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魔物探偵事務所~白衣の死神~  作者: 星野翔


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第5章 暗闇に差す救済の光

第一幕:悪夢と罪悪感

病院の病室内には、濃重な消毒液と刺すような薬草の匂いが充満していた。


クラウドは顔色を蒼白にして、病床に横たわっている。

左脚のあった場所は虚ろに空っぽで、切断されて間もない傷口は、今なお疼くように脈打っていた。だが、肉体の損壊など、心根の奥底を裂き苛む激痛に比べれば無に等しい。


彼が疲労困憊の末に目を閉じるたび、脳裏にはあの少年の胸をかきむしる悲鳴が炸裂するのだ――泥と血と涙にまみれた幼い手が狂ったように自分を叩きのめし、一語一語が毒針となって魂を貫く。


(父さんを返せ……父さんを返してよっ! この死神……! 殺人鬼――っ!!)


自分は、全城を救ったはずだった。

だが、あの少年の目には、自分は残酷な悪魔としてしか映っていなかったのだ。


「あの……もしかして、あなたは『白衣の死神』様ですか……?」


おどおどとした、蚊の泣くような少女の声が、突如としてクラウドの悪夢のような幻聴を断ち切った。


クラウドの身体が、ビクリと激しく跳ね上がる。

精神は極度の苦痛と罪悪感の中で、すでに完全に崩壊していた!

彼は涙を流しながら激しい喘ぎとともにベッドから跳ね起きると、両手で自らの髪を強くかきむしり、何もない空間に向かってヒステリックに近い咆哮を上げた。


「そうだっ! その通りだっ! 俺が死神だ! 俺が殺人鬼なんだよっ! これで満足か――っ!!」


第二幕:隣のベッドの少女

突如として放たれた、狂気的な崩壊の咆哮。

隣の病床にいた少女は、恐怖に怯えて肩をすくめ、その大きな瞳に涙をいっぱいに溜めた。


少女の怯えた瞳を目にした瞬間。

クラウドは、ようやく錯乱した幻覚から正気を取り戻した。


彼は荒い息を吐き出しながら、冷たく震える掌で空洞となった左眼を覆い隠す。そして、しゃがれ疲れ切った声で、力なく首を垂れた。


「……すまん。驚かせてしまったな。正確に言うと……俺はその名を受け入れてはいない。駆魔公安の職も……正式に辞職した」


自分はもう、英雄などではない。

二度と、あんな組織の狗(いぬ)などになりたくもなかった。


しかし。

隣のベッドの少女は、その言葉を聞いた瞬間、先ほどまでの怯えた面持ちから一転し、奇跡のように輝かしい笑顔を咲かせたのだ。


「本当ですか……? よかった……っ! やっぱり、みんなが言うような、残酷な人なんかじゃなかったんだ……!」


第三幕:はじめての「ありがとう」

少女は両膝を抱え、同年代の者とは思えないほどの強靭さと、深い哀傷をその瞳に宿しながら、静かに語り始めた。


「実は……私の父は前の戦争で、誰かを守るために勇敢に戦って亡くなったんです。それから母と二人で身を寄せ合いながら、あのスラム街まで逃げてきました」


少女は一瞬言葉を切り、目元の涙をそっと拭う。


「あの夜、駆魔公安は私たちを見捨てて、もう助けに来ないってみんなが言っていた時……食屍鬼(グール)たちが私たちのあばら家に踏み込んできたんです。お母さんは私を守るために、あの怪物たちの爪にかかって死にました。私ももうダメだと諦めて、目を閉じて死を待っていた時……あなたと、『ウロボロスの魔術師』様が、命がけで血路を開いて私を救い出してくれたんです」


少女は病床の上で背筋をピンと伸ばし、満身創痍となり、左脚を失った目の前の青年に向かって深く首を垂れた。

その声には、微塵の偽りもない、真摯で純粋な感謝が込められている。


「本当に……ありがとうございました。あなたがいてくれなかったら、私はもうこの世界にはいませんでした」


第四幕:破曉の曙光

(……ありがとう、だと……?)


クラウドの全身が、その場に凍りついたように硬直し、その唯一残された両眼が激しく震えた。


駆魔公安に足を踏み入れて以来、彼は高層幹部たちの白々しい賛辞を幾度となく耳にし、「白衣の死神」という畏怖と敬意の混ざった名声を聞き、あの少年の耳を裂くような呪いの言葉を聞いてきた……。


だが。

自らの手で救い出した当人から、心からの「ありがとう」という言葉をかけられたのは――彼の人生で、これが初めてのことだった。


その瞬間。

彼の心の中でとうに崩壊し、永劫の夜へと沈み込んでいた世界に、あたかも柔らかな朝靄の光が差し込み、初めての微かな希望を灯したかのようだった。


クラウドはどうしていいか分からず、もどかしそうに大きな手を伸ばすと、気まずそうに、不器用そうに自分のボサボサの髪をかきむしった。

目元を微かに赤く染め、低く、しかしこれまでにないほど優しい声を絞り出す。


「いや……気にしないでくれ。その……君の名前は?」


少女は顔を上げ、まるで春風のように温かな微笑みを彼に向けた。


「私の名前は――ディアンナです」

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