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ルビーとヴァンパイヤ  作者: 梅 子


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11/12

覚醒

シャンはとても悔やみ、哀しみをあらわにした。

座り込む私を抱きしめ、彼は声を殺すように泣いていた。

静寂な森に哀しみの風が吹く。

風の音は、葉のこすれる音により、哀しみの風の音を消していく。

落ち着きを取り戻しかけた時、木の根から赤紫色の光が現れた。

私はこの光に見覚えがあった。

そして、彼の最後の言葉。

シャンの手を離れ、私は光る木の根元を探し始めた。

「あった…。…ウィリアム…」

アニスが残した赤紫色の美しい宝石と同じもの。

私はそれを抱きしめるように頬にあて、再びこみ上げる涙で濡らした。

「アニス、僕は君の願いを聞こう。ウィリアムの作った君との空間も、彼を失った今では、そう長くは持たない。私も君を失うのは辛い。願いを聞こう。ウィルの城へ。君が覚醒するまで、僕が空間を被せる。次は君が守るんだ。再び会えるまで。」

お互いが覚悟を決め、再び城に戻った。

ウィリアムの血で作られたルビーはアニスのルビーとは色の輝きが異なっていた。

アニスのルビーは薄く透明感のある美しいルビー。ウィリアムのは濃厚でいて淡く優しい透明感さへ感じる。

宝石のなった2人は、新たな世界で出会えているのだろうか。

城へ戻ったら一緒にしよう。2人を一緒に。


シャンと共に城についた私は、すぐさまアニスのルビーの元にむかった。

ルビーを取り出し、2人を抱えると、シャン言う通り、ベッドに座った。

「アニス。君は眠りから覚めたら人ではなくなる。血も欲するようになる。害がない限り、私達は生き続ける。それでも君はこの運命を受け入れるかい?」

シャンは自分の中にある罪悪感と戦っているように感じた。私はそんな彼の思いを受け止めようと、そっと右手で彼の左手をすくい、指を絡めた。

「シャン様。大丈夫です。私達は心の奥深くから愛し合っていました。今では私の元にはあなたと、そしてこの2人もそばにいてくれています。覚悟は出来ています。シャン様、ありがとう。よろしくお願いします」

私は彼に思いを伝えると、彼は頷いた。

ためらいの表情を見せたかと思うと一転、彼の顔つきは妖異的な表情となっていった。

ヴァンパイアとしての彼を見るのは初めてだった。

まとう妖気は、ウィリアムのものとは違うものだが、やはりまた違う美しさを感じた。

妖気はあがる。

妖艶な光が彼を覆っている。

「僕には君を見守る義務がある。だが、僕にはこの選択が良かったのかはわからない。ウィルのことを思うと、本当に分からない。だが…僕は今の君に従うよ。始めるよ、いいかい?」

まっすぐな彼の目に視点を合わせた。

「いいわ。お願い」

彼から感じ出る妖気に、私の心臓は激しくうちはじめた。

首筋に向かって、彼はゆっくりと覆いかぶさるように状態を寄せてくる。

私の体を支えるために触れる手の圧は優しい。

そして首筋を、下から上に向かってゆっくりと、味わうかのように舌を這わせる。

身体と意識が素直に反応した時、なんとも言えない快感に襲われた。

「あぁ…」

身体は反りあがり、背筋がきしむようだ。

身体の中を何者かが這っているような快感が次々と襲う。悶えるほどの快感は、やがて息苦しさにかわった。

「くっ…ぐぅ」

息が出来ない。苦しい。

そして、身体中の水分が抜き取られるような感覚になったとき、ウィリアムが私の目の前に現れた。

幻覚のなかで、右手を伸ばし、彼を求めた後、激しく体はきしみ大きくそりかえると、私は意識を失った。

失った意識の中で、うっすらと見える人影。

暗闇の中でそこだけ紅く輝いている。

紅い光に包まれ、真紅のドレスを着ている女性。

アニス。私の意識の中で彼女は佇み、私を待っているようでした

(姫美。)

脳内に直接語りかけるように彼女の声が聞こえてきました。

(アニス…)心の声がそのまま伝わるようでした。

向かい合った私たちは、暗い空間の中に浮かんでいるようでした。

アニスは何かを伝えたそうにこちらを見ています。

静かな空間の中で、先に口を開いたのは私の方でした。

彼女を目にした途端、私は胸がいっぱいになりました。私は彼女のおかげでこの世界にいることができているのです。

たくさんの幸せも、愛も、教えてくれたのは彼女でした。私は変わることができたのです。

衝動は抑えられませんでした。

『あっ…あの…

私はこれから貴女として…アニスとして生きます。姫美の名は捨て、アニスとして貴女と一緒にウィリアムを待ちます。だから、見守っていてください。』

静寂が一瞬ながれます。

その一瞬の流れの中で、アニスは私の思いをうけとってくれたようでした。

彼女は指先で涙を拭うと微笑み、そして私の前から消えてしまいました。


(ありがとう。私もウィリアムの心と共に貴女を見守っていますよ)



私が目覚めたのは、それから一ヶ月後のことでした。

長い眠りから覚めた私にも、身体が違うことは分かりました。重さというものが感じとれず、また、血の通うものも感じ取れず、まるで、空洞の人形のような感覚でした。

「かるい…」

あまりの軽さに、上体を置こすのにも戸惑うほどでしだが、だからといって、身動きが取りにくいわけではありませんでした。

私は生まれ変わりました。








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