59.五つ首の牛の厄災
人生ゲームが終わった後、夕食を食べ、また会議の時間になった。
いつも通り、族長の家で会議をする。
「さあ!早速だけど、今日は誰がレーダーを使う!?」
話を最短距離で進めるレイジー。
「誰にするの?早く貴方達で決めて頂戴。」
レーダーが使えないソフィーにとっては会議を早く終わらせたかった。
「我は気分が悪い....今日はパスさせてくれ....」
人生ゲームで負けて灰のように燃えつけている圭吾。
厨二発言をする余裕すら無くなっている。
「...あの!私がします!」
アプシュルノは意を決して言い放った。
「アノちゃん!ありがとう!そしてどこをやってくれるんだい!?」
「ん〜..ここの周辺でいいですか?あまりこの辺って捜索してないと思うので。」
「わかった!いい...」
アプシュルノが村の北周辺を捜索する事が決定しかけたその時、
「じゃあじゃあ!......ぼっ.......僕がします....」
哲也が慌てて言った。
「おおぅ!どこをしてくれる!?」
「北です....」
「んん?なぜだい?アノちゃんがやりたいと言った所を急に。」
「や...野暮用ですよ...とりあえず北側がいいんです...」
「別にいいけど...アノちゃんはどうなんだい!?」
「いいですよ。じゃあ東側でいいですか?」
「うんいいよ!よし!アノちゃんが東側、哲也くんが北側、これで皆んないいね?」
レイジー以外の皆んなは頷く。
「よし、会議終了!解散!」
そして会議が終わる。終わったと同時に、隣の部屋からウプイとメメイが顔を出した。
「アノ姉ちゃん!また散歩しよぅ!」
「ワワン!」
「ごめんね、今日の夜中に仕事なの。代わりに山斬に行って貰うから。」
「ハフェイ!?」
山斬は声が裏返って驚いた。
「山斬。ごめんだけど今日だけお願い出来ないかしら?借しは返すからさぁ〜。」
アプシュルノは山斬に甘えるように頼んだ。
「しょうがないのは生姜が無い!いいだろうアノ!ウプイよそれでよいか?」
「うん!ありがとうアノ姉ちゃん!山斬...さん!」
ウプイは兄ちゃんかおじさんか迷った挙句、さんにした。
〜村にて〜
今日は山斬、ウプイ、メメイ、ボラバンで散歩をしていた。
不思議な事にアプシュルノがいないだけで会話が全く弾まなかった!
「ワゥーン!」
メメイの遠吠えと共に、空には月が見えた。
綺麗な月。昨日は満月だったので今日はほんの少しだけ欠けている。
「月綺麗だねぇ、ウプイ!綺麗過ぎてアノ姉ちゃん仕事サボってそうだねぇ」
「ワンワンワン!」
「こらこら、騒ぐと怒られるのはワシなんじゃぞ?ウプイもメメイも静かに........あれはなんじゃ?」
そう言ってボラバンが指を刺した方向には、人だかりができていた。散歩組はその人だかりに駆け寄る。
族長の姿を見た村人達は族長の元に集まり、話しかけた。
その異様な状態にボラバンは村人達に聞いた。
「何の騒ぎじゃ!?」
「子供達が!!消えたんです!!」
「俺のアブジーとケロブイが帰ってこないんだ!」
「ちょっと待つんじゃ!話を整理してくれ!」
話を整理するとこうだ。
村人達の子供達5人は時系列から考えて昼間、西の森の奥に入り込んだっきり帰ってこなくなったという事だ。
「族長!助けて下さい族長!」
「.....」
ボラバンは黙っていた。
「助けて!あの子がいなくなったら私どうすればいいの!?」
「....」
ボラバンは沈黙を続ける。
「族長!」
「族長様!」
「お願いします族長!」
「..............アカイヨか?」
閃いたように言うボラバン。そしてそれを聞いた瞬間周囲の人々が絶句した。しかし、何も知らない山斬にとってはアカイヨという謎の単語に混乱していた。
「そんな...嘘だ.....」
「何で...............何で!何で私の子がアカイヨなんかに!」
「ああ...............ハハハハ!アブ......ジー.......ケロブイ...
アアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!」
そして次第に消えた子供達の親は嘆き、悲しみ苦しみ、そして泣き狂っていた。その姿はまるで子が死んだかのようだった。いや、そうとしか思えない。
「うっ.....うっ...」
「うああああああああああああああん!!!!!!!」
「クゥ...」
ボラバンとウプイも泣いた。
ボラバンは大人しく静かに。ウプイは子供らしく泣きじゃくっていた。
メメイも悲しそうに鳴く。
「どういう事なのだ?なぜ急に泣き出すのだ?」
山斬は頭の整理が追いつかない。
山斬を置いてけぼりにしたまま、山斬以外の人達はしばらくの間泣いていた。
時間が経ち、次第に話しかけれる状態になった。
「ウプイよ。アカイヨとは何なのだ?」
山斬は話しかけやすいウプイに話かけた。
「ん?そうだよね。知らないよね。アカイヨってのはね。顔が5つある牛さんでね、子供を5人食べてどっか行っちゃう悪い牛さんなんだよ.....................だから..........皆んなは......うあああああああああん!!!!!!!!」
「ごめん!聞いて悪かった!」
泣かしてしまった事を即座に謝るが、ボラバンに怒られる事を覚悟した。
しかしボラバンは怒る気力すら残っていなかった。ボラバンのその落ち込んでいる様子を一言で言うなら“虚”だった。そこにいるが、魂はどこかへ飛んでしまったような飾り物のような瞳をして、微動だにしない。
ボラバンとウプイにとって最悪の散歩となってしまった......




