3話
仮想空想OP
水曜日のカンパネラ 『シャルロッテ』
「うぁああぁぁぁああ!!!」
葬儀場に、母親の泣き叫ぶ声が響く。
膝をつき、棺桶に半身を預けながら、泣いている。
シャルロッテが亡くなったその夜。
滞りなく通夜が終わり、集まってくれた親族、関係者たちが帰る中、母親は悲しみに暮れていた。
そこに、まだ帰っていなかった父方の叔父が声をかける。
「この度はご愁傷様。でも、良かったじゃないか。
灰色紋なしの子が死んで。これで」
「口を慎みなさい。例え、叔父様であろうと許しませんよ…」
腰のポーチから杖を抜き取り、先端を叔父へと向け、黙らせる。
「子どもが死んで悲しまない親なんていないんです。どんな事情があろうと、腹を痛めて産んだ我が子を愛せない親なんていないんです。
ただ…生きていて欲しかった。
頭を撫でて、ハグをして、ほっぺにキスをする。
そんな当たり前が…温かな触れ合いがもう出来ないなんて…
あぁ、子が親よりも早く死ぬなんて…そんなことあっては駄目。駄目なんですよ…」
母が泣き悲しむ姿を、シャルロッテは少し上から茫然と見ていた。
身体は半透明に薄れ、下で眠っている器とは、ロープで繋がっている。通夜、葬儀が終わり、火葬とともに、ロープが切れ、半透明の身体は風船のように空へと上がっていく。
葬儀場は段々小さくなり、やがて、街が、都市が、国が、世界が、その星の全てが視界に映り込む。
あぁ、本当に惑星は丸かった。
徐々に重くなる瞼に抵抗することなく従い、そこで、意識は途切れた。
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次に目を開けると、そこには、何もない真っ白な空間が広がっていた。ただただ広く、どこまでも続く平坦な空間。
シャルロッテは床に倒れ込みながら眠っていたようで、身体を起こし、歩き始める。
やがて、これまた真っ白な花瓶や壷がポツポツと道に落ちているのが見えてきた。シャルロッテは気にも止めず、ひたすらに前へ前へと進んでいく。
その次に、扉が見えてきた。周りには、花瓶と壺が20個ほど置かれている。
シャルロッテは、風景と同化した同じ色の扉の取手を持ち、ひねる。扉を開け、中を見る。
そこには、ブラウン管テレビを間近で見る、一際目立つ色鮮やかな女性が地べたに腰を下ろして座っていた。花が人になったかのように美しく、大小様々な花が身体中から咲き乱れている。
とても良い匂いがした。花の香りだ。
シャルロッテは吸い込まれるように、部屋の中に入り、香りの濃い方へと近付いていく。
女性は、ブツブツと呟きながら、泣いていた。
「こちらに連れてくる時に約束しましたのに、破ってしまいましたわ。あの子を一生、悲しませないと強く誓ったのに。駄目ですわね、ワタクシ。
―――貴方もそう思うでしょ?シャルロッテ」
シャルロッテの方を一切振り返ることなく、名前を呼んだ女性。
そこで出逢ったのは、母の加護神である花と愛の女神:アフロディーテだった。




