41.不器用な剣 未熟物の娯楽
山斬は族長の家の外に出て、ウブジーの剣修行を見る。
藁人形のような的があり、ウブジーは剣を構えているのだが、距離が空き過ぎている。30mくらい空いている。
「少年よ、その距離は投擲武器の距離だぞ?当てるつもりがないのか?」
「ん?そうですよね。初見の方は皆んなそう言いますが、僕の剣術はこの距離で切る事の出来る剣術なのです。まあ見ていて下さい。」
「おう。」
そうウブジーが言うと、ウブジーは剣を構え、目付きを変えて、周りの空気がざわめき始める。
次の瞬間!
「ビヒュッーーー!」
疾風の様な速度を瞬時に出して、的を切り裂く!
それはまるで鎌鼬のようであった。
速さが故、的を切る音よりも風を切る音の方が大きく聞こえた。
「おお凄いぞ!その力があれば、近距離で戦えば尚更凄い力で切る事が出来るのではないか?」
「....それが出来ないんです。」
意外な回答に少し沈黙をおく山斬。
「なぜなのだ?」
「僕の剣術は特殊で、近距離で斬り合う戦い方とは全く違います。それに、空気の抵抗を減らしながら加速して切っているので、腕の力で切っていないです。だから剣と言っても弓の方が感覚として似ているくらいなんです。」
「なるほどそれでもまあ!....うん強いのか?」
遠距離から詰めて切り裂く事の強さがあるが、その後は近距離になってしまうという器用貧乏なウブジーの戦い方に山斬はフォローをしきれなくなっていた。
「そんな無理しなくていいですよ。この剣術は守る為に鍛えたものですので、獣との戦いしか考えておりません。」
「そ、そうなのか。」
あまり傷つけなくてホッとした山斬。
「あの...ヒニー姉ちゃんの事って....どう思いますか?」
ウブジーは顔を伏せて、モジモジしながら聞いてきた。
「...まあ明るめでまあまあ綺麗な人とは思うぞ?」
「ですよね!やっぱりヒニー姉ちゃんって美人ですよね!実は僕、自慢じゃないですけどヒニー姉ちゃんに抱き枕にされる事あるんですよ〜!時折だけど。」
良かった。
一応無難に少し高めの評価で言っておいたが正解だった。
選択を間違えると大変な事になっていたかもしれない。
そして山斬は、ウブジーからの話を受け、昼飯を食べて自分の部屋に戻る。
「コンコンコン」
部屋に入って10分位するとノックが鳴った。
「入ってよいぞー」
「ガチャ」
扉からは、圭吾が出てきた。
「お邪魔する!突然だが山斬よ!君は暇であるか?因みに我は暇だ!」
「暇だが?」
「よしっ!それなら少し我と勝負をしないか?」
山斬が暇である事を確認した圭吾は、喜んだ様子だった。
「で、何で勝負するのだ?」
「それは...カードを引き合い捨てるだけのシンプルなゲームだが、そこに秘めた極限なる心理戦!読み合う集中力!迫られる数々の選択!“ババ抜き”だっ!」
圭吾はババ抜きを盛大に説明した。
「そして!負けた方は勝った方の言う事を聞くという究極の賭けをしようではないか!」
カッコよく言うが、やっている事が小学生のやる事である。
「まあいいぞ。多少は楽しそうだからな」
圭吾は山斬の部屋内にあるテーブル一つと椅子2つを持ってくる。
そして2人は椅子に座り
圭吾は、トランプの束からジョーカーを一枚抜き、
カードを2つのグループに分ける。
そしてそれぞれ一つのグループをとりカードを組みにして捨てる。
ジョーカーは山斬。
心理戦とは言ったものの、最初は互いに組みが出来てジョーカーが入れ替わる事はない。
問題は終盤に差し掛かる時だ。
圭吾は1枚、山斬は2枚、圭吾の引くターンで、
山斬のカード2枚の左手にジョーカー、右手にハートのQ。
圭吾はどっちがジョーカーか迷っている様子だ。
そこに山斬は言葉で惑わす!
「ワティフェィから見て左手にジョーカーがあるぞ?」
ほとんど初見の人間を信じる事は出来ないだろうと踏んでの真実を言うという選択!
がしかし..
「こっちだ!」
圭吾がそう言うと右手のQを引かれた。
負けてしまった。




