第11章 夜空に流れる星
【第一幕:重い夜と庭の微光】
その日の軍事会議は深夜にまで及んだ。
咆哮と激論の絶えない会議室を後にし、クラウドは疲労困憊の身体を引きずりながら家路についた。深夜の身を切るような寒風が肌を掠め、彼の胸中は言いようのない重苦しさと鬱屈で満たされていた——シリウスの放った「正義とは常に犠牲を伴うものだ」という冷酷な宣言が、まるで巨大な岩のように胸を圧迫し、息も絶え絶えにさせていた。
だが、裏庭の木戸を押し開いた時、彼の足がピタリと止まった。
月光の下、妻のディアンナが分厚い綿入れの袍を羽織り、その腕には生まれたばかりですやすやと眠る小さなコルヴォスを優しく抱きながら、庭の外のベンチに静かに腰掛けいていたのだ。
クラウドは急ぎ足で歩み寄り、自身のマントを脱ぎ取ると、母子の身体をすっぽりと包み込んだ。その瞳には、深い愛おしさと焦燥が入り混じっていた。
「ディアンナ……外はこんなに寒いのに、どうして子供を抱いてこんなところに座っているんだ? 体を冷やしたらどうする」
【第二幕:一生に一度の彗星】
ディアンナは顔を上げ、その優しい瞳を月光にきらめかせながら、子供のように純真で期待に満ちた輝きを湛えた。彼女はふうと微笑むと、身を寄せてコルヴォスをクラウドの胸元へとそっと預けた。
「だってみんな……今夜は『ハレー彗星』が見られるんです。一生に一度しか見られない奇跡の訪れだって……コルヴォスにも見せてあげたくて」
クラウドは、何の曇りもない妻の純粋な笑顔を見つめ、張り詰めていた心がふっと弛緩していくのを感じた。彼はディアンナの隣にそっと腰を下ろすと、片腕で妻をしっかりと抱き寄せ、自身の体温で夜風を遮った。
『ヒュウ————ッ!』
その時、漆黒の沈黙に包まれていた夜空を、この上なく眩い輝きが無音のまま切り裂いた! 修飾されざる神秘的な金色の尾を引く尾翼は、まるで蒼穹を貫く銀河のごとく、黒夜と庭園を昼のように照らし出したのだ!
クラウドは首を仰け反らせ、ただ一つの右眼を激しく震わせた。彼は生涯を通じて血塗れの硝煙を見慣れていたが、これほどまでに圧倒的で、極限の美しさを放つ光景を見たことがなかった。
【第三幕:純粋な願い】
「クラウド、早く願い事をして!」
ディアンナは興奮気味に両手を合わせ、夜空に向かってそっと目を閉じた。
流星が夜空を駆け抜け、長い余韻を残していく。
願い事を終えると、ディアンナは顔を向け、どこか悪戯っぽくまばたきをしながら小声で尋ねた。
「クラウド……あなたは何をお願いしたの?」
妻からそう尋ねられ、かつて容赦なく敵を斬り伏せてきた「白衣の死神」は、その頬に珍しい羞恥の色を滲ませた。低く、優しい声が漏れる。
「俺は……コルヴォスが……無事に、健やかに育ってくれることを願った」
それは父親としての、最も素朴で、そして最も深遠な願いだった。
クラウドはディアンナを見つめ、こう問い返した。「お前は? ディアンナ、何を願ったんだ?」
【第四幕:闇の中のひとすじの光】
ディアンナはクラウドを見つめ、その瞳には底知れぬ愛情と、かすかな切なさが満ちていた。彼女はクラウドの、タコができ傷だらけになった大きな手をそっと包み込むと、優しく囁いた。
「私は……この世界から戦争や苦しみがなくなってほしいと願いました」
ディアンナはクラウドの眉間に刻まれた、決して拭うことのできない疲労の影をそっと撫で、目元を赤く染めた。
「本当は……あなたに毎日、誰かを守るために自分の命や心を削ってほしくない……そんなことをして、毎日終わりのない自責と苦痛の中で生きるあなたを見たくないんです……」
『ビクッ——』
クラウドは全身を強ばらせ、その場に立ちすくんだ。
夜風がディアンナの髪の毛を揺らす。彼女の浮かべるその優しく慈悲深い笑顔は、クラウドの目には、今夜の夜空を切り裂いて永世の夜を打ち破ったあの流星のように映っていた——血と殺戮、そして果てしなき自責に満ちた彼の漆黒の世界において、唯一の輝きであり、最大の救済の光として。




