11話
仮想空想OP
水曜日のカンパネラ 『シャルロッテ』
「いやぁ〜!ほんっとにびっくり!郵便屋さんかと思って玄関開けたらまゆちゃんが立ってるもんだからぁ!」
「あっはは…驚かせてごめんね。連絡しようにも連絡手段がなくて、直接家に帰ってくるしか思いつかなくて」
本当に久しぶりに、家に帰ってきた母。
祖母は、玄関でただいまの言葉を聞くやいなや、抱きしめていた。強く、ただ強く、帰ってきた娘が本当にそこにいるのか確認するように。
そして、何事かと居間から出てきた祖父も、母に気付き、祖母ごと二人を抱きしめた。もう帰ってこないと思い、諦めていた娘が帰ってきた。普段、涙など見せない祖父は、「おかえり」と何度も何度も言いながら、涙を流した。
そうして、親子の再会を無事済まし、落ち着いた後、居間へと案内された。早めに出されているこたつに足を突っ込みながら、今までの経緯を話す。そして、これからのことも。
「だから、この子――シャルちゃんを助ける為にこっちに戻ってきたの。あ、ごめん。紹介がまだだった。この子は、私の息子。シャルロッテ・ラインバッハ。向こうで出逢った人との間に出来た子で、私はもう結婚もしてる」
ほらと言わんばかりに、左手を見せる。薬指にある結婚指輪がきらりと光る。
「兄弟はいないよ。一人っ子なの。でもとっても可愛いでしょ?お父さんとお母さんの孫だよ!」
どこか誇らしげに母は紹介する。
「あらまぁーほんっとに可愛い!整った顔!」
「ほんとほんと。なんやその…お人形さんみたいやな」
「でしょでしょ!」
祖父母と母だけで盛り上がる中、シャルは、母方の両親の顔をまじまじと見つめる。向こうの世界では、父方の両親にしか会ったことがなかった。それも、父の家系は王族の遠縁。名のある貴族だ。何か祭り事がある度に行っていたが、楽しみや面白さよりも、緊張感が優っていたのをよく覚えている。
そう思うと、今この空間は、とても居心地が良い。母のリラックスした態度と話し方も、祖父母の優しい口調も、こたつというこの暖かい謎の物体も…全部が心地よく―――
行儀良く座っていたシャルだったが、3人の会話を聞いていたら、いつの間にかこたつの上に突っ伏しながら眠ってしまった。
そんな様子を見て、祖父母と母は和やかに笑った。母はその辺に置いてある毛布をシャルにかけ、キッチンの方へ場所を移す。緊張して疲れていたシャルを休みませるために。
だが、悠長にしている時間はない。もう既にシャルが死んだ日まで2年を切っている。2周目も同じ日までシャルが生きている保証はどこにもない。
キッチンにある長机にしまわれた椅子を引き、座り直すと、母は事細かに、状況を説明し始めた。
漫画やアニメが好きな祖母は、母から出る荒唐無稽な話を飲み込めたが、祖父はちんぷんかんぷんな様子。だがそこは、熟年夫婦の技で解決。祖母が祖父に分かるように翻訳を挟み、どうにかこうにか、状況を把握。
そして、翌朝、祖父の車で三重県にある伊勢神宮へと向かうことが決まった。
日本で最も有名で、毎年天皇家が奉納する社。
日本最高位である太陽の神 天照大神に会うために。
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