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異世界でも、お姉ちゃんに任せなさい!  作者: 佐々木 みこと
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第16話 食材調査の報告会

レイシアさんから食材調査の報告を聞きます。

どんな結果が待っているのでしょうか?

気になります・・・。

「ミユ様……まずは、こちらの絵の食材ですが……」


そう言ってレイシアさんが、私の描いた『小麦』のスケッチを目の前に置きました。


「こちらの植物は、我々のカダイン伯爵領にも多少生えていますが、多くはアストリア侯爵領に生えている一年草と判明しました。成熟すると実が固い外皮に覆われてしまい何も利用する方法がなくなってしまうため、ほとんどは青草の段階で刈り取り、馬の餌として使用しているそうです」


「えっ?」


元の世界では大活躍の小麦が、こちらでは馬の餌になっている現実に驚きました。

しかし、優斗は全く驚く様子を見せずに私に向かって声をかけます。


「おねえちゃん……。小麦の歴史は、以前おねえちゃんが調べて、僕に教えてくれた記憶があるよ……」


「そ、そうだっけ!」


「うん……。確か、小麦は日本でも弥生時代くらいからあったと考えられているけれど、石臼いしうすなど粉にする技術がなくて、同じような使われ方をしたみたいだよ。小麦粉が庶民に広がるのは江戸時代以降だったかな……」


すっかり忘れていた私と違って、優斗の記憶力に感心してしまいます。

……と言っても、優斗は少し歴史オタクのようなところがあり、理数系の暗記は苦手みたいなのですが……。

そんなことを考えていると、ふと優斗の私に対する評価が下がったのではないかと心配になり、苦し紛れに持てる知識を振り絞ります。


「え、えっと……硬い表皮ということは、『硬質小麦』の可能性が高いかしら……用途はパン作りに活用できるかもしれないわね……。『中間質小麦』なら『うどん』、『軟質小麦』ならケーキやお菓子が作れるのだけど……」


そこまで言葉にして、チラリと優斗を見ると「おねえちゃん、さすが!」と言った表情をしているので、とりあえず評価ダウンの心配は無いみたいで安心しました。


「石臼は、この世界にあるのですか?」


とレイシアさんに聞くと、薬屋で使用しているかもしれないとのことでした。


(私が出入り禁止になった薬屋ですか……)


忘れようとしていた嫌なことを思い出してしまいましたが、小麦については、石臼が手に入ったら具体的に話を進めようと心に決めました。


そして、二つ目の食材の報告を聞くことにします。


◇◇◇◇◇◇


「では、次にこちらの食材です」


レイシアさんが次に『大豆』の絵を私の前に置きました。


「こちらは、国内のどこにでも多少は生えていますが……毒草でした」


(あぁ……うん。この世界では、そうなるよね……)


この報告に関しては、私は驚きませんでした。なぜなら大豆は植物毒があるので、毒性を無くし安心して食べるためには、発酵させる必要があります。つまり……味噌や醤油、納豆や豆腐などです。まだ青くて未成熟の大豆、つまり『枝豆』もしっかりと茹でなければいけません。この世界では茹でるという概念がないので、毒草と思われていても仕方がないのだと思います。

今現在、味噌や醤油といったものを作るには、材料も道具も足りないので、当面は塩茹での『枝豆』か、種から暗所で育てる『もやし』くらいしか出来そうにありません。


「レイシアさん、ありがとうございます。毒に関しては処理できるので問題ありません。とにかく存在していることがわかって良かったです」


とお礼を言い、次の食材の報告をお願いします。


◇◇◇◇◇◇


「最後に、この食材ですが……」


そう言って『稲穂(米)』の絵を私の前に置きました。


「こちらは、残念ながら国内には無く、カダイン伯爵領の東に隣接している『水の神殿』の領地周辺で栽培されている植物ということがわかりました」


(…ん? 今『栽培されている』って言ったよね?)


レイシアさんの発言に、この世界で稲を育てている人がいることに驚き、嬉しさがにじみ出てきます。


「今、栽培されていると言いましたが、それをその『水の神殿』から取り寄せることは出来ますか?」


「『水の神殿』はエメラダ神聖国の飛び地で、国交的には問題ありません。通常ですと、何の問題もなく輸入することができるのですが……」


「何か問題が?」


「はい。この植物は神に捧げる『酒』を造るために栽培されているものだそうで、食材として輸入することは出来ないと思います……」


(……日本酒ですか!)


日本酒が作られていたことにさらに驚かされましたが、それよりも輸入が出来ない理由がイマイチ理解できません。もう一度レイシアさんに聞いてみます。


「えっと、なぜ食材として輸入出来ないのでしょうか?」


「えっ……そ、そうですね……簡単に説明しますと、この植物は神に捧げる『酒』という飲み物を造るための『神聖な植物』として扱われているということです。それを輸入して人が食するということは、神の供物となる材料を作成途中で盗み食いするのと同じということです」


「う~ん。なるほど……」


確かにそれは問題があります……。この世界の宗教がどういうものか、まだよくわかりませんが『神聖な植物』に認定されているものを商取引すれば、間違いなく教徒は不快に思うだろうし、大なり小なり争いに発展する可能性はあります。


「何とか穏便に手に入れる手段はありませんか? 米も酒も……」


「酒も! ……ですか?」


いきなり『酒』まで手に入れたいと言ったことに驚いたみたいですが、レイシアさんは腕を組んで考えてくれています。

しかし……


「ミユ様……残念ながら、私には思いつきません」


……残念です。でも、きっと何か方法はあるはずです。なぜなら、酒を造る過程で絶対『味』を確かめる人がいるはずですし、余った米や神に捧げた後の酒をどうするとか……情報を集めれば……。そんなことをあれこれと考えていると、外がザワザワと騒がしくなってきました。


「……どうやら到着したみたいですね」


「えっ? 誰が?」


「軍の視察に二人をお連れするのに、マリク様自らが騎士と馬車を連れてくると言いませんでしたか?」


(言っていません! 今、初めて聞きました!!)


レイシアさんの言葉に「むぅ~っ」と口が尖がってしまいます。優斗や他の4人も驚いています。

とりあえず来てしまったものは仕方がないので、気持ちを切り替えて皆で迎えに出ることにしました。



◇◇◇◇◇◇



「皆、ご苦労です!」


馬車から降り立ったマリクさんは、私たちにそう声をかけるとツカツカと歩いて近づいてきます。

さすがは領主の護衛といったところでしょうか、騎乗した騎士が15~6人と3頭引きの馬車が2台です。もちろん1台は見た目も黒と金で豪華に塗られているものです。


「時間が惜しいです、準備が出来次第すぐに出発しましょう。今日中にカダイン伯爵領中央の軍施設で馬具の出来栄えと訓練を視察し、夜は邸内の魔術実験室で、二人の魔力に関して調べさせてもらいます。翌日は西側領界の視察に向かう予定ですから、そのつもりでいてください」


次々と行動予定を述べていくマリクさんに少し引いている私ですが、答えは「イエス」しかありません。しかし、疑問に思ったことは聞いておこうと思います。


「はい……わかりました。でも、なぜマリクさん自らここへ?」


「馬車の中でも魔力について調べられることがありますからね。それと……」


そう言ってマリクさんは、私から視線を外し、後ろのほうで控えているリアナとカレンを手招きしました。するとリアナがカレンから2つの袋を受け取り、それを持ってこちらへと近づいてきます。


「マリク様……こちらになります」

「うむ。ご苦労でした」


マリクは袋を受け取るとニヤリと笑みを浮かべた後、クルリと馬車のほうへ向きを変えて歩き始めました。ふと紅茶の香りが私の鼻をくすぐりました。


「リアナ……あの袋は?」

「はい、マリクさまが紅茶を飲んでみたいと楽しみにされておりましたので……」

「そう……ですか……」


確かに一瞬、紅茶の香りがしたけれど……。あと、もう一つの袋は……?

何だかスッキリしない感じがありますが、もう一度メイドコンビに聞こうにもバタバタと別邸と馬車とを往復し、荷物の運搬に忙しい様子です。


「おねえちゃん、すぐに出発するみたいだよ。馬車に乗らないと……」


優斗の声掛けで考えるのを止め、私も馬車へと移動します。

シーリスやビリー、リアナ、カレンに挨拶を済ませると、私たちの乗った馬車と護衛の騎士たちは、足早に別邸から領の中央に向かって出発していきました。



食材については、視察終了後に再度アプローチすることになりますね。

メイドコンビから「紅茶」と「何か?」を受け取ったマリクさんはご機嫌です

次回は、馬車の中で二人の魔力の調査をするところからです。

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