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43.村の誇れる族長

「我の勝ちだ!」

負けてしまった山斬。



出来るだけ面倒臭い頼みをやめて欲しいとお願いしようとしたら......

「だが、頼みを聞いて貰う必要は無い!何故ならば、我は禁忌の術に手を染めていたからだ!」

「禁忌の術?とは何をしたのだ?」




疑問そうに聞く山斬に対して圭吾はトランプをカードの束から両手それぞれ1枚ずつに取る。

表を見せると山斬から見て左がジョーカー、右がスペードの3だ。




そして圭吾は両方とも裏返して山斬に見せた。

カードの裏には両方共トランプらしいトランプの模様をしていた。




「このカードがどうかしたのか?」

山斬がそう聞くと、圭吾は呆れたように小さく笑い、



「このカードの構造に気づかないのか?ふん、よくこの世界を生きていけたものだな!よく裏側を見比べてみろ!」

言われた通り、裏側を見比べる。





そうすると、ジョーカーの裏側は、真ん中の丸いマークが小さく出来ていた。

「ああっ!ジョーカーの模様が少し違うではないか!」




「そうなのだ!これを目当てにすれば、相手を欺く事ができるのだ!この禁忌の術を名付けて偽物の仲間意識(アナザーブルビテーション)という!よって先程の契約は無しだ。いいスリルを楽しませてくれてありがとう山斬。そこで次のゲームなのだが...」




そして2人は更に遊んだ。

将棋やオセロやチェスなど、圭吾は修学旅行をしている感覚で持ってきていた。

そして気づけば夕食の時間になっていた。












〜宿にて〜

仕事仲間の皆んなは夕食を食べ、

山斬は早食いな方で、少食なソフィーの次に食べ終わった。



自分の部屋に戻ろうとすると服の袖を誰かに掴まれて



「ほっとまっへよ、やああん!」

大口にパスタを突っ込んだアプシュルノだった。



「アノよ!ちゃんと飲み込んでから喋るのだ。」

「ゴックン!はぁ。実はね!ウプイと族長が夜に村を散歩するらしいから一緒に行かない?」

上目遣いで頼むアプシュルノ。



「まあ時間が空いているからいってもいいぞ。」

そして2人は族長の家に行き、ボラバン、ウプイ、メメイ、アプシュルノ、山斬の4人と一匹は夜の散歩に行く事になった。








〜村にて〜

村を散歩すると、ボラバンは出会う人一人一人に挨拶と軽い会話をしている。昨日の村の人が言っていた通りだった。それにしても、村の人に好かれる程に毎日愛想よく挨拶をしている事がよく分かる。




「こんばんは、バーザムさん。言ってた果物の調子はどうですかい?」

「いやあとてもいい出来になったよ!そうだ!」



そしてバーザムさんという中年の村人がカゴにいっぱいのヘタのついた小さく歪な桃のような果物を持ってきて

「はいこれ!お裾分けだ!」

「おおっ!これはいい出来ですな!ワシの若い頃みたいじゃ!」

「ははは!またご冗談を!」

すると夜中の7時ぐらいなのに子供達が集まって来る。




「ボラバン爺ちゃん!また話を聞かせて!」

「抱っこ抱っこぅ」

「爺ちゃん!オレの薪割り凄く速くなったんだぜ!」

凄い人気だ。そして更に凄いのは、一人一人に呆れる事なく接している優しい姿だ。ここまで村の人を思っているからこそ、村の規律に厳しいのかもしれない。




「父ちゃんはねぇ?ウプイの自慢の父ちゃんなんだよぅ!でも皆んなお爺ちゃんっていうの。」

「まあボラバンさんは老け顔だからねえ..それにしても凄い人気ね。山斬も見習って人の事を考える人間にって...人じゃないんだっけ...」

「ワティフェィは人の事を考えている方だが?」

「よく言うわ」

「ワゥーン!」

メメイが空にむかって遠吠えをする。空を見ると、綺麗に宝石の様に輝く満月があった。




「まあ綺麗。」

心の声が漏れたようにアプシュルノは言った。

「アノ、満月などどこでも観れるぞ?」

山斬の言う通り、綺麗とはいえ満月は見慣れていて普通は声に出る程感動しないものだ。

「..?そうよね、実はね私、あの工場でずっと働かされていたの。だから満月を見るのがこれが初めてかも。」

急なカミングアウトに動揺してしまう山斬。

「....おう、それはすまなかったな。」

あのうるさい工場は何故アプシュルノに労働をさせていたのか?そんな疑問をどうにも出来ないので、山斬はそれについて考えるのをやめた。







そして4人と一匹は、南の小屋にやってきた。

「いいか?一応言っておくが、お前らは入ってはいけないぞ!」

「ん?ああわかったぞ。」

「分かってるわ。」

ボラバンに一応釘を刺される2人。



そして小屋から20m位離れて、ボラバン以外の人達は残され、ボラバンは鍵を使って小屋に入っていく。

「ウプイちゃん、あの中でボラバンさんは何してるの?」

「ご先祖様と話してるんだよぅ!」

「ん?どうやってかしら?」

「アノよ、そういう村の決まり事なのだろう。」

「そういう事か。」

納得したアノは空を見上げて、また満月を見始めた。




そしてしばらくすると..

「ブォォーン!......ブォォーン!ブォォーン!..ブォォーン!」

謎の音がする。

「なんなのだ?なんの音なのだ?」

「なんの音かしら..ウプイちゃん何か知ってる?」

変な音に戸惑う2人。




ウプイとメメイは怖がる様子を見せない。

「これはねぇ、父ちゃんが中に入ってる時に出る音だよぅ!」

山斬は辺りを探すと小さな直径2cm位の穴を見つけそこに耳を当てると音が大きくなった。

音源のようだ。

辺りを更に見るとそんな穴が至る所にある。




「何だ?この穴は?」

「さあ?何なのかしら?」

「ブォォーン!ブォォーン!.....」

そうこうしている内に音が止んだ。

そして小屋からはボラバンが出てきた。

本人には聞きにくくて、そのまま散歩は終わってしまった。2人は宿に戻り、就寝した。








ここまでの一日を時の鱗は記憶した。










8月4日午前7:00 1回目、2日目



「オオオオオオオオオオオ!!!!!!!!」

とてつもない雄叫びが聞こえると共に山斬は起きた!

どうやら他の仕事仲間も同じ理由で起きたらしい。

「皆んな!行くよ!先に言っておくけど、くれぐれも無茶はせずに僕たち2人に任せてね!」

声が聞こえたのは族長の家の方だった。












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