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異世界でも、お姉ちゃんに任せなさい!  作者: 佐々木 みこと
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第14話 金髪の来訪者

今回は美結に素敵な出会い? が訪れます。

お楽しみください。

「カレンさん。玉子焼き入れてくれました?」

「ミーナちゃん、今日もきちんと入っていますから、安心してください」

「ありがとうございます! それでは行ってきます!!」


爆弾小娘ばくだんこむすめ』こと、ミーナはカレンからお弁当箱を受け取ると、別邸の外で待っている優斗とシーリスの元へと駆けていきました。


ミーナが初めてこの家にやってきた日から、優斗は午前中シーリスとの剣術稽古が終わると、メイドコンビに作ってもらったお弁当を持って、村の景色が良いところで昼食をとるようになりました。ミーナと村の少女達も一緒です。


午後は、村長の家(ミーナの家)で勉強に励んでいます。

それには、こんな経緯がありました……。


村長の家には、ミーナが数え歳で13歳になったら、エメラダ神聖国の学校に留学させるための入学試験用書籍が買いそろえてありました。それは、ミーナが成人になったら貴族の下に仕えさせて、将来の良い縁談に備えようと村長が考えていたからなのですが、本人が全く勉強をする気がないので、せっかくの本もホコリを被ったままで困っていました。


そこに優斗という救世主が現れました。


「ミーナちゃんは、留学するために毎日勉強しているんだね……すごいなぁ」

「そ、そんなことないわ……私には難しくて、なかなか進まないの……」


「僕も色々と勉強をしたいから、良かったら今度本を貸してくれない?」

「え?」


「自分のためにも、おねえちゃんのためにも、出来ることはしておきたいんだ」

「そ、それなら……私の家で一緒に勉強しましょうよ! 

 私も一人より二人のほうが勉強するのも楽しいと思うし……」


……というような会話がなされ、その結果『勉強会』が毎日午後に開かれることになったのでした。村長が優斗に感謝感激したのは、言うまでもありません。


◇◇◇◇◇◇


私のほうは……昨日から『家庭菜園』を始めました。


外庭の一角に畳2畳分くらいの小さい畑を作り、村で野菜の苗や種をもらってきて植えました。『優斗と一緒にまったり生活』を営むための一環でしたが、畑を作るときには、なぜかビリーが張り切って土を耕してくれました。ビリーは元々農村出身とのことで、騎士になるまでは実家の農業を手伝いながら兵学校に通っていたそうです。


「さて、今日もお水をあげましょうね!」


そう言って、私はいつものように“化粧部屋トイレ”の水洗ステッキを手に畑に水を撒きます。

水遣りも終わりという頃に、家の中からリアナさんがやってきました。


「もう……ミユ様! また水洗ステッキを持ち出しましたね。

 それは庭に水を撒く道具ではありませんと何度も……」

「だって……バケツとヒシャクで水を撒くより、効率が……」


「ダメです! 不衛生ですよ」

「それでは、私専用のステッキを買ってくれませんか?」


「……そうですね。今度、町に行ったときに買っておきます」

「わぁ! ありがとうリアナ! 大事に使うから!」


そんな会話をリアナとしていると、ビリーが一人呟きました。


「……ミユ様、水洗ステッキを買ってもらって喜ぶ人は、世界中であなただけだと思いますよ……」



◇◇◇◇◇◇



翌日……その男性との出会いは突然やってきました。


私が昨日と同じく水洗ステッキで畑に水遣りをしていると、


「すみません。こちらにマリク・カダイン伯爵に保護されているという方が住んでいらっしゃると聞いたのですが……」


そう話しかけてきた男性を見て、私はあまりの美しさに目を見開いてしまいました。年齢は20歳くらい。頭髪はショートできれいに整えられており、サラサラと金色に輝いています。顔も目鼻立ちが整っていて、まるでモデルのよう……。飛びつきたいくらいの美しさと言えばいいのでしょうか?


とにかく、今まで恋をしたことの無かった私の胸が高鳴りました。


(ど、どうしましょう……な、なんて返事をすれば……)


もしかして、私を『悪の魔術師』から救うためにきた『王子様』なのでは……

と妄想が膨らんでいたその時、彼のほうから再び声がかけられました。


「……あの……すみません」

「は、はい。なんでしょう!」


「水が……」

「みず? ………水……!!! きゃぁぁぁぁぁぁ!!!!!」


ジャァァァァ~~~~!!


た、大変です!

私の持っている水洗ステッキから、彼に向けて水が大量に流れ出し、下半身をびしょ濡れにしています。そして、まだ水が止まりません。


「ど、どうしよう!! 水が、水が止まらない!!」

「落ち着いて……落ち着いてステッキから手を離してください」


そうでした! ステッキを手放せば魔力が流れることはありません。

急いでステッキから手を離し、これが魔力の暴走なのね……と一人驚いていると、後ろで一部始終を見ていたビリーが冷静に話しかけてきました。


「ミユ様、とりあえずその客人を屋敷へ……。リアナとカレンに何か拭くものを用意させましょう。着替えは私の物を持ってまいります」


私は、自分のしてしまった事が恥ずかしくて死にそうになりながらも、何とか彼を邸内へと案内したのでした……。



◇◇◇◇◇◇



「私は、アストリア侯爵領で騎士を拝命しているシュリと言います。マリク・カダイン伯爵がこちらで政争により両親を亡くされた子を保護していると伺い、上司よりその様子を見てくるように命じられてやってきました」


「そうでしたか……私がその保護された一人で美結です。あと弟の優斗がいます」


シュリさんの着替えが終わり、リビングでお互い席に着いた後、自己紹介を済ませると、私の気持ちも少し落ち着いてきたました。まずは先ほどの無礼を謝罪します。


「先ほどは、(水を大量にかけてしまって)驚きましたでしょう?」


「確かに、(あれほどの魔力量があるなんて)驚きました……」


「ご、ごめんなさい! わざとではないのです。魔力が暴走したというか……」


「いえ、気になさらないでください……。あの……初対面でこんなことをお聞きするのは、どうかと思いますが……どなたか決まっている方はいらっしゃるのですか?」


(えっ? こ、これは……私が付き合っている人……または婚約者という意味かしら?)


そんなことを聞いてくるなんて……まさか……と少女漫画のような会話の展開に妄想が膨らんでしまいます。顔や耳が真っ赤になり、熱くなっているのが自分でもわかります。


「いいえ! そんな人はいません!」


「マリク伯爵(が魔術の指導者)ではないのですか?」


えっ? マリクさんみたいなへんたいが私の婚約者なんて、シュリさんに思われては困ります。あわてて否定することにしました。


「それは絶対にありません! まだ誰も決まった人なんて……」


「そうですか……あなたのような(魔力量が多い)人を放っておくなんて……」


「そ、そんな……ありがとうございます。……嬉しいです」


……という会話を交わしていると、リアナが紅茶を持ってきてくれました。

まさか、二人が意味合いのずれた会話をしているとは、この時は全く思っていませんでした。


シュリさんは紅茶を目の前にすると一瞬驚きましたが、私が説明をすると、カップを顔の前に持っていって香りを楽しみ、そして一口飲みました。


「こ、これは……素晴らしいです! これをミユさんが?」


私が照れながら頷くと、シュリさんは再び紅茶を口にして、美味しそうに目を細めました。


「うん、美味しいです。ミユさん、今日は貴方に逢えて良かったです。また、貴方に会いに……そして、この紅茶を飲みに来てもよろしいですか?」


「は、はい! も、もちろんです。ぜひ、お待ちしています!」


私の心の中は、言葉では表せないくらいの嬉しい気持ちが溢れて大変なことになっています。とりあえず、この素敵な出会いをくれた神様に感謝をしようとテーブルの下で両手を組んで、軽く目を閉じました。


(神様……この素敵な出会いに感謝します! どうかこの幸せが長く続きますように……)


と祈り、すぐに目を開けました。

すると目の前にいるシュリさんも、その後ろに控えているメイドコンビも……私の後ろのビリーまでが目を見開いて驚いています。


「あ、あれ? みんな……どうかしました?」


私が問いかけると、


「ミ、ミユ様こそ……今、何をされたのですか?」

「一瞬ですが、ミユ様の周りにキラキラとした光が現れて……」

「その後、すぐに天井のほうへ上りながら消えてしまいました」


3人が説明してくれましたが、よくわかりません。

シュリさんは少し考えるような仕草をしてから、席を立ち私に言いました。


「やはり貴方は、手放してはいけない人ですね……。これを……」


そう言って、白いブレスレットを私に差し出しました。


「これは?」

「お守りです。何か身の危険を感じたら、これに魔力を注いでください。しばらくの間あなたを守ってくれるはずです」


ニッコリと微笑んで玄関に向かって歩き出し、


「ビリー君に借りた服は後日来た時にお返しします。あと、ミユさん……教会にはマリク伯爵の許可なく行かないほうが良いと思います。それでは……」


シュリさんの姿が見えなくなるまで見送った私は、夢のような時間を振り返り、熱い息を吐きました。あんな美青年が平凡な私に好意を持ってくれるなんて信じられませんでした。もしかしたら、この世界の美的感覚がおかしいのかもしれないと思い、メイドコンビに訪ねてみます。


「リアナ、カレン、さきほどのシュリさん……とても素敵な方だったけど、二人から見てどうでしたか?」


「え? とても紳士的な方とお見受けしましたが……」

「う~ん……“中の上”というところでしょうか!」


(えっ? 私の中では『特上』なんですけど……)


二人の評価に驚いて、もう一回尋ねてみます。


「では、優斗は二人にとってどうなのかしら?」


「評価なんて……。あえて言うなら『天使』ですね!」

「いえ、神ですよ! 神!!」


(な、なるほど……よくわからないけど、よくわかりました……)


最後に、男性から見た女性の評価が気になり、ビリーに声をかけます。


「ビリー、あなたから見て私達の評価はどうなのかしら?」


「え? そんなこと、答えられるわけないじゃないですか!」


当然のように困った顔をしているビリーですが、この世界の美的感覚の調査のため、一度は聞いておきたいところです。


「大丈夫です。怒らないので正直に答えてください!」


そう私が念を押すと、ビリーは渋々ながら答えました。


「本当に怒らないでくださいよ……。えっと……リアナとカレンは“中の上”ですかね…。ミユ様は……“中”だと思います……」


プチッ!

ビキッ!!

バシッ!!!


私とメイドコンビの何かが切れる音がしました。


「ビリー!!!」

「そうですか……よくわかりました……」

「今夜は食事抜きで決定ですね……」


「怒らないって言ったじゃないですか~!!」


ビリーの泣き叫ぶ声が別邸に響き渡りましたが、自業自得ですよね……。


◇◇◇◇◇◇


<ラルフ村郊外にて>


「シュリ様……異世界人はいかがでしたか?」


そう話しかけたのは、白髪の老人……年齢は70歳くらい。


「ああ、無事に一人の女性と面識を持てたよ。驚いたことに、あと一人弟がいるらしい」

「なんと! 異世界人2人を召喚とは……さすがはマリク殿ですな」


「しかし、あれだけの能力を持った異世界人を放置しておくとは……マリクは何を考えているのか……」

「能力とは?」


「膨大な魔力量と……様々な知識、そして……『教会』が喉から手が出るほど欲しがるものだ……」

「!!! ほ、本当ですか? な、なるほど、それは大変ですな……」


「とにかく、有事に備えなければなるまい……戻るぞ!」

「はっ! 承知しました!」


そう言って二人は馬に飛び乗り走り去って行きました。

美結や優斗の知らないところで、少しずつ事態が動き出していたのでした。


ビリー……ご愁傷様です。

シュリさんが何者かは今後のお楽しみに……

次回は、レイシアさんが村に来訪します。

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