16話
仮想空想OP
水曜日のカンパネラ 『シャルロッテ』
「ん?なんだ?起きたのか?」
「うん。でもまた寝ちゃった。相当ショックだったみたい」
「…そうか」
言葉少なめの車内。
水晶玉の結果を見てすぐに気を失って倒れたシャル。母も同様にショックを受けていた。
心のどこかで、こちらの世界に来れば、どうにかなると思っていたからだ。日本最高位の神が御座す伊勢神宮でさえ、息子に加護を与えられなかった。
その受け止めきれない現実を前に、母は涙が止まらなかった。希望を打ち砕かれたかのような喪失感とともに、絶望の足跡がひたひたと近寄ってくる…そんな気がした。
祖父母は母のそんな様子を見て、かける言葉が見つからなかった。ただ今はそっと見守ることしか出来なかった。
車内に流れる地方局のラジオの音と走行音だけが静かに響く。舗装された道の上から、高速道路の眠気防止の上を通る。小さな段差を乗り越え、車が揺れる。
シャルの手に握られていた何かが落ちた。
車内のフロアマットに落ちたそれを、母が拾う。
「多賀…大社?」
母が拾ったのは小さなお守りだった。
少し古びてはいるが、綺麗な状態だ。
「ねえ。お父さん、お母さん。
…多賀大社って、どこにあるか知ってる?」
母はお守りに書かれた文字を見ながら、前の席に座る二人に問いかける。
「多賀?大社?ね…うーん、聞いたことあるとは思うんだけど…お父さん、分かる?」
「確か…滋賀県にある神社じゃあなかったか?
ちょっと携帯で調べてくれよ」
「あぁー確かにそうね。ちょっと待ってね」
「うん」
助手席の祖母が鞄からスマホと老眼鏡を取り出し、慣れない手つきでスマホを使い、調べる。ネット社会の昨今、欲しい情報はすぐに出てくる。
多賀大社
それは、滋賀県犬上郡多賀町にある大社。
ご本尊は、伊邪那岐大神と伊邪那美大神。
この二柱の大神は神代の昔に、初めて夫婦の道を始められ、日本の国土、続いて天照大神をはじめとする八百万の神々をお産みになられた―――原初の夫婦神である。
「そういやぁ、おふくろから聞いたことあるな。
〝お伊勢参らばお多賀へまいれ。お伊勢お多賀の子でござる〟って」
祖父のその言葉を聞き、不思議と、母は腑に落ちた。そこに行かないといけない。強くそう思った。
「多賀大社って、遠いの?」
「そりゃー滋賀だからなぁー家からだと1時間半…いや2時間はかかるんだろうな」
「そっか…」
「…明日、行くか?今日行ったお伊勢さんよりは近いだらぁ」
「え?いいの?」
「いいに決まっとる!」
「うふふ、お父さん、嬉しいんよ。まーちゃんが帰ってきて。今まで会えなかった分、何かしてあげたくてしょうがないの」
「こ、こら!余計なこと言うな!」
少し照れくさそうにする祖父。
「ありがとう。お父さん、お母さん」
母は素直に感謝を述べた。
月・木 更新
30話完結




