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異世界でも、お姉ちゃんに任せなさい!  作者: 佐々木 みこと
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第47話 追跡

先月は投稿できず申し訳ございませんでした。

そして、今月も月末になって申し訳ございません。


それでは、今回もどうぞよろしくお願いいたします。


すっかりと陽が落ちてしまった真っ暗闇の草原の中を三頭の馬が疾走しています。


ベルの町から北西に向かって出立したギンガー男爵一行を追跡している私達です。


先頭はギンガー男爵の息子でもあり、私の護衛でもある親衛騎士団長のハロルドさん。次に親衛騎士であり同じく護衛のアレンさんが追走し、『死神の巣』のガッシュさんは最後尾につけています。


私はまだ一人で馬に乗れないので、アレンさんの後ろに同乗し、落馬することのないようにアレンさんと腰の部分をベルトでしっかりと固定しています。もちろん私の優秀な弟である優斗が考案した鞍やあぶみなど『馬具』を完全装備している馬なので、アレンさんにしがみついている体勢を維持することができれば、よほどのことが無い限りは落馬しないと思います。


「―――追いつけるでしょうか?」


「大丈夫です! 馬たちが疲れた際、ミユ様の『癒し』を都度いただければ、明け方前には追い付くことができるはずです」


アレンさんの返事を聞いて少し気持ちが楽になりましたが、私の『癒し』は万能ではありません。外傷や体力回復に効果があることは、私が聖属性魔法を使用できるとわかった当初に判明しているのですが、最近になって風邪などの『病気』に対しては効果がないことが明らかになりました。


しかし、病人の体力を回復させることが、自身のあらかじめ持っている病気に対する免疫力(自然治癒力)を増加させることに繋がり、結果として病状が良くなることから、全くの無駄ではないことも証明されています。


この世界で崇拝されている魔法の始祖『女神アナーテ』が使用した聖属性魔法は、病をも癒したと伝えられているそうですが、残念ながら約5,000年前の話ということで、マリクさんでも何か手掛かりとなる資料がなければ再現実験も難しいとのことでした。


とりわけ、今問題となりそうなのは『喉の渇き』です。


(……水……馬の分を忘れちゃった)


そう、実は私の『癒しの魔法』は『喉の渇き』までは癒してくれないのです。


以前、優斗が『死神の巣』の襲撃を受けた際、アストリア侯爵領にいた私は、シュリさんやエリスさんと一緒に馬を走らせてカダイン伯爵領まで緊急帰還したことがありました。その際に、馬や搭乗者に『癒しの魔法』をかけながら移動したのですが、その時に『水』の問題があることが判明したのです。


運良くその時は、ちょうど街道沿いの村や町を通過する経路だったので大した問題とはなりませんでしたが、今回のような周りに何もない場合は気にしなければいけない事項かもしれません。


「アレンさん! み、水……馬に飲ませる水を忘れてしまいました!」


「えっ? ―――大丈夫です! この追跡経路の途中に大きな川があります。橋を渡る前に河川敷に下りて水を飲ませましょう。」


「良かったです……了解しました」


水の問題が解決し、ホッと胸を撫でおろした私ですが、その『川』に到着した時……新たな問題に直面することになろうとは思いませんでした。





◇◇◇◇◇◇◇◇




「えぇっ!! は、橋が無い!!!!」


あれから途中休憩を入れながら40分ほど進んだところで、アレンさんの言っていた大きな川に到着しました。川幅が50メートルほどあり、そこに橋がかかっていたそうなのですが、何者かに破壊された様子です。


「おそらくギンガー男爵一行が通過した後で破壊したのでしょう」


「な、なぜそんなことを……?」


「万が一、我々が男爵の意図を察知し、運搬命令を解除する使者を派遣した際の足止めのためでしょう」


ガッシュさんは、壊された橋の惨状を見ながら冷静に分析をしたようです。


目の前の川は、川幅だけでなく深さもあるみたいです。

一瞬、私の頭の中に「魔法で何とかなるのでは……」と考えが浮かびましたが、さすがにこれだけの規模の川を通行可能にするような大魔法は私には想像できません。


一度河川敷に下りて、馬に水を飲ませ、私達自身も休憩を取りながら今後のことを話し合いました。




そして―――――




「ミユ様、上流に向かって移動し、渡れるところを探しましょう」


「それが賢明でしょう……この川は、ここから下流へ向かっても我々が出発した『カダイン伯爵領中央街』のあたりまで変化はありませんので……」


ハロルドさんの提案にアレンさんも同意しました。

土地勘の無い私が口を挟むところではありませんが、念のためガッシュさんにも確認をとってみます。


「ガッシュさんはどう思いますか?」


「私もお二人の意見に同意します。上流に向かったほうが渡河地点までの時間を短縮できると思います。“時間が経てば経つほど男爵を救える可能性は低くなります”から……」


「えっ?」


私にはガッシュさんの発言の意味がよくわかりませんでした。

私達の目的は、ギンガー男爵に追いついて『運搬命令解除』を告知するという簡単なことではありません。


それでは、私達がギンガー男爵家に『裏切り行為』があったことを認知しただけとなり、根本的な解決にはならないのです。


私達が目指しているのは、彼を何とか説得し『二心ふたごころ』を抱かないように『改心』してもらうこと。そして『運搬命令』だけでなく、その行為自体も内々に隠ぺい処理をしてしまうことです。可能であるなら、昨日ギンガー男爵がベルの町に来訪したことすら隠してしまいたいくらいです。


「ガッシュさん……可能性が低くなるって?」


「ミユ様! 一刻を争います。急いで出立しましょう!」


私のガッシュさんへの質問はハロルドさんの言葉に遮られ、残念ながら彼に届くことはありませんでした……。




◇◇◇◇◇◇◇◇




2時間後――――――


川の上流へ向かって渡河地点を探して移動していた私達は、ようやく比較的川底の浅い地点を見つけることができ、無事に渡りきることに成功しました。


その後、ここでも馬に水を飲ませながら一時休憩をとり、再び追跡を開始します。


(……必ず……必ずハロルドさんのお父さんを救うんだ……)


ハロルドさんの父親であるギンガー男爵と親しいわけではありません。

でも、『戦術魔法具』を数個奪って、カダイン伯爵家が敗北した時に備える……そんな貴族としてはよくあるという『保険』なんかで悲劇を生んで欲しくはありません。

『裏切り行為』が領主にバレることによって、どんな罪に問われるのか私にはわかりませんが、ハロルドさんの様子を見るに、きっと“命”がかかったもののように感じます。


「ミユ様……遠くのほうに小さな光が見えるのがわかりますか? あの方角にギンガー男爵がいるという仲間からの合図です。もうじき夜が明けます……急ぎましょう!」


「はい!」


ガッシュさんの指差した方向を見ても、両目とも視力1.2ある私でも全く光が見えませんでした。しかし、ハロルドさんとアレンさんは頷いているので、こちらの世界の人は私達よりも目が良いのかもしれません。


それにしても『死神の巣』の方たちの能力に驚いてしまいます。男爵達の一行に紛れているのか、それとも気づかれないように尾行しているのかはわかりませんが……





◇◇◇◇◇◇◇




夜が明け、眩しい朝日が草原一帯を照らしはじめました。


私の視力でも前方に人の固まりが見える距離まで来たところで、前を走るハロルドさんの声が響き渡りました。


「前方!! 砂煙――――――!!」


その声を聞いて、最後尾を走っていたガッシュさんの馬が速度を上げて、私とアレンさんの乗る馬の横につけました。


「姉君様! 戦闘です………残念ながら間に合わなかったようです。いかがなさいますか?」


「えっ? ど、どういうことですか?」


彼の言ったことが理解できず、頭の中に『?』がたくさん出来ていますが、とりあえず私の成すべきことは変わりません。まだ戦闘が行われているところへは距離がありますから、疑問点は馬を走らせながらガッシュさんに聞けばいいだけです。


「ギンガー男爵を助けます!! アレンさん急いで!!」


「承知いたしました!!」


すでに物凄い速さで疾走しているハロルドさんの馬を追うように、私達も戦闘が行われている現地へ急行すべく馬を走らせたのでした。




◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



<追跡中のとある休憩地点にて……>


「ア、アレンさん……すみません。馬でたくさん揺られたせいか、お腹が……」


私がお腹をさすりながらアレンさんに声をかけると、彼は「わかっています」という感じで、ハロルドさんとガッシュさんのところへと小走りで伝達に行きました。


アレンさんの話を聞いた二人は、急いで私に背を向けてくれます。


(うん。これで良し!)


三人が私に背を向けたのを確認し、私は深い草むらの中へと入っていきます。




長いスカートをまくり上げ、モンペのようなズボンを脱ぎ、下着であるパンツも脱いでしまいました。そして下着は上着にある右の深いポケットへと押し込みます。


(えっ? なぜ下着を脱いでポケットにしまったか?)


それは……騎乗しているとすぐに“乙女の大切な部分”や、お尻にパンツがくい込んできて気持ちが悪いからです。


かぼちゃパンツのような形のものを履いてくればよかったと少し後悔……。



――――コホン!


と、とにかく、後はしゃがみこんで用を足すだけです。








(・・・・・・・・・・・・ふぅ………)



用が済めば後は自前の『水洗ステッキ』を使って、お尻と手を器用に洗います。

そして、用意していた古紙を使ってキレイにふき取りました。



「さて、この後はどうしよう………」



私の足元にあるのは、私が排泄した“汚物の塊”です。

水洗ステッキで水をかけてもどうにもならないので、少し考えた結果『火の魔法で焼却』することを思いつきました。


「あまり広範囲に広げると、草むらが火事になるからね!」


小声でささやきながら、高出力・高温度・高密度の火炎放射を行います。



ゴォォォォ――――――――――――――!!



茶色い塊に向かって魔法が降り注ぎます。


―――――しかし、予想外の結果が待っていました。



「きゃぁぁぁぁぁ!!   く、臭い~~~~~~~~っ!!!!」


予想外にものすごい悪臭が周囲に広がってしまったのです。

思わず大声が出てしまいました。


すると、その声を聞きつけてハロルドさん達が駆けつけてきます。


「どうしましたミユ様!!」

「魔物でも出ましたか?」

「姉君様! 何事ですか?」



三人は私の傍までたどり着くと、足元の光景を見て驚きの表情で固まってしまいました。


「こ、これは!!」

「……な、なんというか………」

「見事に、焼き固められましたな………」


――――そうなのです。


私が焼却しようとした“排泄物の塊”は見事なまでに焼き固められてしまい、陶器で出来た置物のようになってしまったのです。


(は、恥ずかしすぎる………)


顔を真っ赤にして狼狽えている私に対し、容赦なく三人が追い打ちをかけます。


「ミユ様、なぜ火を使ったのです? 事前に穴を掘るとか、土や草をかけておくとか色々と方法があったでしょう?」


(はい、その通りです。なんで思いつかなかったのでしょうか……恥ずかしいので今からでも穴を掘って隠れたいです。)



「聖女様の体内から出た『貴重な置物』ですか……我が家の家宝にしても?」


(ぎゃ~~~~~~! やめてくださいアレンさん!!!)



「ミユ様には、もっとユウト様の姉君としての『自覚』を持っていただかねば!」


(す、すみません。“恥ずかしい姉”と言われないように気を付けますから……)



最後のガッシュさんの言葉が、一番深く胸に突き刺さりました。



(はぁ………っ)



溜息をつきながら水洗ステッキを上着の右ポケットにしまいました。

その後、その場所を後にして、馬を留めてある場所へと移動し、再びギンガー男爵の追跡を開始したのでした。



この時、上着の右ポケットに無造作に入れた『水洗ステッキ』が美結にとって再び“優しくない結果”をもたらすことになるのですが、それはもう少し後になります……



ギンガー男爵一行と戦闘になっているのは何者なのでしょうか?

そして、美結達は無事に彼らを救うことができるのか?


次回 第48話を気長にお待ちくださいませ。


<読者の皆様へ>

いつも応援ありがとうございます。

頻繁に更新できず申し訳ございません。

評価・ブックマークがとても励みになっております。

今後ともどうぞよろしくお願いします。<(_ _)>

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