第20話 ミユの癒しと金色の光
今回はお姉ちゃんが活躍(?)します。
上手に魔法具を使うことができるのでしょうか?
(た、大変…。優斗の目が、明らかに冷たい…)
私が食堂でマリクさんと『フライドポテト』を食べながら、私達の世界の食事について話をしていると、慌てた様子で駆け込んできた兵士から、「大至急訓練場へ来てほしい」との連絡を受けました。そこで、すぐに二人で訓練場へと向かうと…
「貴様らは、この大事な時に何をしているのだ!!」
ゼガートさんに一喝され…そして今、優斗の冷たい視線に晒されているのです。
確かに、マリクさんと馬車の中から口喧嘩を始め、軍施設に到着してからも、お互いが疲れるまで続けてしまったのはいけませんでした…。また、一時休戦ということで、喉を潤すために食堂へ向い、そこでマリクさんから『私達の世界の料理』について聞かせて欲しいという要望が出たために、それに嬉々として飛びついてしまったのも原因の一つです。
つい調子に乗って、フライドポテトを作り、ご馳走しながら、延々と語ってしまったのです…。(ちなみに塩は親切な兵士に薬屋まで買いに行ってもらいました。)
「ゆ、優斗…。ごめんね…お姉ちゃん、つい…」
「…もういいよ。せっかく…………」
(!!!!!!!!!!!!!!!!)
こ、これは本当に大変です!!
一体どれくらい私に対するポイントが下がったのでしょうか???
(何とか…早急に何とかしなければ…)
半ば頭がパニックになりながらも、汚名返上・名誉挽回のために、何かできることがないか、周りを見渡します…。
(あっ! あれは?)
私の目に留まったのは、ゼガートさんに説教を受けているマリクさん…ではなくて、室内にたくさん集められている負傷した騎士の方々と、それを治療している様子の兵士数名の姿でした。
「ねぇ…優斗、あの人達は?」
「あの人達は、『回復魔法士』といって、怪我の治療をする人だよ。僕もこれから彼らの手伝いをしようと思っていたんだ」
引き続き、優斗とレイシアさんから回復魔法士と『回復の魔法具』の説明を聞いて、私の中の沈んでいた気持ちが、パッと明るくなり、軽くなりました。
(これです! これで優斗にアピールするしかありません!!)
「優斗…。ここは、お姉ちゃんに任せてくれないかな?……いえ、お姉ちゃんに任せなさい!」
そう言うと、私は回復魔法士の所へ駆け寄り、魔法具を貸してもらいました。
◇◇◇◇◇◇
『回復の魔法具』を借りた私は、回復魔法士から使用方法の説明を聞いていましたが、私の後方で、優斗が女性騎士に囲まれ始めたので、気になって耳を傾けます。
「ユウト様。私の怪我を癒してください。ここが痛いのです…」
「回復魔法士が、かすり傷だと言って治療してくれないのです。ユウト様…」
「ユウトさま~。足と腕と…お尻とそれと、ここも…治してくださいませ~!」
訓練に勝利して、ほとんど怪我をしていない近衛騎士部隊の女性騎士が殺到している。中には、色仕掛けをしている騎士もいるみたいです。
(ユウト…大丈夫かしら?)
そう心配していると…
「私の目の前で、ユウト様に色仕掛けをするような、度胸のある騎士がいるみたいですね…。私の電撃で優しく治療をしてあげましょうか?」
レイシアさんが優斗の隣でニッコリと微笑むと、女性騎士の方々は優斗の前に綺麗に列を作って整列し、大人しくなりました。順番で治療を受ける様子です。何やら一人ずつ優斗に向かって自己紹介をしているみたいですが、何故でしょう?
さて、私はようやく回復魔法士から説明を聞き終わり、まずは一人目の騎士を目の前にします。
「長く待たせてしまってごめんなさい。今、治療しますから…」
私は、そう言って魔法具に魔力を流していく…。回復の魔法具は30cmくらいの短い杖の先端に、細かい青色と白色のビーズのようなものがたくさん散りばめられている。杖に魔力が流れると、水と光の魔力が先端で混ざり合って水色の光が溢れ出し、杖をかざした部分の怪我を治してくれる仕組みのようです。
「うん。これで完了!」
「エッ?」
「あれ?…もう終わった?」
怪我の治療を終えたので、騎士にかざした杖を自分のほうへ引き戻すと、回復魔法士と騎士から驚きの声が上がりました。
「どうかしましたか?」
「い、いえ…。あまりに早かったので驚きました。普通は段々と怪我が治っていく過程が目で追えるくらいの速さなのですが…」
「驚いた…。光が傷に当たったと思ったら、瞬時に怪我が消えた」
(う~ん…。きっと私の魔力量のせいだと思うけど、手加減する方法がよくわからないのよね…)
そう言って驚いている二人に、私の魔力量が多いせいかもしれないと説明をして、何も無かったかのように、次の負傷者を連れてきてもらう。
次の騎士も、同じように一瞬で怪我が治ってしまい、再び驚かれましたが、ここであることに気が付きました。
(……うん。これは私が動いたほうが早いみたい…。)
負傷者を私の目の前に一人ずつ連れてくるよりも、私が歩いて回るほうが、明らかに効率が良さそうです。少しでも早く傷を癒してあげたいので、さっそく実行します。
「私が魔法具を持って皆さんのところへ行きますので、負傷したところがよく見えるようにして、その場で待っていてください!」
全員に聞こえるように大きな声で話し、魔法具に魔力を流していきます。少し強めに流すとバレーボールくらいの大きな光の塊になりました。
「「「 おおっ!!! 」」」
負傷した騎士だけでなく、周囲にいる全員から驚きの声が上がりましたが、もう慣れっこです。歩きながら次々と負傷者を包むように光を当てていきます。
(これは楽です! それに楽しいかも…)
と、20名くらいを癒したあたりで、つい調子に乗り「今度は2人一緒に光で包むことは出来ないかな?」と魔力をさらに流して光を大きくすることを試みます。
すると、突如として光の色が水色から金色に変化してしまい、急激に光の玉が膨れ上がりました!
「ええ!! あれっ? どうして…?」
私が予想しなかった変化に驚いていると、部屋の隅っこで、ゼガートさんに説教を受けていたマリクさんが凄い形相で駆け寄ってきました。
「ミユ!! すぐに魔力を停止しなさい! また魔法具を破裂させてしまいますよ!!」
「は、はい!」
マリクさんに言われて、すぐに魔法具に魔力を流すのを止めたことで、何とか魔法具の破裂は避けられたみたいです…。しかし、金色の光の玉が天井に届くくらいまで巨大化したままフヨフヨと浮かんでいます。
「え、えーと、マリクさん。これはどうしましょうか?」
「出来てしまったものは仕方がありません。癒しの魔力ですから、別に悪いものではありません。負傷者の上で割って拡散させてみれば良いでしょう」
「わ、割る?」
「こうするのだ!」
マリクさんはそう言うと、人差し指の指先に小さな光球を作り上げ、浮かんでいる金色の光の玉に撃ち込みました。
パン!!
乾いた音を立てて、光の玉はシャボン玉が割れるかのように一瞬で消えてしまいます。すると天井から金色の光が部屋全体にキラキラと降り注ぎました。
「うわぁ………きれい………」
思わず声に出して呟いてしまいましたが、周りの皆もそう思ったようで、降り注ぐ金色の光を、手の平で受け止めるような仕草をしている人が何人もいます。
しばらくして金色の光が収まると、負傷した親衛騎士から歓声が上がりました。
「す、すごいものを見た!!」
「見ろ! 怪我が全部治っているぞ!」
「俺もだ! なんだ何が起こったのだ?」
親衛騎士だけでなく、近衛騎士も含めた部屋の中にいる全員が、口々に感動を隠せずに騒ぎ立てています。
「ユウト様! 見ました?」
「凄いです!! さすがはユウト様のお姉さまです!」
「あの方が将来、私の義姉になるのですね!!」
(ん? 何やらとんでもないことを言っている人がいるみたいだけど…)
そんな騒ぎに包まれながら、優斗の反応が気になって仕方がない私は、急いで優斗のところへと歩いて行きます。
「ゆ、優斗…。なんか、変な騒ぎになっちゃたね…」
「でも、すごくキレイだったよ! すごいなぁ…」
と、微笑んでくれました。
(よし! 少しはポイント回復になったみたい!)
私が心の中でガッツポーズをしていると、難しい顔をしたゼガートさんと、マリクさん、そしてレイシアさんが私達の傍までやってきました。
「マリク…。この場にいる全員に、今の出来事について箝口令を敷くように…」
「そうですね。徹底しましょう…。レイシアも協力してください」
「はい。承知しました!」
「それから…。軍と、二人の今後についても緊急会議を開かねばなるまい」
「軍事力の強化に、二人の処遇と、護衛や側仕えなど…色々ありますね」
「アストリア侯爵家など、味方勢力との連携や、教会対策についても…」
「色々と考え直さねばなるまい…」
「早急に対策を立てなければいけませんね」
「急いで手配の必要なものが…」
「「「 はぁぁぁぁぁぁぁぁ―――――――――っ 」」」
3人が、部屋中に響き渡るような大きな溜息をつきました。
「えっ? どうしたのかしら?」
「お、おねえちゃん…。とりあえず謝ったほうがいい雰囲気だよ…」
(え―――――っ。そんなぁ…)
私はその時、3人の親衛騎士から熱い視線を注がれていることに全く気が付かないまま、ガックリと肩を落としました。
この後、優斗と一緒にカダイン伯爵邸まで連行されたのは言うまでもありません。
美結を見つめる熱い視線…気になります。
でも、本人はまたマリクやゼガートに怒られそうでビクビクしています。
次回は「緊急会議」です。
新しいキャラクターも近々登場する予感…。
…シーリス達は元気かな?




