第22話 二人の処遇と今後の予定
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皆が驚くクリティーナ様とは…?
今回は会議の続きからスタートです。
よろしくお願いいたします。
(……クリスティーナ様?)
優斗を除く会議室内の全員が、金髪のカツラをつけ、ドレスで着飾って化粧をした私を驚愕の顔で見つめています。何が起こったのか全くわからない私は、入口に一歩入った位置から動くことが出来ず、ただ立ち尽くしていました。
「ま、まさか…ミユが、クリスティーナ様そっくりになるとは…」
「化粧と言うのは、ここまで変わるものなのか?」
「向こうで別人に入れ替わったのでは?」
(し、失礼な!!)
本人を目の前にして、ずいぶんと失礼な発言をしている人達がいる中で、好意的な感想を言ってくれる人もいます。
「ミユ様は、元々の素材が良いのですわ」
「仮にも、ユウト様の実の姉ですからね…」
「聖女の神々しさが、さらに増しましたね!」
皆に色々な感想を言われていますが、私が一番感想を聞きたい相手は、もちろん優斗です。優斗は会議室の入口から一番遠いマリクさんの斜め後ろに座っているので、そこまで歩いていかなければなりません。ドレスの裾を踏まないように気をつけながら、ゆっくりと歩みを進めます。その間に一番の疑問点を尋ねることにしました。
「えっと……皆様…『クリスティーナ様』とは、いったい誰なのですか?」
私の問いかけに、ゼガートさんが一番に答えてくれました。
「クリスティーナ様は、2年前の政争で亡くなられたリゼル・アストリア宰相の娘で、前アストリア侯爵・アルフレッド様が最も可愛がっておられた孫娘にあたる…。味方諸侯の中で彼女を知らない者はおるまい…」
「そう…彼女は10年前に17歳の若さで流行り病により急逝され、アルフレッド様は、その衝撃から立ち直れず……宰相の地位も侯爵家も、長男のリゼル様にお譲りになって引退なされたという経緯があります」
ゼガートさんの回答に引き続き、マリクさんが補足をしてくれました。
「そして、マリク様が幼い頃に憧れていた方でもありますな…」
「ジェームズ! 余計な事は言わなくてよい!」
おっと…意外な情報が出てきました…。でも興味がないのでパスします。
(う~ん…。でも、それって…ドラマや漫画でよくある展開ですよね…。)
亡くなった人にそっくりな人物が現れるというベタな展開……。私がその張本人だなんて、あまり実感がわきませんが、面倒なことになりそうな予感だけはしています。私の中で不安感がジワリと広がっていきますが、優斗にはそんな姿を見せるわけにはいきません。優斗の傍までたどり着いた私は、ニッコリと笑って話しかけます。
「どう? 似合う?」
「うん! すごいね! お姫様みたい」
満面の笑顔で誉めてくれる優斗を見て、不安な気持ちは一瞬で消し飛びました。
「ありがとう。でも…こんな豪華なドレスを着るのは初めてだから…変じゃない?」
「そんなことないよ。いつもお姉ちゃんは僕のことばかり気にして、自分の着るものは、ほとんど買わないでしょ…。もっとお姉ちゃんは、お友達みたいにオシャレしても良いと思うよ」
(な、なんと…そんなふうに、私のことを気にしてくれていたなんて…)
いつの間にか、大人の発言をするようになった優斗に驚きつつ、頬が熱くなってしまいます。照れます…お姉ちゃんは、照れてしまいます……。
(ゆ、優斗…)
照れるのを我慢して、じっと優斗の瞳を見つめると、優斗も私のことを見つめ返してくれます…。私達の周りにとても良い雰囲気が漂い始めましたが……その直後、その雰囲気が台無しにされてしまいました。
「う~ん……胸のあたりがもっと豊かであれば、さらに似ているのですが…」
(!!!!!!!!!!!!! こ、この変態魔術師!!!)
マリクさんの一言で数名が「ふふっ…」と笑いをこぼします。私は、せっかくの雰囲気が台無しにされたのに腹が立ちましたが、今は会議の最中なのを思い出し、グッと堪えて、ふくれっ面で優斗の隣にドスンと腰かけました。
「うむ……。ミユの変貌には驚かされましたが、アストリア侯爵家への養子の件…可能性が高まりましたね。クレインはミユとユウトにかかる追加予算の捻出をお願いします。カトリーヌはアルフレッド様の周辺を調査し、円滑に事が運ぶにはどうすればよいか、情報を集めてください」
「難しいですが、何とか致しましょう…」
「黒い髪のカツラの件も含めて、調査はお任せくださいませ」
二人が快く承諾すると、マリクさんは何やら思いついたみたいで、カトリーヌさんに声をかけます。
「そうでした! カトリーヌ…協力者によって『例の物』が手に入りました。明日中には私がジックリと調査して資料を作成しておくので、縫製工場など手配を頼みます」
「それは吉報ですね! 先日いただいた物も、素材の布や糸など…似たようなものを探すのに苦労していますが、完成すれば必ず多くの販売数が見込めると思いますわ」
カトリーヌさんは私のほうを向き、笑顔でペコリと会釈しました。
(…ん? 私が何かしたかしら? ……それに協力者って?)
マリクさんとカトリーヌさんの会話が私にどう関係しているのか、全く理解できずに頭を悩ませていると、マリクさんが少し慌てた様子で、別の話題へと転換しました。
「さ、さぁ! 次はミユとユウトの護衛や側仕えのメイドについても決めなければなりませんよ!」
「そうだな…。別邸にいる4人を呼び戻したとしても、ビリーとシーリス、リアナとカレンだけでは足りないだろう」
ゼガートさんの発言に、青い瞳を輝かせながら、ハロルドさんが起立して意見を述べます。
「その件につきましては、私に考えがございます! まず、ミユ様の護衛にはビリーの他に、追加の護衛として3名…私と親衛騎士2名が任務に就きたく存じます。そしてユウト様にはシーリスの他に、追加の護衛として3名、レイシア殿と近衛騎士2名を就任させる方向でいかがでしょうか?」
自信を持って述べたハロルドさんですが、マリクさんはため息をつきました。
「前もレイシアに言いましたが、親衛騎士長と近衛騎士長が自ら護衛に就く必要はありません。それに…なぜ、ミユの護衛が男性の親衛騎士で、ユウトの護衛が女性騎士の多い近衛騎士なのですか?」
(……確かに…)
私だけでなく皆がマリクさんと同じように思ったみたいです。しかし、ハロルドさんは、その指摘を予想していた様子で、すぐに理由を述べ始めます。
「私とレイシア殿がお二人の護衛任務に就くことは、教会への牽制となります。マリク様は、お二人をアストリア侯爵家と養子縁組させ、教会が簡単に手出し出来ないようにと考えておられますが、それが成就するまでの間はどうなされます?」
「なるほど…。親衛騎士長と近衛騎士長が領主を差し置いて護衛している人物となれば、世間は間違いなく二人を『重要人物』と認定し警戒するだろう」
ゼガートさんがアゴ髭をいじりながら納得しています。
「そして、親衛騎士がユウト様ではなく、ミユ様の護衛を担当する理由は…『先の訓練場での出来事』です。ユウト様は近衛騎士を指導して勝利に導き、我々親衛騎士を敗北に追い込みました。ミユ様は敗北し負傷した我らに『癒し』を与えてくださいました…」
「…それでユウトには近衛騎士の人気が、ミユには親衛騎士の人気が集まっている…というわけですか……ふむ…」
マリクさんが思案しています。その様子を見て、レイシアさんが隣に立つハロルドさんの右太ももを、左手で小突いています。きっと「もう一押し!」と言いたいのかもしれません。
「……も、もうひとつ理由が思い浮かび…いえ、理由がございます。それは…マリク様は天才魔術師ですから、護衛など本来必要ないと思われます。今も護衛任務に就いているレイシア殿は、形だけではございませんか?」
そう付け足すと、マリクさんの目がキラリと光りました。
「ハロルドの言うとおりですね。私は天才魔術師ですから、自分の身は自分で守れます。……良いでしょう。ハロルドの案を採用します……ただし、訓練に支障が出ないように上手く護衛任務の交替を行ってください!」
「ありがとうございます。必ずや期待に応えます」
ハロルドさんがそう返事をすると、レイシアさんも起立して一礼します。
「はい! 私もユウト様の護衛に全力を傾けます!」
二人は着席すると、お互いテーブルの下でガッツポーズをしています。何故そんなに私達の護衛がしたいのかしら? …と疑問に思ってしまいます。
「決まったようだな…。それでは別邸にいる者には私から連絡をしておこう。レイシアとハロルドは、明日の昼頃までには護衛の人選を終えておくように…」
「護衛の強化については、私にも一計がありますから、そちらも近いうちに実行する予定です。それから、マーサは、カトリーヌと二人の教育計画を立案してください。それと増員するメイドの人選をお願いします」
ゼガートさんとマリクさんが、指示を出していきます。マリクさんの『一計』というのが気になりましたが、悪い予感がするので今は聞き流しておくことにします。
その後、それぞれの役回りを再確認し、会議は終了となりました。
会議終了後は、明日からの私達の具体的な予定について話があるとのことで、私達姉弟の他、マリクさん、ゼガートさん、レイシアさん、ハロルドさんの4人だけを残して皆退室して行きました。
◇◇◇◇◇◇
「さて、これからの二人の予定について話をしておきましょう」
「うむ、そうだな…。今夜はもう遅いので、二人ともここに泊まればよいが、ユウトについては、明日以降、軍施設に近い場所で生活してもらいたい」
「ミユは魔法の扱いについて、ここで座学と実技…集中特訓を行いましょう。最低1週間はかかるでしょうね…」
(えっ! それって優斗と離れて生活するってこと?)
ゼガートさんとマリクさんの言葉に驚き、慌てて反対します。
「そ、そんな! 優斗と離れるなんてダメです! 絶対に嫌です!」
「仕方なかろう…ミユには魔法の扱いを学んでもらわねば、色々な意味で危険すぎる」
「その通りです。大きすぎる力は制御が必要です。それに何度も説明していますが、何の後ろ盾も無い状況で教会に目を付けられれば、あなただけでなくユウトにも危険が降りかかりますよ…」
(うっ……そ、それを言われると…)
少し涙目になりながら優斗のほうを見ると、「僕なら大丈夫!」と力強い意志を感じる瞳で私をみつめています。
「それに…ミユは、ユウトの目の前では張り切り過ぎるようですしね…。魔法を学習する際は少し距離をおいたほうが良いでしょう…」
「そうだな。まぁ、魔力の扱いと魔法を身につければ、少しぐらい張り切っても魔力が暴走することは無いだろう」
(魔法を身につける? ……私が魔法を使えるようになるの?)
『魔法が使えるようになる』…とても魅力的な事に心を奪われました。私が魔法を使えるようになれば、優斗にもっとカッコイイところを見せられるかもしれないという妄想が頭に浮かび、段々と気分が盛り上がってきました。
「わかりました。私、『魔法少女』になれるように頑張ります! 魔法少女になって優斗を守りますから!」
「……いや、誰もそんなことは言っていないが……」
「……とりあえず本人がやる気になっているなら良いでしょう……」
何やら周囲が引いているようですが、「お姉ちゃん、スゴイ!!」と優斗に言ってもらえる未来が見えて、私は俄然テンションが上がっています。
そんな私のことを放っておいて、マリクさんは話を続けます。
「レイシア…そういうわけで、明日からミユの訓練が終わるまでの期間、ユウトをそなたの家に滞在させたいのですが、護衛騎士も含め、受け入れは可能ですか?」
「え? ユ、ユウト様を? わ、私の家に?」
マリクさんの言葉にレイシアさんが目を見開いています。そんなレイシアさんにゼガートさんが補足説明を行います。
「ユウトが毎日軍施設に通うのに、そなたの家が一番近くて便利なのだ。滞在期間がミユの魔法に関する訓練が終わるまでになるか、ユウトの騎士への集中訓練が終了になるまでになるかは、まだわからないが協力してほしい」
「も、もちろん大丈夫です! よ、喜んでユウト様をお迎えいたします。すぐに屋敷内を整えますので、お任せください!! それでは失礼します!!」
レイシアさんはかなり興奮した状態で返事をすると、ものすごく慌てて会議室を走り出て行きました。
「……明日の夜までに整えればよいのだがな…。レイシアは、今夜のユウトの護衛を放棄する気か?」
「外に出て頭が冷えれば、すぐに気が付いて戻ってきますよ。…それにしてもレイシアが我を忘れて取り乱したのを初めてみました」
私と優斗も普段と違うレイシアさんを見て、顔を見合わせ「ふふっ」と笑みを浮かべます。明日からしばらく離れて暮らすことになりますが、お互い頑張ろうと誓い合いました。
ユウトが宿泊することになり、
レイシアさんは嬉しさのあまりパニックです。
次回は、レイシア視点で
「レイシアさんの素敵な一日」を書く予定です。




