きずり下ろす。


その、一手が。


……ふふ。


見て、いなさい。


ここから。


盤面を、動かすのは。


この、私よ。



(――もっとも。


その「一手」に。


まさか。


とんでもない、協力者が。


関わって、くることを。


このときの、私は。


まだ。


知らなかったのだけど)



(第2話 了)



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 【 湊ミライの ゲーム攻略メモ 】

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

・クリア条件=①最後まで生き残る ②役割を達成する。

・重要ルール:物理攻撃が最も弱い。

・私の能力:他人の感情の揺れがわかるだけ。攻撃不可。

・私の役割:……なんか地味。よく読んでない。

〔今回 判明〕

・強さの序列は"相性"で決まる(=階段)。

  数 < 力 < 技 < 支配 …と、上が下をひっくり返す。

  分身→怪力→かまいたち、の順で脱落。

・「一番強い」は次の最強にすぐ負ける=過信は禁物。

・かまいたちに一瞬狙われかけた。私も"切られ得る"。

 →弱そうに見えるのは、むしろ盾(と思うことにした)。

・命令の男も最強ではない。支配に勝つ者が必ずいる。

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