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第20話 パーティ結成

 リュークは『暁の守護者』の世話になることになった。

 あとはアルンの今後についてだが、それについてはおいおい決めていけばいい。



 そんな空気を打ち破る一言を切り出したのはフィオナだった。


「優馬さん。冒険者パーティーを作りませんか」

「へ?」


 思ってもいない一言である。

 反射的に間抜けな声が出てしまったのも当然。

 そんな優馬の胸中に構わずフィオナは話を続ける。


「実はフェルハートさんとエルフィナさんに以前から相談を受けていまして、それがギルド内で職員たちのミーティングで出た答えと一致したんです」

「それが僕が冒険者パーティーをやることだと?」

「はい。確かに優馬さんのソロ活動は安定していて問題はなかったんですが、流石にずっと一人というのもどうか、と。しばらくこのカルディアで活動するつもりだと最初にお聞きしましたし」


 まあ、確かにそんなこと言ったかもなと思いながらも、どう断ろうかと考えていた。

 ゆくゆくは目的である国の腐敗を正すためにあちこちに行くことになるだろう。その時は仲間が必要なのはわかる。


 けれど、少なくとも一人前になるまではこのカルディアで一人冒険者修行をするつもりでいたのである。


「ちょっと待って」

「待てません」


 押せ押せである。グイグイくる。

 こんなフィオナは初めてだ。



「でもだからって、なんで僕がリーダーの冒険者パーティーを作るって話になるんです? どこかのパーティーに入るという方法だってあるじゃないですか」

「どこのパーティーに入るつもりですか?」

「ウッ……」


 言い逃れをするつもりが、切り返されてはどうしようもない。

 パーティを組むことなど鼻から考えておらず、理由もここで言うわけには行かない。


 しかも、旗色が悪いことに相手はいろいろと理論武装しているようだ。


「それがこの町の問題なんだよ。”ベテランが新人を育てる“ ってのが、当然。それで回ってたんだが、今は人が多すぎる。そろそろ新人の中から新しいチームが誕生してもいいんじゃねーか、てな」

「ギルド側としても、いろいろ話し合った挙句、新しい若いパーティのリーダーには優馬さんが一番ではないか、と」


 優馬の抗弁にはフェルハートが答え、さらにフィオナが引き継ぐ。

 多勢に無勢、援軍はなし。完全に外堀が埋められている。


 すでに断ることは難しいが、一つ疑問がある。一人じゃパーティを組めないのだ。


「でもパーティーやるといっても誰とやるんです? リュークは『暁の守護者』に決まったし……」

「僕ではダメですか」

「えっ……アルン? ダメではないけど。まだ今日会ったばかりじゃないか」

「でも、ダンジョンで共に戦った。それでやるならこの人とがいいと思ったんです。僕は優馬さんとパーティー組みたいです」

「そ、そうなのか」


 優馬はしどろもどろでそう答えた。

 冒険者パーティーを組まない理由というのは、”フィンをパーティーメンバーにどう伝えるか” という点なのである。


 すでにダンジョンでバラしてしまっているアルンならその問題もすでにクリア済み。

 ことここに至り、本当にパーティー結成の障害となるものは何もなくなってしまった。




 進退極まった優馬は先ほどから何も言わないフィンに話しかけた。


(どうしよう、フィン)

(ここまで仕組まれては仕方なかろう)

(まあ、僕としては別に冒険者パーティー作るのがイヤなわけじゃないけど。でもいいのか? フィン)

(構わん。ここにいるものはお前を心から考えてくれているようだ。思う存分やってみるがいい。私のことは、誰にも話さねば済むことだ)

(そうか、わかった)


 優馬はため息を吐き、半笑いで手をあげ、降参のポーズをとった。

 観念したらしいと誰の目にもわかったのである。


「決まりだな」

「よかったじゃない」

「それじゃあ、手続きの書類の用意をしますね」

「えーーーーーっ!!」


 善は急げとは言うけれど、あまりにも早い対応だ。

 ベテラン冒険者二人とギルド職員のこの状況を進めるスピードに優馬はタジタジである。


 そして、この話にはさらにサプライズが待っていたのだ。

 エルフィナが後ろにいる女の子にともに優馬の前に来た。


「それで、優馬がパーティーを組むならこの子も入れてあげて欲しいんだけど……。さあ、挨拶して」

「アリシェン正教の神官をしているミリアです。少しだけ回復の魔法を使えます」


 白いローブの少女はペコンとお辞儀をして一歩進み出た。

 まだ場に馴染んでいない様子だったが、それでも視線はまっすぐに優馬たちを捉えていた。


「あっ、君は……」


 数時間前、ゼロスがアルンをダンジョンに誘った時に、止めようとしたエルフィナと一緒にいた女の子だった。

 活発そうな子だと思っていたが、改めて見ると神官服がよく似合い落ち着いた雰囲気もある。

 優馬は一瞬だけ視線を交わし、頷く。アルンもわずかに目を見開いてから、柔らかく笑みを返した。


「よろしくお願いします。私も、ご一緒できればと思っています。ダメですか?」

「いや、あの……はい。よろしくお願いします」


 なし崩しに彼女もパーティーに入ることが決まってしまった。

 パーティー結成もまだOKしたばかりで、どう活動するかも考えていなかったのに。


「三人とも身元についてはこれまでの活動でわかっています。結成には何の問題もありません。ここにパーティー登録書を置きますね。とりあえずパーティー名だけ決めていただければ後はおいおいで構いませんから」

「フィオナ。気が早いですよぉ」


 優馬の混乱をよそに周りがポンポンと状況を進めていく。 


「さあ、優馬。パーティ名なんてちゃっちゃと決めればいいんだ」

「そんな、フェルハートさんまで」

「ミリアはいい子よ。よろしくね。さあ、これから忙しくなるわよ」

「……もういいです。エルフィナさん」


 優馬は内心トホホな感じで、アルンとミリアを連れて奥のテーブルに移動した。

 アルン、ミリアはやる気十分。優馬は精神的にはいっぱいいっぱいだったが、とにかくやらなくちゃなならないことがある。


「パーティー名はどうします? ミリアさんは何か案がありますか」

「うーん、考えがないわけじゃないけど、ここはリーダーに決めてもらう方がいいと思うわ」

「なんか、自分の知らないところでどんどん話が進んでいく〜」

「ほらほら、リーダー」

「そうそう、リーダー」

「あぁぁぁぁ! 俺で決まりなの? ホントにぃ?」


 既にアルンとミリアの中ではパーティー名は優馬が適当に考えてくれるだろうと思っているらしい。

 もうパーティー初依頼について相談を始めている。


「ねぇ、アルン。リーダーも決まったことだし、最初はどこ行こうか」

「そうだね。実はもう一回ダンジョン行きたいんだよね」


「人の話を聞けや!」



 頭を抱えてはいるが、優馬だって冒険者パーティを組むことが嫌なわけではない。


 実はパーティー名だって密かに考えていたものがあるのだ。

 転移する前の日本で女神アリシア様に異世界行きを打診された時に考えていた名前。

 中坊の頃にファンタジー好きなオタク連中とつるんでいた時に考えてたもの。


 “もし、異世界に行って冒険者パーティを組むならこれにしたい”


 その時の思い浮かんだ名前を二人に告げることにした。



「じゃあ、パーティー名は『エリシオンの灯火』にしない?」

「エリシオン、ってなあに?」


 ミリアが不思議そうな顔をしている。


 優馬はしまったと思った。

 異世界でギリシャ神話の話が通じるわけがない。


 どうしようか考えた挙句、嘘にならない程度に誤魔化すことにした。


「昔読んだおとぎ話の町の名前さ。英雄や神々が住む楽園なんだ」


 確かに嘘は言っていない。自分の善悪ステータスに嘘つきの項目が増えたら大変である。



 ところが。


「良くわからないけど気に入ったわ。素敵な響きだもの」

「ふーん、ちょっと地味だけど、いい名前だね」


 意外にも二人とも気に入っている様子を見て優馬はホッと胸を撫で下ろし、登録用紙に自分の名前とパーティー名を書き込んだ。


 アルンがその紙を取り上げ、窓口に走っていく。

 よっぽど嬉しいらしい。


「ちょっと待ってよ」

「私も行きます」


 優馬とミリアが窓口でアルンに追いついた時、すでにフィオナさんは登録書類に不備がないことを確認し、ギルド印を押していた。


「はい。冒険者パーティ『エリシオンの灯火』これで正式に登録完了です」

「「「やったー」」」


 これからどうやって活動していこうか。

 最初の冒険はどこに行こうか。三人の話は尽きない。



 そこで、優馬はある言葉を口にした。


 ”アシア・エル・エリセオ”


「何それ?」

「あー、”アシア・エル・エリセオ”。『エリシオンに向かって』って意味だよ」

「いいね。それ、依頼を受けた時の合言葉にしない?」

「私もいいと思う」


 つい口をついて出た言葉だったが、それをアルンとミリアは気に入ったらしい。


「でも、他の人には通じないよ?」

「いいじゃない、秘密の合言葉って感じで」


 三人はハイタッチをして、机に戻って行った。



 パーティーの初会議は終わらぬまま夜が更けていく。

 ――まだ、初仕事もしていないのに依頼達成の合言葉まで決めて。

 次回、幕間話になります。

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