第46話 降って湧いた中級依頼(2)
会議が始まった。
しょっぱなからカイ、レオン、リュークの三人は緊張している。
今までは外されていた中級依頼。
今回は参加させてもらえるのか?
なんで『エリシオンの灯火』がここにいる?
“俺たちでさえいつも呼ばれない中級の仕事になんで余所者が入っているんだ”
優馬たちは仲間だとは思っている。
だが、自分たちが外され、彼らが選ばれるなら心穏やかでいられないのは当然だろう。
「なんでお前たちまでここにいるんだよ」
「カイ、控えろ。リーダーの俺が彼らにお願いしたんだ」
「……わかりました」
フェルハートに嗜められカイは引き下がる。
「ベルナール。カイ達はどうだ」
「はい。中級というにはまだまだですが、今回の仕事では手伝える範囲にあると思います」
「よし、それなら今回の仕事はここにいる十名で行うこととする」
カイたちは歓声を上げた。
自分たちも参加できる!
「さて、仕事の内容だが……まずこれから話すことは他言無用だ」
全員がうなずき、フェルハートは同意が得られたことを確認して話し始めた。
「依頼書にある通り、仕事場は北の町はずれにあるローデスメイト農園だ」
「えっ、あそこってきな臭い噂がなかったでしたっけ」
「そうだ、アルン。よく知っているな」
アルンの図書館通いは、元々シーフの勉強をするためだ。
だが、彼の性格上、仕事をする上で関わりがありそうなことには何にでも首を突っ込んでいた。
当然、この町の地理や産業についても。
ローデスメイト農園の繁栄についても、一般的にはある商会の手柄とされていたが、アルンは疑問を持っていたのである。
「あの痩せた土地でよく作物ができるな、と思ってたんですけど……。人夫の長時間労働を強制するなどの問題はなかったのですか」
「ない。確かに採算はギリギリだが、人夫に対する虐待の事実は確認されていない」
それを聞いたアルンは納得がいかないと言うように顔をしかめている。
フェルハートは一旦、話を切った。
「何だ。言いたいことがあるのか」
「ええ、農園では事故や盗難、作業のミスが頻発している、と聞いています。犯人は雇った人夫。個人的な不平不満に起因すると記録にはありますが……。おかしいですよ。三十件以上の事件全部で、その理由は。しかも自白はゼロ」
「ほう、良く調べているじゃないか。当然、調査はしたさ。役場とギルドが共同でな。だが、結果はシロ。犯人とされた人足の仲間が、農園を訴えようと騒ぎ立てたが、反証となるものは何も見つからなかった」
うんうん、とうなづく優馬。
だが、その表情は何か言いそうなニヤニヤ顔である。
「フェルハート。それ、信じてないでしょう。それが、事実なら、今日ここに僕らが集められることもなかった」
「ふふ……まあ、そういうことだな」
フェルハートは、二年前のギルドでの出来事について話し始めた。
ある日、一人の人夫が冒険者ギルドに駆け込んできたと言う。
一緒に働いていた農夫仲間が消えた。
仲間は皆一様に怯え、商会からは「誰にも言うな」と言われたらしい。
その後一人二人と辞めるものが続出。しかもそのうちの何人かは行方不明。
我慢がならなくなった人夫が『あいつらは殺された』と騒ぎ出し、商会に連れていかれ、そのまま戻らなかったという。
「”呪われた農園” ですね」
「なんだよ、アルン。それは」
「ここ数年、ローデスメイトは農民の間でそう呼ばれているんですよ。農園寄りの町役場が、噂を消そうと躍起になっていたんですけど……」
「アルン、そこまで今は止めておいてくれ。確かにおかしな噂はあるが、まずは余計な印象を持たずにこれを見てもらいたい」
そう言って、フェルハートは一枚のチラシを無造作に机に置いた。
“人足大募集 ローデスメイト農園”
それには、派手な絵と大きな文字で『報酬を二割アップ』と大きく書かれている。
「これが今年のチラシだ。見ればわかる通り、商会は必死だ。人が足りていないらしい」
「それで、冒険者に依頼が来たと」
「そうだ。お前たちには足りていない人夫の補充要員として働いてもらう」
カイもレオンもお互いに顔を見合わせている。
農家の出稼ぎのような人夫仕事をやる羽目になるとは思ってもいなかったからだ。
「不満か、優馬」
「いえ、でも質問があります」
「なんだ」
「日中の人夫仕事以外の時間は 自 由 に し て い いんですよね」
「ああ、構わん。もしかしたら、ちょっと頼み事をするかもしれんがな」
フェルハートはニヤリと笑う。
わざわざ優馬を呼んだ甲斐があった、と。
ドンドンドン
突然、会議室のドアを激しく叩く音が。
何かが起きたに違いないが、応対したフィオナは「皆さん、ここで待機を」と言い残し会議室を出ていく。
すぐにギルマスのロイを連れて戻ってきた。
「ボースヴァイン炭鉱で反乱です。フェルハートさん。これは緊急依頼になります。すぐに向かって下さい」
「『暁の守護者』だけでいいのか」
フィオナは、ロイがうなづくのを確認し。
「『エリシオンの灯火』も参加して下さい。詳細は馬車の中でお話しします」
と言った。
優馬たちは訳もわからず、外に用意されたギルドの馬車に乗り込んだ。




