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ルビーとヴァンパイヤ  作者: 梅 子


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9/12

鼓動

「やぁ アニス。元気かい?」

淡い色の花々が咲く庭に、似合わぬ黒髪の紳士が1人、佇んでいる。

比較的大きなバラの花びらを触りながら私に声をかけた。

私はテラスにある白い椅子に座り、厚めの本を読んでいる。

「シャン様。お久しぶりですね。今日はなぜこちらに?」

私は持っていた本を閉じ、ゆっくり目線を下げた。

彼はいつも不思議な人。

気づいた時は手前でも、返事をした後は必ず私の後ろにいる。

そして、私の髪をかき分けると、うなじにあついキスをする。

「シャン様。ウィリアムがいたらまた怒られますよ。」

私は目を瞑り、落ち着いた様子で彼に話す。

「アニス。これは僕の挨拶ではないか。美しい君への挨拶だといいかげん受け入れたまえ。」

彼は当たり前のように凛っとしてはなす。

そんな彼に呆れていると

出かけていた彼が帰ってきた。

「まぁ!ウィリ…」

声が届いたかのようでした。

「シャン!貴様は!」

来るたびこのような挨拶をするシャンに、ウィリアムも私も毎回手を焼いているのでした。


「姫美、ただいま」

ウィリアムは私を見ながらキスの位置までしゃがむと「おかえりなさい」と、キスをする。

上体をあげながらウィリアムは口を開いた。

「シャン!今日はなんだ?何かあるのだろう?」

「ああ。久しぶりに会う友の元に来るには最もな良い話しを持ってきたよ。」

シャンはウィリアムの肩に左手を置き、前後の視界の中、囁くように何かウィリアムに伝えていました。

ウィリアムの顔つきが一瞬変わったかと思うと、目を閉じ彼は何かに了承した。

「わかった。では晩に伺う。その時にまた」

シリアスなシーンのように、2人の表情はかたかった。

シャンはそのままウィリアムと行き違うかのように進むと 私にむかってふりむいた

「では、親愛なるアニス。また今度」

私は「はい。シャン様。」

と返事をすると、シャンはいつもとかわらぬ笑顔で去って行った。

私はウィリアムの顔を見た。

「ウィリ…」

立ちすくむ彼を見て、なにか、話しかけてはいけないような雰囲気を感じた。

そこから、じわじわと広がる不安を胸の中に感じはじめていた。

そんな私に気づいたのか、

彼は私のそばまで歩き、そしてひざまずくと、座っている私をそのまま抱きしめ、横向きに持ち上げた。

「ただいま、美しい僕の姫君。愛しい君。」

私を抱き抱えながら、優しくキスをすると庭に咲く花々のところに歩き始めた。

私は途端にその不安をかき消すかのように彼の首元に抱きついた「ウィリアム。ああ、愛しい貴方。」

花々の咲く庭の芝の上に、彼はそっと私を置いた。

そのまま私を見つめると、ウィリアムは私のうなじに向けて両手を伸ばし、わたしの髪をあげながら、ゆっくりと首筋に唇をよせた。

そして首筋からそのまま左肩を撫でるように唇を這わせ始めた。私に快感という震えが徐々に起こりはじめたころ、彼の両手は胸元の交差に編まれている紐を緩めていた。

首筋から流れる唇は、胸元に辿り着く。

空に向かって解放される声。

「ああ〜」

彼の片手がウエスト部分に触れた時、突然辺りは暗くなった。

今まで明るかった周りが、突然暗くなったのだ。

「きゃー!」

突然の事に私は驚き奇声をあげ、そして彼にしがみついた。

「ウィリアム、ウ…ウィリアム。」

こんな事は初めてだった。

突然夜になった。夜に…とならまだいいが、夜というようなのんきなものではない。

幾ら創り上げられた世界でも、異常な暗闇だ。

「姫美、大丈夫だよ。いいかい、僕のそばから離れてはいけないよ」

彼は私の服を正し、抱きしめながら辺りを見回した。

ウィリアムは、確認しながら庭先から、家の中に向かった。

私を部屋のベッドの上にのせる。

「ウィリ…」

右手で私の方を塞ぐと彼は小さな声で私に話した

「姫美、ここを離れてはいけないよ。何があっても。安全をとるために、今からこの部屋だけ別の空間にする。私は急いでシャンのところへ行かなければならない。僕が帰るまで絶対に動かないでおくれ。」

彼はそういうと、何処かへ消えてしまった。

彼のそばにいたい私の意思を聞くことなく、行ってしまった。

私は彼の言った通りに、ベッドの上に横になった。恐怖はある。あんなにも危機感のある彼は初めてだった。

昼間、シャンと交わした言葉はなんだったのだろう。

私は、布団に潜り込みながら、恐怖と戦っていた。

ウィリアムが行ってしまってからしばらく経った時、声が聞こえてきた。

空間を変えたとしても、元いた部屋の中にいることには変わりがないようでした。

私は吐く息さへも、とめる思いでベッドにいました。

「おい、気配がないぞ。あいつはどこだ」

話し声が聞こえてきた。身が硬直した。

私は恐怖の中、心の中でウィリアムを呼んでいた。

「あいつがいないのならかえって好都合だ。女を探すぞ」

わたし。

私を探している。

何が起きているのかわからない私には、ただ恐怖しかない。

私を見つけられないという確信はない。ウィリアムが作った空間を、この人たちが果たして気づかないでいるものなのか、なんの確証もない。

私の心の中で叫ぶウィリアムへの声が、胸の奥でとても大きくなっていた。

(ウィリアム!…ウィリアムお願い、早く来て)





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