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異世界でも、お姉ちゃんに任せなさい!  作者: 佐々木 みこと
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第29話 襲撃! そして・・・(シーリス視点)

大変お待たせ致しました。

レイシア不在のユウト達に暗殺者が迫ります。


シーリス視点で描きました。

(さ~て! 今日もレイシア様がいないので、ユウト様との“お湯浴び”が楽しみです!!)


軍施設からエクレール邸への帰り道、ユウト様と一緒の馬車に揺られながら、今夜の“お楽しみ時間”への妄想が膨らみます。


私達二人が乗る馬車の周りを護衛しているのは6名。ミユ様の専属護衛である親衛騎士長のハロルド様、同じく親衛騎士のアレンさん、ビリー、エミール、そして私と同じユウト様の専属護衛であるマリーカとライナです。


マリク様とミユ様、レイシア様の一行がアストリア侯爵家へと出発したことで、ユウト様の護衛戦力に不安があることから、ミユ様の護衛全員がユウト様に合流したというわけですが、今のところ『暗殺者』の気配は感じることなく、平穏な日常を過ごせています。


(マリク様達が出発してから3日か…)


おそらく明日の朝頃には、アストリア公爵家に到着すると思われますが、できるだけ遅く帰ってきてほしいと願ってしまいます。なぜなら、私を含めこちらに残った女性近衛騎士にとっては、夢のような毎日が続いているのですから…。


『ユウト様とイチャイチャし放題!! しかも、レイシア様不在!!』


朝昼晩の食事の際の「あ~ん♪」に、剣の稽古、その後の水浴びと、夜のお湯浴び、それから寝所の護衛任務……ユウト様の恥ずかしがる仕草に「キュン!」としながら幸せな時間を過ごせるのですから…。


今夜も『くじ引き』で勝った女性近衛騎士が3名、エクレール邸に先行し、お湯浴びの準備をしてお出迎えする段取りです。最近はユウト様が、私達の裸を見て恥ずかしがる様子に加えて、ご自身の下半身の“違和感”を必死で隠そうとしている様子も可愛らしくて、その場にいる皆で悶絶してしまいそうになります。


(うふふっ……ユウト様……)


ここ数日のユウト様との素敵な時間を思い出し、つい頬が緩んでしまいますが周囲への警戒は怠っていません。その証拠に、馬車の中からではありますが、時折マリーカとライナが馬車内の私達の様子を伺っているのがハッキリと感じられます。


(二人とも私達の会話が気になるのね…でも、今日は私の番ですからね!)


ユウト様と楽しい会話を続けながら、馬車はエクレール邸へと向かって進んでいきました。


◇◇◇◇◇◇


馬車が軍施設の敷地外に出てから市街地を抜け、市街地とエクレール邸のちょうど中間地点、小さな川を渡った先は、左右に雑草が生い茂る広い草原になっています。その見通しが悪い場所をあと少しで通過するといった地点で『それ』はやってきました。


(……来た!!!)


不審者の存在に気が付いた私はすぐに席から立ちあがり、いつでも外に出て応戦できるような姿勢を取ります。続いて外から漂ってくる気配に感性を研ぎ澄ませ、敵の情報を少しでも多く収集していきます。


(人数は…1、2、……5人)


馬車の中に居たせいなのか、それとも敵が気配を消すのが上手かったのか、普段よりもその存在に気付くのが遅くなった自分の未熟さに唇を噛みしめながら、敵の人数を把握しました。悔しいことに、馬車へかなり接近を許してしまっています。


コンコン!


親衛騎士長のハロルド様もようやく敵の存在に気が付いたのか、こちらに知らせるために外から馬車の扉をノックしてきました。


(もう! こちらが先方の存在に気付いたことがバレバレじゃないですか!)


ハロルド様からの不要な合図に少し口を尖らせながら、とりあえず「了解です」と返事を返します。


(さて…敵は5名、こちらは7名……よし!)


敵は5名とも『手練れの暗殺者』に違いありません。そして、その内の二人は私と同じくらいのレベルでしょうか? おそらく、こちらが気付いたことで故意に気配を隠すことを止めて闘気で威嚇しているのでしょう。


(そう…、もう隠れるつもりは無いということ…)


「御者さん、馬車を止めてください! 全員訓練を思い出して二人一組で応戦しましょう。ハロルド様とエミール、アレンさんとビリー、マリーカとライナで必ず一人を仕留めてください。私が相手の強者つわもの二人を相手します!」


そう馬車の中から全員に聞こえるように指示を出すと、ユウト様に声をかけます。


「ユウト様、ご安心ください。各組が着実に相手を仕留めれば、無事に切り抜けられます。それまで、少しの間馬車内でお待ちくださいませ。行って参ります!」


そう言ってニコリと微笑みましたが、ユウト様の不安そうな顔を解消することは出来ませんでした。


(……早く片付けて帰ってこないと!)


そう自分に気合いを入れて馬車の外へと出て行きます。すると先方もぞろぞろと私達を囲むように姿を現しました。こちらが察知した通り、暗殺者は5名。全員覆面をしているので人相はわかりませんが、30~50歳代の成人男性が3名、20歳より前と思われる男女が2名です。私の感覚では、後者の若い男女のほうが手練れのようです。


(一対一なら勝てるとは思うけれど、二人相手だと厳しいかしら……)


私が相手をしようと決めている若い男女は、覆面をしているため顔は見えませんが二人とも灰色の髪をしていて、男のほうは身長175cmくらい、やせ型で身体に密着したような黒い服装を着こんでおり、筋肉で引き締まっているのがわかります。


女のほうは、身長170cmくらい、こちらも身体に密着した茶色の服装を着こんでいます。腰と足首の左右に黒塗りの小さいナイフが装着されているのがわかります。胸は私よりも大きいみたい…しかも身体の線が出ていて、かなりエッチな雰囲気を醸し出しています。


「あなた達二人の相手は私です!」


私がそう宣言すると、


「そうでなくては困ります。『ブレアウッドのシーリス』の力、見せてもらいましょう!」


「こちらの勝ちは決まっている……そして『命令』だから命までは取らない。子供を渡してくれれば痛い目を見ないですむが…」


(くっ!!)


彼我の戦力状況を示された上に、“命は取らない”というハンデ付きに、さすがの私もカチンときました。しかし冷静さを失っては、さらに不利になってしまいます。あまり余裕はありませんが、周囲の戦力を分析してみます。


①ハロルド様+エミール VS 長身で短槍を持った男(30歳代)

②アレンさん+ビリー VS 筋骨隆々でメイスを持った男(50歳代)

③マリーカ+ライナ VS 小柄で身軽そうな双剣を持った男(30歳代)

シーリス VS 長剣を持った若い男+短剣とナイフを持った若い女(どちらも20歳より前)


う~ん…、ハロルド様の組か、マリーカの組が早く勝利して他方へ援軍出来るかどうかが勝利の鍵ですね。戦力的に不安なビリーがいる組と、強者つわもの二人を相手にしている私がどれだけ耐えられるかもポイントです。


しかし、相手に手加減された状態で、騎士二人が暗殺者一人を相手にするのですから、ビリーにも頑張ってもらいたいと思います。


とりあえず皆を信じて目の前の敵に集中しなければなりません。

私はゆっくりと愛用のレイピアを抜き正面に構えました。


「さて、それでは始めましょうか!」


シュッ!!


私の掛け声とほぼ同時に、正面にいる女が素早くナイフをこちらへ投げ、私の側面に回り込みます。男のほうは素早く間合いを詰めて迫ってきました。


私はナイフを最小限の動きでかわすと、続いて前方から斜めに振り下ろされた男の剣を受け流します。


カキ―――――――ン!!


すると、間髪入れずに今度は私の側面に回り込んだ女からの剣が斜め下から切り上げられました。


ヒュンッ!!


それを地面に片膝をつく位にまで身を屈めてかわすと、素早く地面を蹴って二人に挟まれない位置まで跳び抜けました。


(速い! そして連携が並みではないわね…)


二人の息の合った攻撃と速さに身が引き締まります。しかし、相手は最初から殺気がなく、あくまでも『私の無力化』を前提に力を抑えて戦っているようで、レイシア様の訓練と比べれば天と地ほどの差があります。


(これなら、いける!)


呼吸を整えながら、再びレイピアを構え直します。二人は再び私を挟み込むような位置取りをするために動き出しました。


(させない!!)


ここからは優位な位置取りの奪い合いです。私は常に一対一が形成されるように素早く間合いを詰めて攻撃します。一方、二人は私を挟み込むために常に一人が私の背後に回り込もうと努めています。


そんな攻防も、素早さでは風の魔力を有している私のほうに分があります。ここが森林であれば得意な空中戦も出来て更に優位に戦えるのですが、ここは雑草が生い茂る草原なので空中戦はかえって命取りになります。しっかりと地面を蹴るようにして加速し、徐々に攻撃のテンポを上げていきます。しかし…


「ハッ!!」


キンッ!


(くっ! 投げナイフ…)


こちらが移動と攻撃の速度を上げて行くと、それを中断するかのように投げナイフが女から放たれます。それによって私がせっかく上げたスピードがリセットされてしまうので、あと一歩相手に攻撃が届きません。


(あと少しで攻撃が届くのに…。それなら、先に女を片付けるか…)


そんな思考を巡らせていると、遠くから聞きたくない声が聞こえてきました。


「ビ、ビリー!! しっかりしろ!!」


アレンさんから発せられた言葉に隙が生まれない程度にチラリと視線を移すと、驚くほど早くビリーが暗殺者に気絶させられていました。


(う、うそでしょ!! ビリー…あなた一応、親衛騎士よね…)


前方の二人を相手に優位にことを進めている最中、総合的な敗北を匂わされることになり、悔しさが込み上げてきます。


(と、とにかく素早く二人に勝利するしか…)


全身に一度、風の魔力を流し気合いを入れると、全力で二人のほうへ向けて切り込んで行きます!


「ハァ――――――ッ!!」


次々とレイピアの斬撃を二人に向けて放っていきます。

もちろん、今の目的は女のほうを先に仕留めること。しかしそれが察知できないように攻撃を二人に散らしていきます。


シュッ! シュッ! キンッ カキ――ン!!


「クッ!!」


「そ、そんな…」


二人とも最初の想定とは異なり、私のほうが有利に戦いを進めていることに動揺を隠しきれていません。


「悪いけど、今のあなた達では私には勝てないわ!」


故意に相手を挑発する言葉を相手に投げかけながら、私はレイピアを振るう手を休めることなく、徐々に二人を追い詰めていきます。


そしてついに私の攻撃が女の身体を捉えました。


「もらった!! そこ!!!」



ガツンッ!!


(!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!)




「グッ………………そ、そんな……」


私の放ったレイピアが女の首を突き刺したかと思われたその時、何者かが私の左脇腹を強烈な一撃で打ち据えました。


「!! ガ、ガッシュ!!」


「す、すまねぇお嬢、若…あまりに見ていられなくて…」


どうやらビリーを倒した50歳代の暗殺者が二人の援護に来て、私にメイスで攻撃を加えたようです…。全く意識していなかった相手からの攻撃だったので、事前に身構えることもできずクリーンヒットされてしまいました。


激痛をこらえながら周りを見渡してみると、ビリーだけでなく、ハロルド様、アレンさん、エミール、そしてマリーカやライナまでがすでに無力化されており、他の暗殺者に手足を拘束されています。御者も同様に気絶させられているようです。


「くっ……こ、これが『死神の巣』の力量というわけね…」


鎧のおかげでいくらか腹部のダメージが減少し即死は免れましたが、それでもダメージは甚大です。内臓のどこかが破裂したのか、先ほどから口や鼻へと体内で溢れ出た血が逆流してきます。


「ごふっ…、ぶふっ…」


口と鼻から血が溢れ出し、だんだんと身体中から力が抜けてきました。もう立っていることもままならず、私の意志とは無関係に腰から地面へと崩れ落ちます。


ガシャッ!


私の鎧が地面に鈍い音を立てました。視線を胸元にやると、赤黒い血で私自慢のレイシア様と同じ純白の鎧が台無しです。


(あぁ……情けないなぁ……こんな形で終わるなんて…)


身体が言うことを聞かなくなって自らの死を意識し、心が折れそうになった瞬間、私を呼ぶ声が聞こえました。


「シーリス!!!!!!!!!!」


(ユ、ユウト様!?)


ユウト様が馬車の中から飛び出して、一心不乱に私へと駆け寄ってきます。暗殺者達もすでに決着したと考えているのか、ユウト様に手を出すことなく様子を傍観しています。


「シーリス!! ひどい怪我だよ…どうすれば? 僕にできることは?」


青ざめた顔で必死に私の身体を支えながら声をかけ続けてくれます。


(ありがとうございます。…ユウト様にできること……私にできること……!)


ユウト様のおかげで意識が再びハッキリした私は、たった一つ最後に出来ることを見出しました。


「ユ、ユウトさ…ま…。ひ…と…つお願い…できますか?」


「なに? 何でもするよ! だからしっかりして!!」


「わた…しに残され…ている力……は、ユウ…ト様を抱え…て軍施設ま…で逃げ込めるか…どう…か…です」


「ほ、本当に? そんな力が?」


「まだ魔力…が、たくさ…ん……だいじょうぶ…です…」


そう言って出来る限りの笑顔をユウト様に見せました。そして、ユウト様に出来る限り魔力を集めてもらい、それを私達の足元にぶつけて爆発させることをお願いしました。その爆炎に紛れて軍施設まで逃げるのだと…。


そして、ユウト様が心配されていたので、暗殺者に私達を殺害する意思がないことを伝え、残された護衛の皆を心配しないように諭しました。


「わかったよ! シーリス、急いで軍施設へ脱出して治療しよう。それから必ず護衛のみんなを助けに戻ってこよう!」


「は…い。かな…ら…ず」


ユウト様の前向きな意気込みに、私も血が溢れ出る口を何とか動かして返事をします。そしてユウト様に心の中で謝罪します。


(ユウト様…すみません。シーリスは嘘をつきました。)


私に魔力は残っていても、ユウト様を抱えて軍施設まで逃げ込めるだけの体力など残っていません。私に出来るのは、ユウト様が魔力を使って爆発を起こしてくれた後、ユウト様を当て身で気絶させ、近くの茂みに隠してあげることくらいです。


その後、私の残っている魔力を体内で爆発させれば、私とユウト様が一緒に爆死したように勘違いさせられるかもしれません。…今はそれに賭けるしかないのです。


(ユウト様、短い間でしたが、私に幸せな時間をありがとうございました。)


心の中でユウト様にお別れをすると、ユウト様の手を握って私の前に立つように促します。ユウト様は『脱出作戦』の開始と理解して私の前方に仁王立ちし、両手を天高く掲げます。


「ハァァァァァァァ――――――――――!!!!!!!」


ユウト様が掲げた両手の上に魔力が次々と溜まっていきます。


「なっ! 小僧!! いったい何を?」


「まさか! こんな子供が魔法を?」


暗殺者達が驚きの声を上げていますが、その間もユウト様の魔力は溜まり続け、徐々に大きさを増していきます。


そして、その魔力が突然『銀色』に光り輝きました!!

するとユウト様の身体全体から溢れ出るように『銀色の光』が発せられ、辺りを幻想的な光で覆っていきます。


「「「「「!!!!!!!!!!!!!!!!!!」」」」」


「わ、若!!」

「ぎ、銀色の魔力…!!」

「嘘よね…?」

「お嬢! でもあれは間違いなく…」

「・・・・・・・・・・・」


鮮やかに光り始めたユウト様と『銀色の魔力』に暗殺者達は…いえ、私も驚きを隠せません。私達は時間が止まったかのように、その光を見つめ続けました。


ユウト様がその光を地面に叩きつけるまで―――――――――――――


ユウトが発した『銀色の魔力』に全員が釘付けです。

この後の展開にこうご期待です。


読者の皆様、いつも応援ありがとうございます。

頻繁に更新できずに申し訳ありません。m(__)m

ブックマーク、評価もありがとうございます。

とても嬉しく励みにしています。

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