おじさんは異世界で企む
グレイから言われた情報の真偽を確認すべく、伝手を全て当たって情報を集めるとなんとも嫌なことが分かった。
結論から言えば、確実に私は連れていかれる。これは学院長から聞き出した情報なので誤りは絶対にない。
考えてみれば分かることだった。召喚獣とは一種のステータスなのだ。召喚獣の成果がそのまま召喚主に反映されるため、誰もが優秀な召喚獣を求める。
そして卒業式とは外部、主に親へ自分の召喚獣をアピールする機会。召喚から卒業までそれなりに期間が空いていたのは召喚獣の特色を理解し、どうアピールするか考えるため。
その中で公爵家の才女が召喚獣を連れていなかったらどう思われるだろうか。召喚獣を召喚出来なかったのか、召喚獣に難があるのか、それともウドのようにいるだけで邪魔なのか。
どれも良い印象を持たないだろう。それは絶対に避けたいはず。公爵家の才女も、公爵家も、そして学院長も。
私が学院長にすぐに保護された理由がこれだ。野垂れ死ぬことになれば公爵家に泥を塗る行為となるから、過度に手を貸さずに助けた。そして卒業式に連れて行かせて最低限の面子を保たせる。
事実を知ると腹立たしく思えてくる。
「おじさん、この肉うめえな。すげえピリピリするぞ」
「学院長ご自慢の植物園から引き抜いてきた。グレイに一応食用だと確認をもらっているから存分に食うと良い」
「トモダチ、それってカプサイシンが大量含まれていたあの植物? 千切ってひき肉に混ぜたんだ。一応、食用とは言ったけど」
「ああ! いてええ! 舌が変だ!」
怒りのまま植物園に生えていた唐辛子に似た植物をいくつか勝手に貰ったんだが、サラマンダーには好評のようだ。シャクドウは舌を出してえずいているが。
自分の分のひき肉に植物が入っていないか確認して口にする。サラマンダーはともかく、シャクドウであの反応。私が食べたら舌が弾けるかもしれない。
「学院長の植物園、ってことはあの話でもしてきたの?」
「ああ、グレイの話の確認のためにな。他にも色々と聞いたよ」
「あー、変だ。ん? 何の話だ?」
「卒業後の話だな」
全く、山に行った際に何の情報も得ていなかったことが悔やまれる。情報があればグレイがあの時に言っていたように前例を作り、召喚獣を残していっても成果を出すと前面に押し出してここに残れたのだが。
今はもう学院長の陰謀を暴いてしまったので、大きな行動を取れば必ず妨害されるだろう。学院長は問題を起こさないように注意して私を公爵家に渡せば責任を果たせるのだから。
「は? え? ちょっと待て。おっさんはここに残るんじゃないのか?」
「その予定だったんですがねえ、無理そうです。せっかく築いたコネクションを失うのは辛いものです。北の前線基地に行くようで、そちらの方面に知り合いはいないかと聞いて回ったりしましたが」
「おじさんは北か。俺は東なんだ」
「おや? サラマンダーと一緒ですか」
サラマンダーとケルピーは共に東で別方向か。自由に使える水と火を失いのは辛いな。北に話の分かる召喚獣がいると良いのだが。特に北は極寒の大地と聞く。サラマンダーのような暖房係は必須になる。
ちらりとグレイの方を見れば大丈夫と頷いてくれた。一緒に北に行くようだ。良かった。これでグレイとまで別方向だったら寂しさか寒さのどちらかで死んでいたかもしれない。
「何だよそれ、じゃあまた一人で退屈な日々かよ。つまんねえ。おっさん、何とかなんねえのか」
学院講師の召喚獣であるシャクドウはここに残ることが確定している。私がいなくなれば召喚主以外と会話も出来なくなり、以前のような待機するだけの退屈な日々に戻る。
特に今のような、騒いで暴れられる状況からとなればシャクドウの性格では地獄のような日々だろう。気持ちは十分に理解できる。しかし。
「無理ですねえ。学院長にも公爵家にも逆らえませんし、逆らっても勝算が皆無です。敵対的だとは思われないようにしなければなりません」
「じゃあトモダチは従順に従って北に行くの?」
「いえいえ、多少は抵抗させてもらいますよ? 私が健やかに生きるため。そのためにマイケルさんの方に人を紹介してもらって、小人にも依頼をしてあります。それと、グレイ。実は頼みたいことがありまして」
「ボクに出来ることなら何でも言って。トモダチの為だ」
「ありがとうございます。実は卒業式の際にですね――」
誰だって卒業後の準備をしているのだ。私も準備を始めないと。




