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異世界でも、お姉ちゃんに任せなさい!  作者: 佐々木 みこと
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第38話 魔王様からの贈り物(リアナ視点)

お待たせしました。前回、次回は短編「闇属性の少女達」を掲載する予定と書きましたが、時系列の関係で、先にこの話を更新させていただきました。

申し訳ございません。m(__)m


いつも応援ありがとうございます。それではどうぞご覧くださいませ。

私はリアナ(18歳)と申します。先日までカダイン伯爵邸付きのメイドという立場でしたが、今は幸運にもユウト様とミユ様のお二人に仕える『専属メイド』を拝命しています。もちろん私一人でお二人のお世話をすることはできませんので、同僚のカレン(19歳)も専属メイドに任命され、一緒にお仕えすることになりました。


私の出身はカダイン伯爵領の南、サーペント伯爵領に接している『ソール』という特色の無い小さい村です。唯一、他の村と違う点を一つあげるとすれば、村の一部で『岩塩』を採掘できる所があり、村人達はお小遣い稼ぎとして時折採掘をして、薬問屋に売っていることでしょう。


ところが、そんな『ソール村』が最近脚光を浴びるようになりました。他でもない、ミユ様が考案された『塩』を使った数々の料理が領内に広まり始めたからです。


海に面していないカダイン伯爵領にとって、領内で採れる『岩塩』は非常に魅力的な原料らしく、ソール村は村立以来、初めての好景気に沸いています。


そのため、両親は事あるごとに手紙の中に『大恩あるミユ様に誠心誠意お仕えするように』と書いてきますが……


(……ごめんなさい。私が一番に誠心誠意お仕えしているのは、ユウト様なの……。ミユ様は二番目だけど……許してね……)


……と、心の中で両親に謝罪しながら、『頑張ってお勤めしています』と両親へ毎回返信をしています。


ユウト様の専属メイドは、メイド達にとって羨望せんぼうまとです。神のように神々しく、かつ麗しく、そして天使のように可愛らしい容姿を持つユウト様……。更に私達下々の者にもいつも優しい心配りをしてくださる慈愛に満ちた美しい心……。女性であれば、心を奪われずに済むわけが無いと断言いたしましょう!


そんな誰もが羨む専属メイドになった私ですが、ラルフ村の別邸で過ごしていた頃から比べると、ユウト様との触れ合いの時間が極端に少なくなったことは腹立たしい限りです。


……というのも、当初は1名だった女性騎士の護衛が5名に増え、ミーナも側近候補として傍に仕えることになったからです。まして最近は、女性近衛騎士の方々がユウト様との『お湯浴び』を独占しているので、私達メイドがユウト様の肌に触れられるのは、朝のお着替えとお客様が来訪されるご予定前の身だしなみを整える機会しか無くなってしまいました。……本当に……本当に残念です!


また更に悲しいことに、近い将来『死神の巣』から『闇属性の少女達』が何人も来て、ユウト様のお傍に仕えることになると聞いています。


(ふぅ……ユウト様と別邸で過ごした頃に戻りたいです…)


ついそんな愚痴を心の中で呟いてしまいながら、日々充実したメイド生活を過ごさせていただいています。



◇◇◇◇◇◇◇



そんなある日のこと――――――――



「ミユ様に贈り物……ですか?」


「うん。いつも元気なお姉ちゃんが、最近とても疲れているみたいだから……何か“癒し”になるような物でも贈れたらと思って……」


ユウト様がその可愛らしい黒い宝石のような瞳で私を見つめてきます。

私との距離は1歩半……思わず抱きしめてしまいたい衝動にかられますが、私のすぐ隣には同僚のメイドであるカレンもいますし、ユウト様の斜め後ろには最近護衛となった『死神の巣』のソアラさんもいらっしゃるので、ここは理性を維持するしかありません。


(う~ん……ミユ様に贈り物ですか……)


確かに最近のミユ様はご多忙でお疲れのように見受けられます。毎日の日課である魔法の訓練や戦術魔法具への魔力注入のほか、マリク様から宿題として課せられている『食料問題』に頭を抱えていらっしゃるようです。


先日の軍事演習の際、アストリア侯爵領から『小麦』という植物を石臼で挽いて作った『小麦粉』が大量に届きました。ミユ様は、それを用いて様々な料理を考案されたのですが、どうしても『軍隊用の携行食料』に適した料理が作れずに悩まれているようなのです。


(ユウト様に何とご返事すればよいかしら……)


私がミユ様への贈り物について良案が浮かばずに悩んでいると、隣にいたカレンは何か思いついたのか、一回胸の前で軽く手を叩くと笑顔でユウト様に声を掛けました。


「ユウト様! それでは“私と”一緒に中央街のお店を巡ってみませんか?」

「えっ!?」


カレンが予想だにしない事を口走ったので、思わず声を上げてしまいました。


(ちょっと、ちょっと! カレン……“私と”って何よ!)


カレンの図々しさに、心の中で激しく非難の言葉が溢れ出ますが、ユウト様の前では常に『有能なメイド』を印象付けたい私は、急いで心を落ち着けることに努めます。



「ふふっ…カレン、ユウト様と二人でお出かけなど出来るわけが無いではありませんか。ユウト様は大切なお方。護衛の方を外すことなど出来るわけがありません」


「そんなことは判っています。私が言いたいのは、今日の午前中なら護衛の方を入れても『少ない人数でお買い物が楽しめる良い機会では?』ということです」


「………あっ!」


確かにカレンの言う通りです。今日の午前中は、レイシア様をはじめとする女性騎士の方々は軍の用事で護衛の任務に就けないとおっしゃっていました。そのため、今日のユウト様は久しぶりの休暇ということで、朝からお出かけにならずお屋敷にいらっしゃるのでした。


「で、でもレイシア様は何かあると危ないので、外出は控えるようにと言っていましたよ!」


内心はカレンの提案に心を惹かれつつも、ユウト様の安全と引き換えには出来ません。無意識に護衛であるソアラさんのほうへ視線を移しながらカレンに反論します。


すると…


「二人とも……護衛なら私一人でも十分です。ユウト様にとっても久しぶりの休暇ですから、ユウト様が望むなら外出しても私はかまいません」


「「 !!!!!!!!!! 」」


ソアラさんの意外な言葉に私とカレンは一瞬言葉を失いました。


(ソアラさん……素敵!!)


思わぬソアラさんからの後押しに、ユウト様に見られていることも忘れて、カレンと手を取り合って喜びを表現してしまいました。


そうです……ソアラさんは強いのです! 『二つ名』を持つレイシア様やシーリス様には及ばないそうですが、騎士の方が複数人でかかっても相手にならないくらい腕が立つと聞いています。これほど心強いものはありません。


………というわけで、護衛面での不安が無くなった私達は、さっそくユウト様をお誘いすることにしました。


「それではユウト様。護衛の件はソアラさんの了解も得られましたので、さっそく4人で出かけましょうか」


「5人ですけど!!」


「「「「 えっ? 」」」」


予想外の言葉に声がした方向を振り返ると、濃いグリーン色の髪をツインテールにした少女がこちらを冷ややかな目で見つめていました。


「ミ、ミーナ…」


「私がちょっと席を外した隙にユウト君と買い物に出かけようなんて酷い仕打ちじゃないですか?」


「そ、そんなこと……きちんとミーナも連れて行くつもりだったのよ……」

「そうそう!」


ミーナの得意な『毒舌攻撃』が始まらないように、私とカレンは慌てて弁明します。ユウト様も頬を膨らませるミーナをなだめてくれたので、それからさほど時間もかからずに中央街へと出発することができました。



◇◇◇◇◇◇◇



カダイン伯爵領の中央街は、カダイン伯爵邸から真っ直ぐ南に1キロメートルある大通りを中心として、縦横に道が張り巡らされています。ほぼ格子状になっている道なので、方位さえ間違えなければ迷子になることはありません。


また、大通りに面しているのが大きい店舗や宿泊所となっており、大通りから離れるにしたがって、食料品街、衣料品街、雑貨店街、工房街となっています。飲食・居酒屋関係は基本的には各通りの角地に配置されています。


「ユウト様、まずはこちらのお店からいかがでしょうか?」


そう言って私が案内したのは、大通りに面した場所にある領内では有名な大店です。食料品から衣料品、雑貨に至るまで、目的の物の大半はこの店で揃うと言われているくらい大きな総合店舗です。


私個人としては、『恋人』との逢瀬のように、ユウト様を連れて大通りから離れた各種専門店街を散策しつつ、露天で美味しいものを買って食したり…としたかったのですが、今回のユウト様の目的は『ミユ様への癒しとなる贈り物』なので、午前中という限られた時間の中でご案内するのであれば、色々なものを一度に見られる総合的なお店が良いのではと判断しました。


「うわぁ~! お店の中けっこう広いね!」


ユウト様が驚いた表情で店内をキョロキョロと見渡しています。


「このお店ならミユ様に喜んでいただける商品が何かしら見つかると思います。よろしければ店員を呼んで案内させますが……」


「え!? い、いや大丈夫だよ! まずは自分で店内を一通り見て歩きたい」


「はい、承知いたしました」


(ユウト様とお買い物♪ ルルルンルン♪)


これで他の三人がいなければもっと素敵な時間になるのに……などと考えながらも心が弾み、楽しい気持ちが溢れ出して止まりません。



しかし、しばらく5人で店内を一緒に回ったところでユウト様が大きく溜息をつきました。


「ふぅぅ―――っ」


「ど、どうしましたか?」


一番近くにいたカレンがユウト様の溜息に即座に反応しました。


「うん……。お姉ちゃんが喜びそうなもの……こうして見て歩いても中々思いつかなくて……。みんなはどんな物をもらうと嬉しい?」


ユウト様が私達4人を真剣な表情で見つめてきます。


(……私はユウト様が一日一緒に過ごしてくれるだけで満足だけど……そんな答えは出来ないわよね……う~ん……)


そんなふうに私がユウト様への返答に悩んでいると、ミーナ・カレン・ソアラさんの三人は……


「ユウト君からもらえる物なら、何でも宝物だよ!」

「ユウト様と二人だけで出かけられたら最高だと思います」

「剣術の訓練の後、一緒に『お湯浴び』が嬉しいですね」


などと、恥ずかしげも無く次々と答えてゆきます。


その返事を聞いて、ユウト様は「よくわからない」と困った表情をしており、まだ返事をしていない私のほうをチラリと期待を寄せる眼差しで見つめてきました。


何やら今、私の発言はかなり『責任重大』になっているのでは…と手に汗をかきながら、必死に考えた言葉を紡ぎ出します。


「ユ、ユウト様。ミユ様はきっと…ユウト様の『優しい気持ち』を一番喜んでくださると思います。形あるものでなくても大丈夫だと……私は思います。」


(……ど、どうかしら? 結局、具体的には答えられなかったけど……)


ユウト様の期待に添える返答が出来なかった事に落胆していた私ですが……


「うん。そうだね! 『形あるものでなくても』…だね。わかったよ! リアナ、ありがとう!」


思いがけず、ユウト様から感謝の言葉をいただくことが出来ました。



その後、ユウト様は晴れやかな顔になり、何かを思いつかれたのか、店内で厚手の紙と筆記用具、色を塗る道具をいくつか買われて帰宅されたのでした。



◇◇◇◇◇◇◇◇



帰宅後………ユウト様は自分のお部屋に籠られて、買ってきた品物をテーブルに広げて何やら作成を始めました。時折、お茶やお菓子を持参する際に、何を作られているのか伺うのですが、「まだ内緒…」と言って教えてくださりません。


ユウト様は買ってきた厚手の紙を四角く手の平くらいの大きさに切り、私のわからない文字(おそらく異世界の文字)を書き、色を塗って装飾されているのですが、用途が全くわかりません。


(ミユ様への贈り物のはずだけど……)

(あのような物でミユ様がお喜びになるのかしら?)


カレンと一緒に首を傾げてしまいます。


それから昼食後にレイシア様達、護衛騎士の皆様がお戻りになり、ミユ様達も休憩のために一度お部屋にお戻りになると、ようやくユウト様が自身の部屋から出てまいりました。手には作成した紙の束を持っています。


「お姉ちゃんたちは?」


「はい。今は食堂でお茶を飲みながら休憩されていらっしゃいます」


「わかった。それでは食堂へ行こう!」


護衛騎士の方々に前後を挟まれるようにして、ユウト様と食堂へ移動します。




「あら、優斗。どうしたの?」


ミユ様がユウト様の来訪に一早く気が付きました。

自分が座っている隣に来るように招いています。


「ありがとう、お姉ちゃん。………今日はお姉ちゃんに僕からプレゼントを渡そうと思って……」


「プレゼント?」


どうやら異世界では『贈り物』のことを『プレゼント』と言うみたいです。



「うん。最近お姉ちゃんがとても忙しそうだから、僕に何か出来ないかと思って……こんな物を作ってみたんだ」


そう言ってユウト様は、ご自身で作成された紙の束をミユ様に全て手渡しされました。



「………マッサージ券?」



(???)



『まっさーじけん』とは何でしょうか? ミユ様が漏らした言葉に、全く思いつくものが無く、思わず周りを見渡します。



(・・・・・・・・・・・・・・・)



……どうやらミユ様の護衛もユウト様の護衛も、誰一人わからなかったようです。



ほんの少しの静寂の時間の後、レイシア様だけが素早くお二人の近くに歩み寄り、声を掛けました。


「あ、あの! ミユ様、お話し中のところを申し訳ありません。……その『まっさーじけん』という物は何でしょうか?」



(レイシア様、ありがとうございます)



レイシア様の質問はこの部屋にいる誰もが聞きたかったことなので、私と同様に心の中で感謝している方が多いようです。「うんうん」と皆さん頷いておられます。



「マッサージ券は、身体を揉んでくれる回数券のことだけど……」



「「「「「「「「 か、身体を揉む!!! 」」」」」」」」



この部屋にいる女性全員の声が重なって響きました。

質問に答えたミユ様が、私達の反応に目を見開いて驚いています。


「ユ、ユウト様が……その……身体を揉んでくださるわけですか?」


再び女性陣の代表で、今度はユウト様に問いかけるレイシア様ですが、少し目が怖くなっています。


「うん。最初は『肩たたき券』にしようと思ったのだけど、それよりは色々な所を揉んであげられるほうが良いかと思って……」



「「「「「「「「 色々なところを揉む!!! 」」」」」」」」



「うわっ!」


私達の重なった声が、今度はユウト様を驚かせてしまいました。

……でも、私ももうそんなことに気を使っていられなくなってきました。


「な、なるほど……、その『マッサージ券』というのは、使用すると、ユウト様が身体の色々なところを揉んでくださるという『夢のアイテム』ということですね」


マリーカ様が冷静に分析したかのようにお話しされていますが、顔が赤く、目が血走っているように見受けられるのは気のせいでしょうか。


「そ、それは、どこで行うのですか? 使用期限などは?」


シーリスさんが上気しながらユウト様に問いかけます。再び皆が「よく聞いた!」と言わんばかりに頷きあっています。



「ソファーとかベッドとかで横になってもらったほうがいいかな? 使用期限は特に無いけど…僕の身体が空いている時ならいつでも大丈夫だよ」



「「「「「「「「 !!!!!!!!! 」」」」」」」」



(ほ、欲しい! 欲しいです『マッサージ券』! ……どうすれば!)


私の頭の中にそんな欲求が湧いてきた頃、ユウト様が更にトドメの一言を発せられました。



「僕、お姉ちゃんが『気持ちいい』って言ってくれるまで、頑張って揉むから遠慮なく言ってね!」


「ありがとう優斗……」



「「「「「「 !!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!! 」」」」」」



ミ、ミユ様がどうして平然としていられるのかが全くわかりません。

姉弟だからでしょうか? 姉弟だからでしょうか??


私は今、ものすごく身体の火照りが……どうしようもなくなっています!!


だって………

だって……………ユウト様が、


『気持ちいい♪』って『イッてくれるまで頑張って揉む』から、『遠慮なくイッてね!』と発言されたのですよ―――――――――っ!!!



周りを見渡せば、まだお子様のミーナとライナ様以外の女性は、私と同様に少し身体をモジモジと動かして何かに耐えているように見えます。身体が熱いです。どうしましょう……本当にユウト様は『魔王』様です。……言葉だけで私達だけでなく、『二つ名』を持つレイシア様・シーリス様までが撃沈してしまいました。


かろうじてレイシア様が、際限なく早くなる胸の鼓動を沈めながらミユ様に言葉を発しました。私達にとって、とても重要な一言を………


「ミ、ミ、ミユ様………その、マッサージ券を何枚かお譲りいただくことは………か、可能でしょうか?」





(…………ゴクリ………)





レイシア様の質問にミユ様が答えるまでの間、おそらく数秒も無かったはずですが、その場にいた私達にとっては、とても長い時間に感じられました。





「えっと………10枚あるから、1、2枚なら欲しい人にあげてもいいですよ」



「「「「「「「「 !!!!!!!!!!!!!!!!!! 」」」」」」」」



その一言に、女性の護衛5人とミーナ、そして私達メイド2人の火花が散りました。どうやらこの後は『マッサージ券』を巡る『女の戦い』が勃発すること確定です!


それが更にミユ様を疲れさせることにつながり、ユウト様を落胆させることになるとは、この時の私達女性陣は全く頭から抜け落ちていたのでした………。



ブックマーク、評価ありがとうございます。

読者の皆様の応援を励みに頑張りますので、

引き続きよろしくお願いいたします。

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