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灰色と紋なしの少年  作者: 北田シヲン


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16/21

16話

仮想空想OP

水曜日のカンパネラ 『シャルロッテ』

「ん?なんだ?起きたのか?」


「うん。でもまた寝ちゃった。相当ショックだったみたい」


「…そうか」


 言葉少なめの車内。

水晶玉の結果を見てすぐに気を失って倒れたシャル。母も同様にショックを受けていた。


 心のどこかで、こちらの世界に来れば、どうにかなると思っていたからだ。日本最高位の神が御座す伊勢神宮でさえ、息子に加護を与えられなかった。


 その受け止めきれない現実を前に、母は涙が止まらなかった。希望を打ち砕かれたかのような喪失感とともに、絶望の足跡がひたひたと近寄ってくる…そんな気がした。


 祖父母は母のそんな様子を見て、かける言葉が見つからなかった。ただ今はそっと見守ることしか出来なかった。


 車内に流れる地方局のラジオの音と走行音だけが静かに響く。舗装された道の上から、高速道路の眠気防止の上を通る。小さな段差を乗り越え、車が揺れる。


 シャルの手に握られていた何(・)か(・)が落ちた。

車内のフロアマットに落ちたそれを、母が拾う。


「多賀…大社?」


 母が拾ったのは小さなお守りだった。

少し古びてはいるが、綺麗な状態だ。


「ねえ。お父さん、お母さん。

…多賀大社って、どこにあるか知ってる?」


 母はお守りに書かれた文字を見ながら、前の席に座る二人に問いかける。


「多賀?大社?ね…うーん、聞いたことあるとは思うんだけど…お父さん、分かる?」


「確か…滋賀県にある神社じゃあなかったか?

ちょっと携帯で調べてくれよ」


「あぁー確かにそうね。ちょっと待ってね」


「うん」


 助手席の祖母が鞄からスマホと老眼鏡を取り出し、慣れない手つきでスマホを使い、調べる。ネット社会の昨今、欲しい情報はすぐに出てくる。


 多賀大社(たがたいしゃ)

それは、滋賀県犬上郡多賀町にある大社。

ご本尊は、伊邪那岐大神(いざなぎのおおかみ)と伊邪那美大神(いざなみのおおかみ)。


 この二柱の大神は神代の昔に、初めて夫婦の道を始められ、日本の国土、続いて天照大神をはじめとする八百万(やおよろず)の神々をお産みになられた―――原初の夫婦(めおと)神である。


「そういやぁ、おふくろから聞いたことあるな。

〝お伊勢参らばお多賀へまいれ。お伊勢お多賀の子でござる〟って」


 祖父のその言葉を聞き、不思議と、母は腑に落ちた。そこに行かないといけない。強くそう思った。


「多賀大社って、遠いの?」


「そりゃー滋賀だからなぁー家からだと1時間半…いや2時間はかかるんだろうな」


「そっか…」


「…明日、行くか?今日行ったお伊勢さんよりは近いだらぁ」


「え?いいの?」


「いいに決まっとる!」


「うふふ、お父さん、嬉しいんよ。まーちゃんが帰ってきて。今まで会えなかった分、何かしてあげたくてしょうがないの」


「こ、こら!余計なこと言うな!」


 少し照れくさそうにする祖父。


「ありがとう。お父さん、お母さん」


 母は素直に感謝を述べた。

月・木 更新

30話完結

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