アニス
「ウィリアム。私は幸せ者です。こうして貴方に見守られて天国へ行くことができるなんて。なんて素敵なんでしょう。」
「…アニス。僕も…僕も君に会えてよかった。」
「ありがとう。貴方は本当に心の優しい人」
「アニス…僕は、僕は…。」
「貴方を永遠に愛しているわ。これからもずっと。貴方に愛されて…とても幸せでした。ごめんなさいウィリアム。今迄…ありがとう。もう…いくわ。ずっと、ずっと、愛しています…ウィリアム」
はっきりと覚えてる。
私は眠ってしまっていた。
押入れの中で、足を父の部屋側に出し、いつの間にか眠ってしまっていた。
「ん、んんん。なんだろう、あの夢は。体が痛い。」
変な体勢で寝てしまっていたせいか、体が痛い。そんな体の上半身をやっとこさ起き上がらせると、右手には父の手紙にあった紫色の宝石箱があった。
「あれっ?私、いつ見つけたっけ?!」
不思議に思いながら、その紫色の箱を持ち上げると、ゆっくりとその蓋を、開けて見た。
ゆっくりと開ける蓋の陰から赤紫色の綺麗な石が見えてきた。完全に開けられた箱の中には、それは綺麗な赤紫色に光る石が1つ入っていた。
丁度、人差し指と親指の指先をくっつけて円にしたほどの大きさで、とても見たことのない美しい石だった。
「きれ〜ぃ。大きいなぁ。これ、本物だったら高いんだろうなぁ。本物なのかなぁ、それとも偽物なのかなぁ?でも、いいや。お母さんが私に残してくれた物なんて1つも無かったから、なんか嬉しい」
私はその箱を隠すかのようにお腹に抱え込み、自分の部屋に急いで持って行った。
部屋に入ると、産まれたばかりの私を抱く、お母さんの写真が机の上にある。その写真の前にそっと置くことにした。
「お母さん。今日卒業式でした。これからまた、どうなるのか少し不安だったけど、これで、また前に進めそうです。宝石箱ありがとう」
そう、写真に向かい報告を終えると、部屋を出て居間につながる台所へと向かった。
夕日の明かりが部屋から消え、微かにある暖かさから、まだ春の早い3月の夜の寒さに変わる夕方6時頃のことだった。
その時、パタパタと窓を叩く軽い音が聞こえてきていた。
私は、その時は何だかわからず、気にしないで台所で自分のご飯の用意をしていた。
次第に、音は聞こえなくなってきていたので、余計気にならなかった。
台所は小学生の時から好きな場所。
料理をしている時は特に自分の世界に入ってしまう。
ましてや常に1人の生活。気にしていたら恐怖に変わってしまう。
恐怖を打ち消すように、私はテレビをつけ、大好きなお笑い番組のDVDを再生した。
お笑いは私の1番のエネルギー補給であり、明日生き抜く勇気になる。
ケラケラケラケラとお腹が痛くなるほど笑い。これでもというほど笑い尽くした。
それからだいぶ夜も更け、夜の行動を一通りこなし、
あとは寝るだけとなった、10時頃。
机の上に卒業式でもらった花がちいさな花瓶に生けてあり、今日のことを思い出しながら私は眠りについた。
「アニス。アニス。起きておくれ、僕の大切な人。」




