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異世界でも、お姉ちゃんに任せなさい!  作者: 佐々木 みこと
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第15話 レイシアさんと怯える人達

別邸にレイシアさんが来訪します。

どんな用件で来たのでしょうか?


読者のみなさんにはおわかりですね。

アストリア侯爵家の騎士だというシュリさんとの素敵?な出会いから一夜明けました。私の中での大切にしたい男性第1位が、弟の優斗なのは揺るぎないものですが、まさか2位候補が登場するとは思いませんでした。そして、私が実は面食いだったとは……自分では違うと思っていたので、ちょっとショックでした。でも、優しそうで私に好意を持って接してくれるイケメンはとても貴重だと思うので、この出会いは大切にしていきたいと思っています。


◇◇◇◇◇◇


午前中、朝食を終えると、いつものように優斗とシーリスは剣術の稽古に外庭に出ていきました。やはり優斗には才能があるらしく、普通の人の3倍くらいのスピードで技を修得しているとのことです。しかし、基礎体力の面では同じ年齢の子よりも劣るそうで、最近は午後のミーナとの勉強会終了後、ランニングや筋力トレーニングを追加で行っているそうです。


私は昼食の献立をメイドコンビと相談し、町に買い出しに出かけようとした

ちょうどその時!!


バリバリッ!!!!


「キャァァァ~~!!!」


外でいきなり大きな音と叫び声が聞こえました。

女性の悲鳴だとわかったので、まずは優斗ではないことに安心しつつ、急いで外に出てみます。


すると……馬上のレイシアさんがそこにいました。


「全く! 失礼な奴め……」


そう言ってレイシアさんが見下ろしている視線の先をみると……


「ミ、ミーナ!!」


そうです。そこには、ミーナがうつ伏せで倒れていました。

自慢のツインテールも少しプスプスと焦げている様子です。


「レ、レイシアさん、久しぶりですね。……こ、これは一体?」

「あぁ……ミユ様。ご機嫌よう……ユウト様は?」


レイシアさんは馬上から地面に降り立つと、さっそく優斗の姿を探し始めました。


(いやいや…まずは、ミーナがどうしてこうなったのか説明をしてください!)


私の質問をスルーして、優斗を探しているレイシアさんに呆れてしまいます。

すると、優斗が建物の影から小走りにこちらに向かって駆けてきました。シーリスはその後ろをゆっくりと歩いて続いています。


「あっ! レイシアさん、こんにちは! ……ミ、ミーナちゃん!!」

「ユウト様!! 元気そうで何よりです。安心しました……」


「レイシアさん! ミーナちゃんはどうしたんですか?」


優斗が驚いた顔で問いかけます。

レイシアさんは、答えるのが面倒くさいような様子で語り出しました。


「その娘にユウト様の居場所を聞いたのです。そうしたら、『あなたはユウトくんの何なんですか?』と聞き返してきたので、失礼な娘だと思いつつも、冷静にかつ正確に返答したのです」


「な、なんて?」


『冷静にかつ正確に』という部分が気になり、つい口を挟んでしまいました。


「もちろん、『ユウト様の運命の相手』だと……」


「はい?」

「えっ?」


その回答に、私だけではなく優斗も声をあげましたが、レイシアさんは続けます。


「そう返事をしたら、さらに失礼な物言いをしたので、天罰を加えたのです」


「失礼な物言い?」


「……『真面目に答えてよ、おばさん!』……と」


(なるほど……。さすがはミーナと言うべきか……)


命知らずのミーナにその場にいる皆で合掌し、とりあえずレイシアさんを邸内に案内しました。ミーナはレイシアさんの軽い電撃を受けて気絶しているだけだったので、しばらくカレンに様子を見てもらうことにしました。


◇◇◇◇◇◇


リビングに集まった私達は、レイシアさんの来訪目的を聞いて驚きました。

優斗が知識を提供し、私が紙に描いた『馬具』が完成したので、軍の視察も兼ねて来てほしいとのことでした。


「お二人には、この世界の軍隊や軍事施設を見学してもらい、色々と改良や導入できるものがあれば意見を言っていただきたいのです」


レイシアさんの言葉を良いように受け取れば、私達の知識を頼りに国力を上げたいということなのですが、提供する知識は戦争に直結するものということです……。食事や生活用品ならともかく、兵器などの軍事関連については気が進みません。もちろん私には軍事関連の知識はなく、優斗も専門的な知識まではないと思うので、どれだけ役に立つかはわからないのですが……。


「戦争で勝つために……ですか?」


私がレイシアさんに率直に尋ねると、


「そうです。カダイン伯爵領は現在、敵勢力と3年の休戦条約を結んでいます。それが切れるのが1年後……。それまでに少しでも有利な態勢を……とマリク様はお考えです」


その後も、私の数々の質問にレイシアさんは誠実に答えてくれました。2年前の政争の概要や戦争回避が『全面降伏』以外は不可能なこと、そして負ければ領民も含めて悲惨な結果が待っていることです。


「アストリア侯爵家も同じ状況なのですか?」


ふと、昨日来訪したシュリさんの顔が思い出されました。


「もちろん同様です。アストリア侯爵家が我々の派閥の長ですから……」


リビング内が重い雰囲気に包まれました。リアナやカレン、シーリスやビリーもカダイン伯爵領の状況は知っていたに違いありませんが、戦争まであと1年という現実を改めて突き付けられれば、気が重くなるのはわかります。



「おねえちゃん……ちょっといいかな?」


沈黙を破ったのは、意外にも優斗の声でした。


「どうしたの優斗?」

「僕は……自分の運命を信じて、マリクさんにできる限り協力してみたい!」


「え?」


「僕たち姉弟がこの世界に……そしてマリクさんの元に召喚されたのが運命だとしたら、きっとこの劣勢を覆すために僕たちが出来る何かがあるんだよ! だから、諦めずに行動したいんだ……」


「ゆ、優斗?」


「それに、僕はいつも守られてばかりだけど、今回僕の知識が何かの役に立って、ここにいるみんなを守ることに繋がるのなら頑張りたい!」


思いがけない優斗の決意を聞き、みんな感動に打ち震えています……。


ビリーは私の後ろに控えているので表情は見えませんが、鼻水をすすっている音がしています。リアナは両手を胸の前で組み、祈るような姿で涙を流し、ミーナの看病から戻ったカレンは、タオルで口元を抑えながら声が出るのをこらえています。レイシアさんは優斗をじっと見つめて驚きの表情。


そんな中、優斗の後ろに控えていたシーリスは、さっと優斗の右横に跪いて右手を取りました。


「ユウト様……大丈夫です! 私はいつもお傍にいますので、一緒に頑張りましょう。きっと何とかなりますよ!」


シーリスが故意に明るい口調で優斗に話しかけました。

すると、驚きから我に返ったレイシアさんが、その感動の良い場面である雰囲気を打ち壊すかのようにシーリスに言葉をかけました。


「いや、今回の視察はユウト様とミユ様だけ連れて行く。他の者は別邸で待機だ」


「「「!!!!!!!!!!!!!!!」」」


シーリスとリアナ、カレンの顔が一瞬で青ざめました。


「えっ?」

「そ、そんな!」

「な、なぜですか?」


納得ができない3人は、レイシアさんにその理由を問いただしています。


「なぜ、お二人の世話や護衛に慣れている私達が待機になるのですか?」


「それは……二人を護衛する騎士、世話をするメイドは、他にもたくさんいるということだ」


「そ、それにしても……」


「そして、先日のシーリスからの報告書を見ると、ずいぶん貴方達はユウト様と楽しい日々を過ごしていたようですからね……」


「「!!!!!!!!!!!!!!」」


リアナとカレンの視線が一気にシーリスへと向けられました。

シーリスは何やら汗をかいています。

そんな様子を見渡しながら、レイシアさんは話を続けます。


「私としては、このまま任務を継続してもらいたかったのですが……他の騎士やメイド達から、不公平だと言う声が多く挙がったのです。……残念です」


(レイシアさん……とても残念そうに見えない表情ですけど……)


「で、でも私はきちんと試合で……」

「そ、そうですよ。私達メイドも『くじ引き』で……」


(ん? ……そんな風にして私達姉弟の担当が決まったの?)


初めて聞く担当選びの話に、私と優斗も少し驚きました。


「それにシーリス……あなたはミユ様の護衛のはずでは?」


「!!! え、えっと……そ、それは……」


レイシアさんの冷たいトーンダウンした言葉に、シーリスは汗だけでなくカタカタと身体が震えはじめました。


「……ふんっ。……というわけで貴方達4人は別邸にて二人が戻るまで待機です」


「あ、あの……レイシア様、すみません。私はなぜ待機なのですか?」


今まで沈黙を保っていたビリーが、レイシアさんに恐る恐る声をかけます。


「ん? ビリー……あなた自分の罪を理解していないようですね」


レイシアさんはそう言うと、ビリーに近づいて耳元でささやきます。


(あなたがシーリスと護衛を交換した罪……無いとは言わせませんよ!)

(うっ!!!)


(おかげでユウト様とシーリスの師弟関係が出来て……)

(す、すいませんでした! は、反省しながら別邸にて待機いたします!)


「そう、わかれば良いのです……」


少し前まであった戦争話の重苦しい雰囲気は完全に消し飛びました。

それは良いのですが、今度は明らかに4人が委縮してしまって冷気が漂っているように思えます。何とか話題を転換しようと考えていると、レイシアさんのほうから、違う話題が提供されました。


「そうです。ミユ様! 報告書にあった3枚の食材の絵の件についてご報告させていただきますね」


そう言って再び席につくレイシアさんの正面に、私もしっかりと座り直しました。


「ど、どうでしたか?」


「米」「小麦」「大豆」……この重要な食材の調査結果がどうなったか、不安と期待が入り混じり、少し手に汗をかきながら、私はゴクリと唾を飲み込みました。


『雷帝』のレイシアさん…怖いです。

美結と優斗は視察に出かけることが決定し、

他の4人はお留守番です。


次回は、食材調査の報告から始まります。

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