第17話 馬車内で魔力属性を調べましょう!
久しぶりにマリクさんの登場です。
目的地に移動中の馬車内で、魔力属性の調査を行うみたいです。
今、私達姉弟はマリクさんの豪華な馬車に乗りながら、カダイン領の中央にあるいう軍施設に向かって移動している最中です。
馬車の中は以前私達が乗ったものと比べると一回りくらい広いのですが、中央に固定された長方形のテーブルがあるので、一度中に入って座ると自由に場所を入れ替わることはできません。元の世界でいうと、回転寿司店のテーブル席みたいな感じです。マリクさんの隣に私が座り、テーブルを挟んで向かいに優斗とレイシアさんが並んで座っています。
(……なぜこんな配置に?)
レイシアさんに勧められるままに馬車に乗り込んだ結果なのですが、どうしてもスッキリしません……。優斗を少し自分のほうに抱き寄せながらニコニコ顔で座っているレイシアさんを見るとなおさらです。
しかし、馬車が出発してしまった以上は仕方がありません。優斗の隣の席は諦めて、私の隣でゴソゴソと何かの準備をしているマリクさんに目を移します。
「さて、それではミユの魔力属性から確認しましょうか……」
何やら準備ができたらしいマリクさんは、そう言って縦と横が25cmくらい、高さは10cmくらいの四角い箱を私の前に置きました。箱の上面中央にはテニスボール大の球体が半分顔を出しており、その上にビー玉サイズの球体が5つ、下に4つの合計9個が、それぞれ一列に並んでいます。
「これは?」
私がマリクさんに問いかけると、「待っていました!」と言わんばかりに説明を始めました。
「これは、私が開発した…(長く無駄な説明を省略)…なのです!」
え~と、つまりマリクさんが開発した魔力属性を判定する魔法具とのことです。
従来の物より優れている点は……
①従来品より少ない魔力量で判定が出来る
②少しずつ魔力を流していくと得意属性が明るく、その他は多少暗くなる
③火・水・土・風・雷・光・闇の7属性だけでなく、聖・魔の超レア属性も判定可
……とのことでした。
私はさっそく、魔法具中央のテニスボール大の球体を包むように両手の手のひらを置き、魔力を少し流してみます……。
「あっ! 光った!!」
まずは、手を置いた球体の上に並んでいる5つの小さい玉全てに反応がありました。赤(火)、青(水)、黄(土)、緑(風)、紫(雷)の光がキレイに輝いています。私は、どうやら5属性も適性があるみたいです。
「ん! ……ちょっと待て! 下の列にも光っているものが……」
(……ん? 下の列?)
マリクさんの声を聴き、自分の手で見えにくくなっていた下の一列が確認できるように少し手の位置を動かします……。
「白(光)……と金色(聖)! “聖属性”ですって!!」
「うわぁ! ……ビ、ビックリしたぁ……」
マリクさんの突然の大声に驚いて、私も声を上げてしまいました。
優斗もレイシアさんも大きく目を見開いています。
「複数の属性に適性があること自体が滅多に無いことなのですが、まさか7属性に適性があるとは……」
レイシアさんがそう言いながら、私と魔法具を見比べています。
「滅多にないどころではありませんよ……。この世界で今現在、“聖属性”と“魔属性”を持っているものは、1人として確認されていません」
「それって、何か大変なことなのですか?」
私が超レアな人間だと判明したらしい事は、何となくわかりましたが、具体的にどんなメリット・デメリットがあるのかわかりません…。
「この大陸中央に位置する『エメラダ神聖国』は、永世中立国ではありますが、大陸全土に影響力を持つ宗教『エメラダ神教』の母体です。この世界に約5,000年前に降臨した『女神アナーテ』を崇拝しています。女神アナーテは聖属性の持ち主で、この世界に魔法をもたらした始祖としても有名ですね。そのエメラダ神教の神官の8割は光属性、残り2割が他属性です。他属性と言っても、聖・闇・魔は一人もいません」
「……つ、つまり」
「教会にしてみれば、あなたは『崇拝対象』として、喉から手が出るほど欲しい人物ということになりますね……」
「……ということは、私達が教会に行けば、この世界での地位も安全も保障されるということですか?」
「は? ……物事はそう簡単ではありません! もっとよく考えてみなさい!!」
マリクさんに一喝されてしまいましたが、改めて考えてもよくわかりません。
すると、レイシアさんのほうが、何か答えを思いついたようです。
「ミユ様が教会に保護されたとすると、『聖女』として崇拝対象になることは間違いないでしょう……。しかし、国家のような大きな後ろ盾のない『一般庶民』の状態では、自身の自由は奪われて、軟禁状態……さらに教会内の権力者に良いように使われ続けることになりますね……。最悪な事態も考えられます…」
「さ、最悪の事態とは……?」
「ユウト様が人質に取られることです」
(!!!!!!!!!!!!!!!!)
そ、それはダメです! 絶対にあってはいけません。
驚きと恐怖から、身体中から力が抜けていくのがわかります。
魔法具に灯った光も全て消えてしまいました。
「わ、私はこれから……どうすればいいのですか?」
もう自分では考えることができなくて、マリクさんのほうを向いて助けを求めてしまいました。
「……まずは、聖属性の持ち主であることを隠すことです。そして教会とその関係者への接触をしないことですね。どんな理由があっても教会に行ってはいけません。あなたの『身の安全』と『後ろ盾』については私が責任を持って協力しましょう」
マリクさんが珍しく真剣な目で答えてくれたので、少し安心できました。
「マリクさん、ありがとうございます。そういえば……先日、別邸に来訪されたシュリさんも教会には行かないほうがよいと言っていました……」
「シュリさん?」
「はい。アストリア侯爵家で騎士をしているとか……ご存知ですか?」
「アストリア侯爵家のシュリ……。あぁ、良く知っていますよ! 金髪で私と同じくらい良い男でしょう? 私の親友ですよ!!」
「はい?」
思わず『親友』と言う言葉に驚いて、声が出てしまいました。もちろん『私と同じくらい良い男』という部分もツッコミが必要だと思いましたが、それはさすがに耐えました。
「どうかしましたか?」
「い、いえ……何でもありません。シュリさんとは親友なのですか?」
「そうです。エメラダ神聖国に一緒に留学をしていました。私は『魔術学院』、彼は『総合学院』でしたね……。2年前の政争で、私と同じく中退せざるを得ませんでしたが……とても優秀な人材ですよ」
(なるほど……同期生ということですね)
なぜシュリさんみたいな素敵な人が、このマリクさんの『親友』なのか謎は残っていますが、とりあえず同期の友人ということで納得することにします。……マリクさんが勝手に『親友』と思っているだけかもしれないですし……うふふ。
思わず顔が緩んでしまいました。
「それでは……ミユ、計測の続きを行いましょう。今度は先ほどの状態まで光ったら、少しずつ魔力を流すのを強めてください。いいですか? 少しずつですよ」
マリクさんの言葉に、私は再び魔法具に手をのせて魔力を流し始めました。
すると、マリクさんは隣で私の顔を見つめながらボソッと呟きました。
「……そういえば、ミユは…………に似ていますね。シュリの好みかもしれません……」
(シュリさんの好み? わ、私が?)
マリクさんの呟きの大半が耳に入った私は、一気に頭に血が上ってしまいました。きっと顔だけでなく、耳まで真っ赤になっているでしょう。手のひらにブワッと汗が出てきました。
すると!
私の手の下の魔法具から金色の光が多量に溢れ始めました!!
(!!!!!!!!!!!!)
「ミ、ミユ! どうしました? 落ち着きなさい! このままでは、魔法具が!!」
マリクさんが慌てて声をかけてくれましたが、動揺した私には逆効果でさらに魔法具へと魔力が流れてしまい…………。
ドッカ~~~ン!!!!!!
……魔法具が爆発しました。
「な、なんてことをしてくれたのですか! 世界に1台しかない魔法具ですよ!!」
マリクさんが目に涙を浮かべながら激怒しています。
「ご、ごめんなさい!! 弁償しますから……」
「この魔法具の開発にいくらかかったと思っているのですか? 角白金貨2枚は費やしているのですよ! それに、あなたの貧相な身体は頼まれてもお断りです!!」
「か、角白金貨2枚……に、2千万円!! ……というか、この変態魔術師!! 誰も私の身体で弁償するとは言っていません!!」
「なっ! 言うに事欠いて『変態魔術師』とは!」
◇◇◇◇◇◇
私達が、大騒ぎで口喧嘩している間、向かいに座っている優斗とレイシアさんは「やれやれ……」という感じで呆れ顔です。馬車も目的地に着いた様子で、御者や馬車の周りの騎士たちが声をかけたくてもかけられずにオロオロしていたとか……。
今回、魔法具が壊れてしまったことで、優斗の魔力属性を調べることが出来ませんでした。これが後に、吉とでるか凶とでるか……今は誰にもわからないのでした。
美結はマリクさんに「今度会ったらやさしくしよう」と
考えていたことをすっかり忘れてしまったようです。
次回は、久しぶりに優斗が軍施設の視察で頑張ります。




